出版物のご案内 :: 山形大学出版会
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007れ90年代の山形国際ドキュメンタリー映画祭のインターナショナル・コンペティションで受賞し、映画祭の歴史とともにある映画人だ。彼らの作品を検討することで山崎は、社会主義時代の社会生活と体験が、統一後の東ドイツ社会にとって、どのような意味を持つものとなったかを論じている。 第3部の論考は、東中欧、バルカン、バルトの作品を対象としている。ロシア(ソ連)とドイツという二つの大国に挟まれたこれらの地域は、歴史的に両大国に翻弄されてきた。そのため、これらの諸国においては、民族的アイデンティティをどのように護るのかという問題が最大の課題であり、ドキュメンタリー映画のテーマの多くもこのテーマを取り上げている。社会主義体制下では、社会主義に対峙することで民族的アイデンティティが語られる。体制転換によって、民族的アイデンティティは再生したとみられるが、必ずしも成功したとはいえず問題は一層複雑化し、さらにその裏返しとしてユダヤ人やロマ、トルコ人などマイノリティへ眼差しは優越感と共感が交じり合ったアンビバレントなものとなっている。 小椋彩「『シベリアのレッスン』――ドキュメンタリー・フィルムとポーランドの「小さな祖国――」(第5章)では、シベリアのポーランド人移民にポーランド語を教えにいく若い教師と、彼女を撮影するためにいっしょにシベリアに赴くその恋人にとっての旅を映像表現の手法の観点から分析したものである。「小さな祖国」とは、大上段に政治を語りはしないが、戦争によってポーランドが失った祖国を理想化し、そのユートピアの幻影をシベリアの短い生活のなかに見出すことであり、それはポーランドという祖国が「個人的な神話として再構成される」という意味であると論じている。 髙橋和「チェコスロヴァキアという国があった――国際政治における「小国」のジレンマ――」(第6章)は、1968年のプラハの春が挫折していくプロセスのなかで、ソ連に抵抗する市民と市民の犠牲者を増やさないためにソ連に抗うことができない政治家たちの苦悩を描いた「裏切り」、社会主義体制が崩壊した翌年、1990年のスロヴァキアのメーデーで社会主義時代の政治家たちがパロディとされた『ペーパーヘッズ』、体制転換後の政治を主導したハヴェル大統領を追った『市民ハヴェル』を取り上げて、小国ゆえに民族のアイデンティティの理念として「愛」や「真実」といった普遍的理想を掲げるために、民族の輪郭が見えなくなっているというパラドックスを論じている。 飯尾唯紀「ハンガリーのドキュメンタリー映画にみる「お国柄」――体制転換後の記憶とまなざし」(第7章)は、社会主義時代の生活をユダヤ人の目からみた『私はフォevaluation use only ese only evaluation usaluation use only eva only evaluation use oation use only evalua

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