出版物のご案内 :: 山形大学出版会
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008ン・ホフレル』や1956年の「ハンガリー革命」で処刑された父を家族の記憶として描いた『母』、また強制収容所の囚人と看守とが40年ぶりに再会し、当時を回想する『裁かれずに』を取り上げて、様々な立場の人の社会主義の記憶とイメージを描く。さらに体制転換後の生活を扱った作品では環境問題や社会から疎外されるマイノリティ、そして国外のハンガリー人を扱った作品が多くみられることから、社会主義時代が未だ清算されざる過去であること、また戦争によって喪失した領土に取り残されたハンガリー人への強い思いがあり、社会主義と戦争による民族分断という二つの歴史的条件に規定されていると論じている。 菅原淳子「体制転換後のブルガリア――変わったもの、変わらないもの――」(第8章)では、環境問題を通じて民主化が人々の間に広がっていく様子を描いた『忍耐のカレンダー』、社会主義体制下では取り上げることができなかったトルコ人の同化政策を扱った『悪のテクノロジー』、『不必要な人々』、トルコ起源の歌をブルガリア人はブルガリアの歌だと思い、ギリシア人はギリシアの歌だと思い、セルビア人はセルビアの歌だと思っているという『この歌は誰の歌』という作品を取り上げている。これらの作品は、扱っているテーマは異なっているが、オスマントルコの支配によって生じた民族混住と共生が、「民族国家」の成立によって、さらに社会主義政権下の政策によって、マイノリティを生み出し、マイノリティとなったトルコ人やロマが翻弄される様子を描いている。菅原はさらに、『目的不明の旅』や『バダンテの女性の町』など国外に暮らすブルガリア人を描いた作品を取り上げて、EUへの統合によって故郷を出ていかざるを得ない女性たちの現状を捉えて、体制転換が必ずしもブルガリアの人々にとって平穏な生活をもたらすものではなかったと論じ、EU加盟の影の側面をあぶりだしている。 髙橋和「バルト諸国・独立と社会の変容――大国の狭間で――」(第9章)は、社会主義時代のラトヴィアの人々の生活を監督のプライベート映像で構成した『硬貨の裏と表の肖像』で、ロシアとドイツ、そしてソ連に翻弄された歴史を持つラトヴィアの人たちが社会主義に順応しつつ、他方で日常生活においては民族的伝統を粛々と続けて「民族性」を維持し続けるという状況、また『カシの木の木陰で』では、独立そしてEU加盟という変化の後も、新しい環境に適応しようと戸惑いながら、他方で伝統的な生活や行事にこだわるという二面的な生活を取り上げて、大国の狭間に位置する民族のしなやかさを描いている。 さらに、「コソボ紛争の舞台裏――『第4の席』――」(第10章)は、NATOによるコソevaluation use only ese only evaluation usaluation use only eva only evaluation use oation use only evalua

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