ブックタイトル出会う。| 山形大学 大学案内 2018

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概要

出会う。| 山形大学 大学案内 2018

日常的に国境を行き来して暮らす人々と、ユーロリージョンのエリア地図。上/セルビア、ニシュの市場。ブルガリアとセルビアの間でユーロリージョンがつくられ、EU域内外ではあるが、人々が日常的に行き来している。地元の市場で、国境からは少し離れているが、ブルガリアからニシュに向かう列車には大きな旅行バッグを抱えた人々が衣類などをセルビア側に運んでいる。下/ユーロリージョンのエリアを線で囲んで示したヨーロッパの地図。ラインが多すぎて、どこが本来の国境線なのか、もはやこの地図ではわからない。(欧州国境地域協会のホームページより引用)人文社会科学部P.78留学体験が社会を考える目を変える。国際関係は身近な学問。高橋和教授|国際関係論分断された国境から人々をつなぐ国境への取り組み。越境地域協力体ユーロリージョン約60年間で180を越える存在に。ヨーロッパ地図はよく目にしても、左ページの地図のようにカラフルな囲み線が無数に描かれている地図はあまり馴染みがない。これらは、国際関係論を専門とする高橋和教授が現在取り組んでいる研究テーマ「グローバル時代のヒトの移動の自由と管理」のきっかけとなった「ユーロリージョン」を表している。ユーロリージョンとは、国境線をはさんで位置する自治体や民間団体が、国境線を越えて連携するヨーロッパにおける越境地域協力体のことである。ヨーロッパでは、戦争のたびに国境線が新たに引き直された結果、日常的に行き来する親戚の家や、毎週通っていた教会が隣の国になり国境を越えないと通えなくなったり、かつて同じ村だった人に電話をかけると国際電話でなければ通じなくなってしまったり、日常生活のさまざまな場面で不都合が生じた。こうした状況を改善するために、生活者レベルで考え出されたのがこのユーロリージョンという制度で、1960年代の初期にスイス、フランス、ドイツにまたがる地域と、オランダとドイツにまたがる地域の2カ所で始まった。国境地帯は往々にして辺境地域にあり、課題の解決には、国家よりも隣接する地域同士で国境を越えて協力し合った方が効率がいい場合がある。1990年に入るまではユーロリージョンの数はあまり増えなかったが、飛躍的に拡大したのは冷戦終結後である。EU統合の加速を受けて急増し、現在では180を超えている。これをヨーロッパ地図に書き込むと国境線はほぼ見えなくなる(左の地図参照)。ユーロリージョンの地理的拡大によって、ヨーロッパでは国境を越えて協力し合うことは当たり前となり、国境線による制約は低下した。ユーロリージョンは、国家を飛び越えてEUに直接事業資金を要求することができる。国際関係では国家間の関係が基本であるが、国家をまたぐ地域が主体となって活動することができるのである。こうした国境線をはさんで暮らす人々が協力しあう「地域」は、ヨーロッパのみならず、アジアやアフリカ、中南米にも広く見られる。日常的に国境を移動する人や短期で多国間を渡り歩く人も珍しくない昨今、国家を跨いで移動する人々の市民権やそれに付随する社会保障はどうなっているのだろうか。人々の移動を管理しようとする国家と、ユーロリージョンの名の下に自由に行き来する人々はせめぎあいを続けている。このユーロリージョンの研究を通して、人の移動に関心を持った高橋教授は、さまざまな研究分野からのアプローチによって人の移動についての認識が違うことに面白さを感じ、プロジェクト研究を呼びかけた。高橋教授自身は国際関係学のアプローチを、加えて、憲法学、国際法、法哲学、比較文化論、文化人類学、社会学、心理社会学など、それぞれ専門分野の異なる、学内および海外の研究者がプロジェクトメンバーとして参加し、ひとつの現象をまったく違うアプローチから研究を行っている。同じ分野の研究者が集う学会とはまったく違った発見があり、新たなアイデアも生まれている。それらの成果は、それぞれが研究論文の形で発表することに加えて、シンポジウムを開催することで研究内容を広め、深めている。提携校も多く、留学がしやすい環境、独自のテーマで海外に飛び出し国際感覚を磨く学生たち。高橋教授のゼミの学生たちは、大学での学びの集大成である卒論にどんなテーマで挑むのだろうか。国際関係論と聞くと、外交問題や難民問題、国際紛争など、とても難しいテーマに感じられるが、高橋教授によると、今や国際関係と無関係の分野などないというのだ。たとえば、森林に興味のある学生は、世界中の森林環境を保護するための違法伐採問題に着目したり、介護分野においては外国人介護士の受け入れ制度に着目している。グローバル化した社会では、どの事象を切り取ってみても自国だけでは完結しなくなっており、国内問題として捉えていたことも、案外国際問題だったりするのだ。そのため、高橋教授は学生の興味を引き出し、そのテーマが国際関係の観点で捉えた場合にどのような問題として把えられるかを一緒になって考え、アドバイスする。その上で、学生たちには海外留学を奨励している。学問的アプローチも大切だが、社会の変化を広い視野から考える国際感覚を身につけてほしいからだ。いくら本を読んでも、行ってみないとわからないものがたくさんある。高橋教授自身もチェコをはじめ、必要に応じて現地に飛び、研究者からの情報提供を受けたり、現地でのインタビューを行ったりしている。幸いにして、本学にはさまざまな国に提携校があり、短期・長期留学がしやすい環境が整っている。大学生ならではの身軽さと適応力でアグレッシブに飛び立つ学生が増えてきている。現地の人や文化に触れることはもちろん、同じ留学生という立場の他国の学生とも交流を深めて、逞しくなって帰って来る。ベトナム、マレーシア、ブルネイ、リトアニア、イギリスなど行き先はさまざま。ピンポイントで留学先を選ぶもよし、チャンスがあれば飛びついてみるのもいい。どこへ行っても理由は後からついてくる。学生たちの好奇心、向学心も、もう自国だけでは完結しない時代なのだ。Yamagata University 11