ブックタイトル出会う。| 山形大学 大学案内 2018

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出会う。| 山形大学 大学案内 2018

地域教育文化学部P.87食材王国やまがたで、伝統と新しさを融合楽しい食育、始まる。大森桂教授|食教育、健康教育食育をさらに定着、もっと身近に。骨量測定や牧場体験などを通して伝えたい、食べる楽しさと大切さ。「食育」という言葉は、広く一般に浸透してきてはいるが、実際に栄養に対する知識は深まっているのだろうか。食教育、健康教育が専門の大森桂教授は、元々は学校の家庭科で子どもたちが、食生活や健康についてどのような方法で学習するのが効果的か、というテーマで研究を行っていた。現在は、幼児から高齢者まで幅広い人々を対象に、栄養だけでなく、食文化の伝承や味覚教育、食農教育等、より広範なテーマで食育の効果に関する調査を行っている。山形は在来作物も多く、地域の食材や人材を活かした効果的な食育ができる可能性があると考え、県内の子どもたちの食に関する知識や意識、骨量や身体活動量の実態等を各種調査により明らかにしている。さらに、県内の小・中学校やNPO団体、酪農教育ファーム等と連携し、牧場体験や食を通した異世代交流、骨量測定と調理実習を組み合わせた家庭科の授業等が及ぼす効果についてもリサーチしている。具体的な調査の一例としては、子どもたちがどれくらい栄養の知識を持っているかを把握するため、テスト形式のアンケートを実施している。小・中・高校でアンケート用紙を配布・回収し、学生たちと共に集計・分析を行った結果、子どもたちは、家庭科の授業で食について幅広く学んではいるが、特に栄養素については、繰り返し学習する必要のあることがわかった。また、山形市内の中学校と連携して毎年、骨量測定を実施しており、授業参観日には希望する保護者の測定も行った。測定後には、丈夫な骨を作るために必要な栄養素や運動などの解説も行っている。部活等でスポーツをやっていて競技能力を上げたい生徒や身長を伸ばしたい生徒などから、さまざまな質問も飛び出す。この骨量測定が、友だち同士や親子で、骨やカルシウム、日頃の食事のことを話題にするきっかけにもなっている。さらに、学生たちが附属幼稚園の子どもたちに食育を行うという課題も行っている。幼児は興味・関心の持続時間が短いため、10分程度で食べ物についてわかりやすく楽しく伝えるというミッションにチャレンジする。わかりやすい言葉で説明できたか、園児の興味を引くことができたか等、実際に園児たちの前で実践するからこそ、自分たちの食育の効果や改善点について具体的に振り返ることができる。目に見えない栄養素は実感することが難しいため、実際の食事と結びつけて学ぶことが効果的だ。基本的に全員が同じ献立を食べる日本の学校給食は、格好の食育題材と言える。サバティカル制度(大学教員などが研究に専念するために一定期間与えられる長期有給休暇)を利用して渡米し、半年間、アメリカの栄養教育を学んでパワーアップした大森教授。ニューヨークでは、日本の給食制度を高く評価する声も聞かれたという。山形県鶴岡市は給食発祥の地と言われているので、給食のメリットをここ山形から、もっと強力にアピールしてもいいのではないだろうか。食育カレンダー作りや高齢者に昼食を提供する活動で地域貢献と学生教育の一挙両得。2011年から3年生の課題として毎年取り組んでいるのが、山形の豊富な食を紹介し、食育に役立つ「やまがた食育カレンダー」づくり。これが学内外に好評だ。在来作物など、山形の旬の食材を使ったオリジナル料理をレシピと併せて紹介し、365日その日が何の日であるかを食に絡めて一口メモとして掲載している。学内外で無料配布しているが、「家族が山形に住んでいるので、山形の食材や食文化のことを知りたい」「このようなカレンダーを私の県でも作りたい」そんな理由で県外から送付を希望する人も少なくない。学生は6グループに分かれ、食材の選定からオリジナル料理のレシピ開発まで、各班2カ月分ずつ責任をもって担当する。食文化の伝承には新しい視点も必要と考え、大森教授は学生ならではの斬新な発想に期待している。温海カブや神代豆など、山形の在来作物も大学生の手に掛かると、とても斬新で楽しいメニューになる。2017年版で6作目、これだけ回を重ねてもネタに困らないのは、食材の宝庫山形だから。2018年版にも大いに期待できそうだ。また、授業では高齢者を対象とした食育にも関わっている。学生たちが高齢者向けの昼食メニューを考え、実際に作って高齢者と一緒に食べるという取り組み。高齢者と大学生、普段はあまり接する機会のない者同士、学生が高齢者から料理のコツを教わったり、逆に大学で学んだ栄養情報を高齢者に提供したり、新鮮なコミュニケーションが生まれている。大森研究室のモットーは「みんなで協力!」。学生はそれぞれ異なるテーマで卒論を進めることになるが、調査や測定で人手が必要な時は、全員で協力体制を敷く。お互いのテーマから学ぶことも多い。また、大森教授が子育てをしながら研究・教育に奮闘する姿は、特に女子学生にとっては、自分の将来像と重ね合わせ、仕事と家庭の両立について考えるいいケーススタディにもなっている。「食」は、誰にとっても身近で興味の持てるテーマであり、自分自身のやりがいや生き甲斐にも、また地域貢献にもつなげることができる。Yamagata University 15