ブックタイトル出会う。| 山形大学 大学案内 2018

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概要

出会う。| 山形大学 大学案内 2018

蔵王山の航空写真と火山の調査風景。理学部P.95地道な観察・分析から新知見・新発見の醍醐味。火山、地球の凄さを実感。上/国土地理院発行の蔵王山山頂付近の空中写真。約800年前に火口がここ御釜に移動。活発期と不活発期を繰り返している。馬の背登山道周辺の地形の変化からも目が離せない。下/2013年国際火山学会のexcursionで蔵王山約3万年前の火砕流堆積物を観察する各国の火山研究者達。地層を調べ噴火様式を推定し、また堆積物の厚さを測定し噴火の規模を判定する。広大な調査地を歩いて観察し、噴出物を採取して持ち帰り、顕微鏡や分析装置で特性や年代等の解析を行う。こうした地道な調査が、地球やマグマの歴史・生命といった壮大な謎を解くカギとなる。伴雅雄教授|火山学火山活動が活発化している蔵王山。高まる危機感、減災を目指し15年ぶりにハザードマップを作成。2014年9月に長野・岐阜県境の御嶽山で噴火が起きたり、2015年から山形県と宮城県にまたがる蔵王山に火山活動の活性化が見られたりと、近年火山に対する危機感が高まっている。火山学が専門の伴雅雄教授は、火山のマグマ発生から噴火全容の解明を主なテーマとしており、日本火山学会や国際火山学地球内部化学協会に所属し、世界レベルの研究に取り組んでいる。その一方で、蔵王山火山防災協議会や鳥海山火山防災協議会の委員として自治体が発行するハザードマップの作成に協力するなど、地域社会への貢献にも尽力している。そんな伴教授の研究室では、蔵王山、鳥海山、吾妻山、那須岳、高原山、秋田駒ヶ岳、岩木山など、東北地方の活火山を対象に、火山の地下はどのようになっていて、何が起きているのか、今後どうなるのかの解明に取り組んでいる。特に、蔵王山で起こっているさまざまな現象は、火山学者の探求心を大いに駆り立てるという。6月から10月にかけて、年間30日程度は火山に足を運んで現地調査を行っている。現地で野外観察を行い、噴出物を採取して持ち帰り、顕微鏡や分析装置を用いて特性や年代等を解析するのが主な研究手法。その成果として、これまでにさまざまな活火山の噴火や噴出物の特性、噴火史やマグマ進化を精度よく明らかにしてきた。一例を挙げれば、1895年に蔵王山では2014年の御嶽山並みの水蒸気噴火が起こったこと、しかしその噴火にはマグマが少量関与しており、地下で異なる2種類のマグマが混合したことがきっかけとなって起こった噴火であることなどを26解明した。地層や噴出物を調べることで、噴火の規模や噴火メカニズムがわかるのだ。蔵王山で噴火が起こった直近の記録は1940年。歴史的に見て、噴火から次の噴火までの間隔が100年空いたことがないため、そろそろかという見方もできる。そうなると当然、いつ、どれくらいの規模か、と誰もが知りたいはず。噴火を予知するということは、古記録や地層が示す過去と、今目の前で起こっている現象という現在から未来を予測するということ。数ヶ月後あるいは数年後という単位での予想が可能ともされているが、現段階では噴火のスパンがはっきりしている火山とランダムに噴火を起こしている火山とに分けることはできても、時期的な予測まで可能かどうかはそれぞれの山の特性や歴史的な資料の有無等にもよるようだ。噴火時期の予想は難しいまでも、噴火が起きた場合、どんな被害が想定されるか、火山灰や噴石はどこまで飛ぶのか、火山泥流はどこまでどれくらいの時間で到達するのか、それらの情報が事前に与えられていれば、減災につなげることができる。火山防災協議会にはハザードマップの作成が義務づけられているが、蔵王山火山防災協議会委員を務める伴教授は、ハザードマップづくりに主導的に関わり、平成29年1月、蔵王山としては15年ぶりとなるハザードマップを発表・配布するとともに、山形県のホームページでも公開している。火山国日本の中でも関心高い蔵王山。地道な観察・分析で新知見を目指す研究者倍増へ、プロジェクトも始動。地球の陸上火山の約10%を有する火山列島ニッポンは、海外の火山研究者にとっても興味の尽きない研究資源の宝庫。国際火山学会が日本で開催された際には、外国人研究者の参加が多く、東北の主な火山の視察ツアーには、たくさんの外国人研究者が参加した。一口に火山といっても日本と海外の火山は、鉱物や組成がまったく異なり、発生するマグマも噴出物もまったく違う。そういった意味で海外の火山との差異にも関心を抱く伴教授は、スペインの研究者と共同研究を行っている。世界的に見ても、今もっとも注目すべき火山、蔵王山。地元で頻繁に足を運んでいる伴研究室のメンバーでも、山で起こっている異常を直接目にするのは時々である。持ち帰った岩石を分析し、過去を知ること。また、巡視員の方との情報交換で植物の異変などを知ることが重要になる。観察を繰り返し、地道にデータを集める作業は、忍耐力が必要だが、それらの蓄積から見えてくる新発見・新知見が醍醐味でもある。今後は、御釜に火口が移った800年前以降の古記録と地層調査に力を入れ、岩石が物語る物質学的な根拠と古記録の合致を目指す。さらに、ドローンを活用することにより上空からの映像で調査・観測の充実を図ることにしている。日本には110の活火山があり、噴火の予測、ハザードマップの作成など、火山学者に委ねられることが多々あるにもかかわらず、研究者は80名程度で、足りていない状況にある。文部科学省では、火山学者の倍増を目標に「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」をスタートさせた。このプロジェクトによって大学院生は講義や現地実習を通じて、さまざまな分野にまたがった研究を学ぶことができる。伴教授が一緒に火山研究をしていたグループの発展形プロジェクトであり、蔵王山の活動が活発になっていることもあり、山形大学は北大、東北大、東大、東工大といった大学とともにメンバーとして参画している。火山研究の最前線を学べる環境がここにある。