ブックタイトル出会う。| 山形大学 大学案内 2018

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概要

出会う。| 山形大学 大学案内 2018

発展途上の内視鏡手術に慎重さを。内視鏡下耳科手術の先駆者を中心に先端内視鏡手術センターを設立。医療技術の進歩はめざましいものがある。特に、手術においてはこれまでの開腹手術に比べて痛みが少なく、傷も小さく、治りも早い内視鏡手術の普及により劇的な進歩を遂げている。山形大学医学部附属病院においても耳鼻咽喉科や第二外科、泌尿器科など9つの診療科で、さまざまな種類の内視鏡手術が実施されている。2016年時点で、162術式2,256件にも上り、全手術約5,000件のうち4割以上が内視鏡手術となっている。こうした現状に対応するため、2015年4月附属病院内に「先端内視鏡手術センター」が設立された。各診療科で実施されている内視鏡手術の情報を共有し、安全で的確な内視鏡手術を行うことを目的としている。診療科の枠を越えて手術を一括管理する試みは、全国初。センター長は、耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座の欠畑誠治教授。国内で初めて内視鏡下耳科手術を成功させた、内視鏡手術の第一人者だ。「現在の手術には、命を救うだけでなく、身体や臓器の機能を残すことが求められており、その点において内視鏡手術は非常に有効です。しかし、内視鏡手術はまだまだ発展途上。一人の医師やひとつの医局の判断で新たな手術が行われると、患者と病院の双方において大きなリスクとなります。その手術が本当に妥当であるかを管理、評価する体制が必要だと思います」と欠畑センター長。「先端内視鏡手術センター」は、医師約20名が運営にあたり、手術の承認や難易度の分類、新技術の登録、成績の評価など包括的に内視鏡手術の質を管理する「クオリティーコントロール部門」、機器や器具、内視鏡手術や教育のシステムを開発する「研究開発部門」、トレーニング用シミュレーターなどを用いた安全性向上や技術向上を目指す「医療技術トレーニング部門」の3部門で構成されている。手術の評価やチェック、新技術の登録など情報の共有や研修を通じて、医師や研修医等の技術向上や育成を目指すとともに、月1回実施されている医学部内の手術セミナーでは、手術の紹介などの意見交換を通じて、若手医師や学生の教育にも努めている。さらに、医師の技術向上はもちろん、新たな内視鏡手術の術式や内視鏡機器の開発にも力を入れている。患者の負担を限りなくゼロへ。一人のスーパー外科医より確かな技術の外科医を一人でも多く。手術の歴史を振り返ると、かつては「Big Surgeon,Big Incision」(偉大なる外科医は大きく切開する)という言葉があり、大きく開いて患部やその周辺を広く見て手術を行うのが常識とされていた。1953年に手術用顕微鏡が開発される以前の手術は裸眼で行われており、周りの微細な神経などを傷つけて後遺症が残っても止むを得ないとされていた。まさに、「命を守る外科」であった。その後、顕微鏡下手術の時代を経て、内視鏡が開発されると、手術の精度は格段に上がった。内視鏡カメラの精度が上がり、人間の目を越えたことで、驚くほど鮮明な画像で毛細血管や神経まで確認しながら手術が行えるようになった。より見えるようになったことでより丁寧・安全に、機能の温存にも配慮できるようになった。「命を守る外科」から「命と機能を守る外科」へ。内視鏡手術は、外切開は極めて小さく、耳や鼻、食道や大腸などに至っては、外切開を行うことなくできる手術。手術の跡はほとんど残らない、或いは傷を伴わないため、痛みも少なく、回復も早い。いいこと尽くめのようではあるが、あらゆる手術が内視鏡で行われればいいというわけではない。内視鏡手術の歴史はまだまだ浅く、伝統的な方法に比べると多くの課題があることも事実。開腹手術以上または同等の安全性と確実性が保証されなければならない。その妥当性を評価することも先端内視鏡手術センターの役割の一つである。実は、他の診療科で内視鏡手術が主流になりつつある中、欠畑センター長が専門とする耳鼻咽喉科では長い間、中耳炎などの耳科手術において内視鏡手術は不可能とされていた。その常識に一石を投じたのが欠畑センター長である。イタリアやフランスの研究者と共同で内視鏡下耳科手術を開発し、2011年に附属病院にて国内初の内視鏡下耳科手術を成功させたのだ。現在は、定期的にハンズオンセミナーなどを開催し、多くの医師にこの術式をマスターしてもらい、一人でも多くの患者に痛みが少なく、外に傷が残らない内視鏡手術を届けたいと願っている。誰にもできないような難しい手術を素晴らしいテクニックで行うスーパー外科医は必要かもしれないが、たった一人のスーパー外科医が行える手術数、つまり救える命には限りがある。それよりも、技術をより多くの医師に伝え、手術ができる医師を育てることで、より多くの命を救うことが重要と考えている。また、内視鏡手術の精度をさらに高めるため、地元企業と共同で滑らない鉗子や超音波ドリルなどの開発にも力を注いでいる。「患者の負担を限りなくゼロに近づけたい」そんな思いが真っ先にあって、安全確実な内視鏡手術を追求する先端内視鏡手術センター。医療技術だけでなく、こうした思いや姿勢も含めて、山形大式が世界のスタンダードになれば素晴らしい。そして、医学を目指す学生たちにも素晴らしい教育環境が提供されるに違いない。医学部P.105最先端のトレーニング環境と医療機器に支えられた安全で確実、機能的な内視鏡手術。左上/内視鏡手術の技術を身につけるための最先端のシミュレーター。若手医師を対象に系統的手術トレーニングを実施している。右上/内視鏡を用いた手術風景。内視鏡は広角な視野を持ち、視点の移動が容易であり、対象への接近・拡大を可能とした手術支援機器である。内視鏡を使用することで、死角を減少させ、より安全で確実、機能的な低侵襲手術が医療の様々な分野で可能となった。下/CT画像と体表への三次元画像投影を利用した内視鏡手術。内視鏡手術の進歩には、周辺機器や工学系技術の発展が重要な位置を占めており、各診療科、各領域において多くの発想がなされ、それが短時間のうちに実現されてきた。診療科の垣根を越えた情報共有と切磋琢磨で、内視鏡手術の向上をめざす。欠畑誠治教授|先端内視鏡手術センター長Yamagata University 29