授業改善 by IT and/or HT

工学部 横山 道央(RF-CMOS/GHz帯シリコン集積回路,
高密度実装技術開発,ソフトウェア無線を超えるユビキタスシステム)

 授業改善リレーエッセイとして自身の授業改善についてふり返ってみる。
 授業ではかなりの量の板書と配布資料を中心に授業ノートをとらせ、最後に毎回宿題を課している。宿題の最後に授業の感想・意見など何でも自由に書いてもらう。全員書く訳でなくむしろ書かない方が多いのだが、それでもこの感想が私には貴重な授業改善の「生の声」である。そして極力改善できる点については次週に「前回○○という感想がありましたが・・・」と切り出して対応する方針である。自分の声が活かされるとまた書いてくれる様である。
 曰く、
板書が速い、しゃべるのが速い、後ろで声がきこえない、字が小さくて見づらい、教壇の横の水道蛇口がじゃまで板書が見づらい、部屋が暑い、もっと多く演習を、○○についてもっと詳しく説明して、この授業が今後どう役立つか分からない、etc・・・

 前の席が空いていれば黒板が見えやすい場所に学生自ら移動すべきだ、という考えは昔の話。『なせば成る』上杉鷹山公の師・細井平州はその著『嚶鳴館遺草』の建学大意で、譲を興す=すなわち恭遜の道を修業せよ、と説いている。遜って藩民の率直な生の声を聞く事も必要なのである。※同著は米沢藩財政建て直しの他、吉田松陰・松下村塾や西郷隆盛らにも影響を与えた実学の書・幕末志士の座右のバイブルである。
 思わず興がのって板書が中央下方部、水道蛇口の影にさしかかると「おっと、この辺に書くと見にくいですか。続きを右上の方に書きます。もっとよく見たい人は前の方の席も空いてますよ。」と言う事にしている。当方の授業準備ノートで今回はここまで進みこのポイントは最低たたき込むという予定があり、どうしてもある程度のスピードと板書量は譲れないものがあるが、理解されないのでは本末転倒なので可能な限り応えるようにしている。
 以上は、昔ながらの紙と言葉による非IT技術、言うなればHT(ヒューマン・テクニック)による改善。畢竟これが一番大事である。

 次にIT導入編。授業で使う資料を電子ファイルで頒布したり、演習問題と解答をHPに載せたりしている。勿論PC・HPに無縁の人に不利にならないよう(デジタルデバイド)配慮すべきだが。実状はなかなか毎週webのUPもままならないが、先の感想欄で「そろそろ演習問題をUPしてほしい」という声もきかれると、ある程度効果はあると思っている。しかし、やはり肝腎なのは古今東西、人と人:フェイスtoフェイスの対面教育であろう。ITはあくまで補助する道具であるべきだ。IT業界の寵児ホリエモンも、選挙に出馬表明した後、その真意はさておき泥臭く地元をまわっているという。
 授業の終わりに聞きに来る、あるいは直接居室にきてもらって、学生の疑問点のニュアンスを酌み取りつつ答える。電子メールではニュアンスは伝わらない。もっとも、多人数では対応に限界がある。その辺をうまくITを補助的に使い、教育におけるヒューマン・ITの善用を目指したい。
 また、良い授業をするとして、受ける側の準備も必要であろう。専門的にはカウンセラの領域になるが、授業にのぞみ心身共健康であればよいが、若い時分には体調・金銭・友人関係等何かと悩みはつきないものだ。
 最後に、ある学生さんの感想を引用させて頂く。こういう感想を読むと望外の歓びであり、また教育の深みを感じる。
 "春休みボケにGWボケが重なって軽いウツになっていてプリントをためてしまったが、先生のHPにあった「三」「上」「一」「中」等を見て元気が出てきた。個人的には「三」が一番好きだ。"

 この学生さんも直接居室へ質問にきた。末筆ながらこの場を借りて将来の活躍を祈念しつつ、拙HPより当該部分を抜粋させて頂きたい。
 『学生諸君へ』
次のキーワード4つを謹呈します。今後の人生の糧となれば幸いです。
「三」人間何か3つの事を同時に抱えている(仕事・趣味・恋愛など)。どれか1、2つ駄目でも他があると思え。思えば頑張れる。全部駄目な時はどん底だから以後良くなるしかない筈だ。人間万事塞翁が馬。
「上」上を見たらキリがない。下を見てもキリがない。自分の現状(能力・器量)に満足せず常に向上心を持て。志を高く大きく、∞。高く大きい程自分の器も大きくなる。大器晩成。
「一」若い諸君には何か得意とする所が必ず1つはある。そこを磨け。その道のオンリーワンを目指せ。
「中」中途半端なことはするな。やらない方がまし。下手の考え休むに似たり。但しやるんならとことんやれ。人間、完全燃焼する瞬間瞬間が幸福なのである。

 次は教育学部さんお願いします。

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