○全体テーマ:「魅力的な学士課程教育の構築に向けて」(趣旨)

 東北・北海道地区大学等高等・共通教育研究会(以前は東北・北海道地区大学等一般教育研究会の名称)は,今回で65回目を迎える。本会は1951年(昭和26年)に山形大学で記念すべき第1回が開催された。翌年の第2回も山形大学で開催され,3年目に津軽海峡を渡り北海道大学で開催された。以後,毎年交互に東北と北海道の国立大学で開催され,11回目に山形大学に戻って2順目に入った。17回目には私立大学(東北学院大学)で初めて開催され,これまで67回私立大学で,1回公立大学(岩手県立大学)で開催された。65回目の今回から6順目に入ることになる。

 全国には,それぞれのブロック(地区)毎に本会と類似の研究会が存在するが,参加大学数・参加人数・発表数を見ても,本会ほど活発に活動している会はないようである。ほとんどの大学教員が生まれる前から存在していた本会に対する先人の営為に敬意を表する。

 だが,本会がこれまで順風満帆であったとは到底思えない。本会の誕生期には,計り知れないほどの生みの苦しみがあったはずであるし,定着するまでには関係者の並々ならぬ尽力があったことが容易に推察される。そしてこの会のターニングポイントが1991年(平成3年)の「大学設置基準の大綱化」によってもたらされることになった。教養教育課程の法的縛りがなくなり,全国の大学において,教養部と教養教育の解体が急速に進んでいった。本会の名称が一般教育研究会から高等・共通教育研究会に変更する原因となった。まもなく大綱化から四半世紀が経とうとしている。

 大学設置基準の緩和によって,日本の大学数と進学率は1990年(平成2年)から現在までの間に倍増し,マス段階からユニバーサル段階へと突入した。そのため大学は多様で深刻な問題に直面し,学士課程教育のカリキュラムの抜本的な見直しや授業法の改善を不断に行わざるを得ない状況になった。こうした学士課程教育の改革期にあって,人間力や社会人基礎力,ジェネリックスキル,初年次教育やキャリア教育,アクティブラーニングなどの新たな時代の要求は,専門教育以外の分野,即ち従来の教養教育,現在の全学共通教育に期待され,否応なくその多くを担わされることになった。さらに大学を取り巻く環境は,18歳人口の減少に伴い,多くの大学が学生定員を確保できない深刻な経営上の問題を抱えている。全国レベルから見ても東北・北海道地区は大変厳しい状況にある。

 こうした厳しい環境下にあって,大学が生き残るためにはそれぞれの大学が強みを持たなければならないと喧伝されている。しかし,強さという定量的な力の論理だけでは,到底この厳しい環境下で太刀打ちできない大学もある。我々は強者の論理に取り込まれることなく,それぞれの大学の質的な違いに基づいた魅力を再発見あるいは新たに構築し,それを学生や社会に示していくことが求められている。本研究会の全体テーマは,加盟校の魅力ある学士課程教育を参加者で共有し,磨き上げていくことを願って設定したものである。

基調講演は山形大学の小田隆治教授による「公開・共有・相互研鑚による大学教育改革:改革もローマも一日にしてならず」である。氏が取り組んできたこれまでのFD活動や大学間連携組織「FDネットワーク“つばさ”」,大地連携(大学と地域の連携)などの具体的な話を聞くことができるであろう。

分科会は,1.アクティブラーニングとFD,2.教育の質保証とIR,3.高大接続・初年次教育・キャリア教育の3つのテーマを準備した。多くの参加者による話題提供と活発な議論を期待している。

2日目の全体会Uでは,文部科学省の担当者に「大学改革の現状(仮)」についての講演をお願いした。この講演が各大学のより良い改革のヒントになることを望んでいる。

 2018年頃からの長期的な18歳人口の減少による大学入学定員確保の困難さ,いわゆる「2018年問題」は,これからの大学の死活を我々に突き付けている。個々の大学の存亡は,規模のいかんを問わず,その大学が存立する地域の維持発展とも深く結びついており,東北・北海道地区の発展のためには,大学はこの「2018年問題」という危機的状況を乗り越えていかなければならない。

6順目の入口である本大会が,各大学の教育の個性的な魅力を引き出し,それを増進し,社会に発信することにつながっていくことを願っている。

 

 

○第1分科会テーマ:「アクティブラーニングとFD」(趣旨)

 この分科会では,アクティブラーニングとそれに関係したFDの取組に焦点を当てて,事例の交換と,意見の交流を図ります。

 アクティブラーニング(AL)についての説明は、この研究会に参加される方にとってはもはや常識で、実践されている先生方も多いと思います。新聞でもALの記事が教育分野において紹介されることが多く、特に小学校現場での取り組みが中心になっています。タブレット端末を使用した取り組みが多いですが、グループワークを取り入れた取り組みもあり、その形態は様々です。大学においても学生主体型をキーワードに検索すると多くの大学で取り組まれています。FDにおいても、教員の教育方法の改善を目的とするALも行われてきました。山形大学においても教育GPとして3年間、行ってきました。成果はHPをご覧ください。ALで学んできた学生が入学してくることや、学生のよりよい学びの手法として今後高等教育機関でますます増えていくことは明らかです。この分科会では、事例を紹介するとともに、その問題点を認識し、共有していきたいと思います。

 

(キーワード)

アクティブラーニング グループワーク 反転授業 ICT 学生主体型授業

  

 

○第2分科会テーマ:「教育の質保証とIR」(趣旨)

 この分科会では英語や理系基礎科目といった科目単位での質保証や教育評価から,学部学科・全学の教学IRにいたる話題を取り扱います。

 ステークホルダーの観点から,大学教育の質保証及びアウトカム評価がますます重要になっています。これまで大学教育の充実においては
教員個人の努力と裁量に任されてきましたが,教育の質保証を実現していくにあたって科目内での教育内容・教育評価の相対性を意識し教育改善の
ための協働を実施していく,といった教員個々人を超えた取組みが必要になります。

 さらに,質保証をディプロマ・ポリシーの側から考えたとき,学生の入学前から入試,在学中・卒業後の動向を統合的にアウトカム分析し
カリキュラム改善に生かしていくIRは不可欠ですが,実践と経験の蓄積といった面では各大学において端緒についたばかりです。

 語学・理系基礎科目・大学導入科目といった科目単位での質保証の取組み,学部学科から全学単位での教学IRによる実践まで広範囲の話題提供をお願いいたします。

 

(キーワード)

質保証・IR・FD・アウトカム・入試

 

 

○第3分科会テーマ:「高大接続・初年次教育・キャリア教育」(趣旨)

この分科会では、高大接続、初年次教育、キャリア教育の取り組みに焦点を当てて、事例の交換と、意見の交流を図ります。

 昨年末に出された中教審答申以後、高大接続の問題は、改めて多くの大学人の関心を集めています。関心の的はなにより、
予告されている新テストを踏まえた大学入試の形にありますが、あいにく、現時点では新テストの具体的形態は明らかでないこともあり、
入試の具体的な形態については、まだ踏み込んだ取り組みが難しい状況でもあります。そこで、本分科会では、少し視野を広げて、
高校から大学へ、また大学から社会へという流れに沿い、「初年次教育」、「キャリア教育」という2つのキーワードをつけ加えてみました。
入学後の初年次教育の形態や、卒業後を見越したキャリア教育の取り組み、それ自体として重要なテーマであると同時に、
高大接続の問題について考える際の枠組みを明瞭化する上でも資するところがあるのではないかと期待しています。

 

(キーワード)

高大接続・初年次教育・キャリア教育・入試・補習教育

 

※各分科会テーマについては,話題提供の内容や数に応じて変更する可能性があります。