文化人類学講義(一)
 Cultural Anthropolpogy Ⅰ
 担当教員:安倍 雅史(ABE Masashi)
 担当教員の所属:非常勤講師(早稲田大学高等研究所助教)
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業概要】
・テーマ
考古学は、人類学の一分野です。本授業では、とくに西アジア(中東)地域の考古学を扱います。人類史のなかで、西アジアは、とくに重要な役割を果たしてきた地域です。西アジアは世界で最初に農耕・牧畜を開始した地域であり、ここで始まったムギ作、ヒツジ・ヤギ飼育は、その後、世界中に広がり現代文明の基盤を形成しています。また、西アジアは、世界最古の文明メソポタミア文明や、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教という一神教の揺籃の地でもあります。本授業では、西アジアにはじめて人類が足を踏み入れた前期旧石器時代から、アレキサンダー大王によるアケメネス朝ペルシア遠征までを取り扱います。
・到達目標
現在の西アジア考古学の最新の学説を学び、前期旧石器時代(180万年前)からメソポタミア文明終焉(前330年)までという幅広い時代の基礎的知識を身に着けることを目指します。

【科目の位置付け】
学部・学科のカリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。

【授業計画】
・授業の方法
授業は講義を中心に進めます。授業では、できる限り遺跡などの映像・写真を見せ、わかりやすい授業になるよう努めます。
・日程
第1回 オリエンテーション:西アジアの風土と人々
西アジア考古学を学ぶうえで前提となる現在の西アジアの風土(気候や地形)と人々に関して学びます。また、日本の調査団の歩みなど、学史に関しても触れる予定です。

第2回 西アジアの前期旧石器時代:出アフリカと西アジアの旧石器時代の遺跡
アフリカで登場した初期人類は、180万年ごろアフリカを出て西アジアの地にはじめて足を踏みいれます。西アジアに進出した初期人類が残した遺跡に関して学びます。

第3回 西アジアの中期・後期旧石器時代:ネアンデルタール人とホモ・サピエンス
西アジアを舞台にしたネアンデルタール人とホモ・サピエンスの交代劇に関して学びます。

第4回 西アジアの続旧石器時代:ナトゥーフ文化と定住生活の開始
1万5千年前、西アジアの人々は遊動的な生活をやめ、定住的な生活へと移行します。定住革命と呼ばれるナトゥーフ文化に関して学びます。

第5回 西アジアの新石器時代:西アジアにおける農耕・牧畜の起源
西アジアで世界で最初にはじまった農耕・牧畜の起源に関する最新の研究成果を学びます。

第6回 南メソポタミアのウバイド文化:南メソポタミアへの人類の進出
紀元前6200年ごろ、灌漑技術を伴った人々は、はじめて南メソポタミアへと進出します。文明誕生の直前の時期にあたるウバイド文化を学びます。

第7回 南メソポタミアのウルク文化:メソポタミア文明の誕生
紀元前4千年紀、社会の複雑化が進みメソポタミア文明が誕生します。文明誕生期に相当するウルク文化に関して学びます。

第8回 南メソポタミア、初期王朝時代とアッカド帝国:都市国家から領域国家へ
都市国家が乱立した初期王朝時代から、アッカド帝国による領域国家の成立さらには4.2kイベントによるアッカド帝国の崩壊までを学習します。

第9回 ウル第3王朝:最後のシュメール人王朝
最後のシュメール王朝ウル第3王朝に関して学びます。また、ウル第3王朝とイシン・ラルサ時代のディルムンやマガン、インダスとの海上交易に関しても学習します。

第10回 古バビロニアと古アッシリア
ハンムラビ王で有名な古バビロニアとシャムシ・アダドで有名な古アッシリア時代に関して学びます。

第11回 トルコに栄えたヒッタイト帝国
トルコに栄えたヒッタイト帝国に関して学びます。ヒッタイトの勃興と3.2kイベントによるヒッタイトの滅亡までを学習します。

第12回 巨大帝国の時代:新アッシリアと新バビロニア
紀元前1千年紀、西アジアにあいついで興った巨大帝国新アッシリアと新バビロ二アに関する考古学を学びます。

第13回 アケメネス朝ペルシアとアレキサンダー大王:メソポタミア文明の終焉
イランのファールス地方に起こったメソポタミア文明最後の大帝国アケメネス朝ペルシア。アケメネス朝の勃興からアレキサンダー大王の遠征による終焉までを学びます。

第14回 発掘された旧約聖書 
イスラエルで盛んな聖書考古学。近年の聖書考古学の成果を学びます。聖書に書かれたダビデやソロモンの業績が、考古学的に裏付けできるかを紹介します。

第15回 破壊される文化財:シリア内戦下における文化遺産の被災状況
現在、内戦の続くシリアでは文化遺産の破壊が大きな問題となり世界中で報道されています。シリア問題を通じ、現代社会における考古学者の役割に関して考えます。


【学習の方法】
・受講のあり方
授業は講義を中心に実施しますが、わかりにくいと感じた場合は、積極的に質問、発言するよう心掛けてください。
・授業時間外学習へのアドバイス
授業ごとに、関係論文や概説書を紹介します。興味があると感じた場合、個人、個人で知識を深めていってください。

【成績の評価】
・基準
成績は授業への出席率と授業の理解度で決定します。毎回、出席をとり、授業の最後に西アジア考古学に関するレポートを提出していただきます。
・方法
出席40%、レポート60%

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