【授業概要】
・テーマ
「EU経済通貨統合の現状と問題点」 1990年代以降のEU成立からユーロ導入のプロセスと、そこで直面した諸問題について説明できるようになることを目的とする。マーストリヒト条約の発効以降、EUは通貨統合とそれに伴って必然化した政治統合に向かって進んでいる。2000年代半ばからは世界的に金融危機に見舞われ、ユーロ圏諸国では財政危機と単一通貨ユーロの危機に苦悩している。EUはこの危機にいかに対応しているかを考える。
・到達目標
欧州通貨統合はなぜ必要で、どのように実施されたのか、経済通貨同盟の下で欧州経済はどのように変化したのか。これらテーマについて基礎的な知識を習得し、同時に、欧州単一通貨ユーロの概要と問題点とを理解することができる。
・キーワード
EU条約(マーストリヒト条約)、EMU(経済通貨同盟)、ECB(欧州中央銀行)、単一通貨ユーロ、欧州通貨危機、安定・成長協定、ソブリン危機、財政規律、政治同盟
【科目の位置付け】
学部・学科のカリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
毎回、配布する講義レジュメと資料に基づき講義を進める。必要に応じて資料を回覧し、DVD等の映像資料も利用する。 授業は以下のように進める。 1)講義の中で質疑応答の時間を取る。 2)その日の授業の最後に授業内容についての小レポートを提出してもらう。 3)次の日の授業の冒頭でこのレポートへのコメントを行う。
・日程
第一回 EU成立と通貨統合までの歩み(前期講義の概観) 第二回 経済通貨統合第3段階のスタート 第三回 単一通貨ユーロとその仕組み 第四回 欧州中央銀行の任務と機能 第五回 ユーロ導入国の経済 第六回 PIIGSの経済動向 第七回 欧州でのサブプライム・ローン問題とリーマンショック 第八回 PIIGSの財政危機 第九回 ユーロ危機の勃発とそれへの対応策 第十回 通貨統合の弱点と強化策 第十一回 緊縮財政と経済縮小 第十二回 財政再建路線と経済成長路線 第十三回 財政統合と政治統合:国家主権の制限 第十四回 EU諸国における経済格差解消を目指して 第十五回 EUとユーロの将来
【学習の方法】
・受講のあり方
授業は講義を中心にするが、単に講義レジュメを読むだけでなく、新聞やテレビのニュース等で、EU経済とユーロの動向に日ごろから関心を持つこと。配布資料を事前に読みポイントを押さえて講義に出席してください。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義できちんとノートをとり、配付した資料を理解すること。 第2次世界大戦後の世界(特にヨーロッパ)と日本の歴史を前もって概観しておくこと。 「予習のあり方」 配布されたレジュメをあらかじめよく読んでおくこと。また、参考文献等で第2次世界大戦以降の世界史、特にヨーロッパ史の流れをよく理解して授業に臨んでください。 「復習のあり方」 授業で出てきた理論や事柄のうち、理解が不確かな概念や事項については参考文献等で必ず調べ、十分に理解しておくこと。
【成績の評価】
・基準
最終日の論述式の試験と、毎日の授業の最後に課す小レポートによって、知識の習得、理解の度合い、論理的思考力、文章表現力、主体的な参加の度合いのそれぞれについて判定し、その合計点で評価する。 具体的には、 1)欧州経済統合の現状と問題点について正しく説明できること、2)そこで用いられる基礎的概念や考え方を正しく理解していること、そして3)それぞれについて文章で正しく表現できること、を基準とする。
・方法
期末試験(70点)、小テスト(30点)。
【テキスト・参考書】
配布するレジュメと資料をテキストにする。 参考文献は以下の通り。 1.田中・長部・久保・岩田著『現代ヨーロッパ経済〔第4版〕』(有斐閣アルマ、2014年) 2.藤井良広『EUの知識〔第16版〕』(日経文庫、2013年) 3.SGCIME編『増補新版 現代経済の解明』(御茶の水書房、2014年) 4.アンソニー・ギデンズ『揺れる大欧州』(岩波書店、2015年) 5.田中素香『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書、2016年)
【その他】
・学生へのメッセージ
前期・後期の2単位分割であるが、内容を通年で完了するように構成しているので、通年で履修することが望ましい。また、EUとユーロに関して、2016年に入って政治的に動きを増しているため、講義内容に調整が必要となるかもしれない。
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