「地域政策」とは地域問題を把握し、その解決を図る政策のことであり、経済学、行政学、法律学をはじめとして、既存の学問体系にとらわれない社会科学の学際的な領域である。地域政策は、地域で暮らしている市民を中心として、行政、企業、NPOなどを巻き込み、その地域をより良くしていくように活性化していくことを目的とする。財政状況が厳しく、かつ市民意識が高まる中で、地域政策は行政の専売特許ではなくなり、市民が主体的に政策づくりに関与していくことが非常に大事になっている。本講義では、豊かな地域を実現するために必要な生活環境の改善と雇用の基盤となる産業活性化を両輪として、地域活性化の方策を考えていく。

地域政策の担い手として、実際に地域活性化を実践するために必要な地域問題の把握方法を習得し、その基礎的な解決法を提示することができるようになる。

地方創生 地域格差 人口減少 消滅可能性都市 限界集落

学部・学科のカリキュラム･ポリシーとの関係については、「カリキュラム･マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。

基本的に配布資料をもとにした講義形式で行う｡1テーマを1回の講義で解説を行う｡伝統的な社会科学の知見をベースとしながら、現実の地域問題を事例として取り上げて分析を行う｡講義では双方向性を高めるために、質問をするので積極的に答えてほしい｡また講義の内容を理解しているかどうかをチェックするために、受講生に対して毎回の授業ごとにリアクションペーパーを課す。このリアクションペーパーでは当日の講義内容について答えてもらう｡また講義内容の疑問点や質問も書いてもらう｡可能な限り、リアクションペーパーの質問内容は講義に反映させるようにする｡
講義はおおむね以下のように進める。
①前回の振り返り（約5分）
②講義（質疑応答あり）
③リアクションペーパー（最後の10分程度）

1．イントロダクション：地域政策とは何か？
2. 経済発展と空間再編Ⅰ：経済と地域との関係
3．経済発展と空間再編Ⅱ：地域間分業の変化と地域システムの再編
4．産業立地論Ⅰ：経済活動がどこで行われるのか
5．産業立地論Ⅱ：経済活動の集中のメリット
6．都市システム論Ⅰ：霞ヶ関に中央省庁が集まる理由
7．都市システム論Ⅱ：グローバル経済・社会・文化と都市の関係
8．人口移動と地域Ⅰ：日本の人口と人口減少
9．人口移動と地域Ⅱ：人口減少の地域経済社会への影響
10．情報技術と地域システムⅠ：情報技術の発展と地域
11．情報技術と地域システムⅡ：グローバル化と土地の固有性（地域性）
12．地域政策の論理Ⅰ：地域間格差と国土計画
13．地域政策の論理Ⅱ：世界の地域政策とサードセクターの台頭
14．地域政策の歴史Ⅰ：地域間格差と国土の均衡ある発展
15．地域政策の歴史Ⅱ：参加と連携を基礎としたポストバブル期の地域政策
16．人口減少時代の地域問題Ⅰ：地方都市の衰退
17．人口減少時代の地域問題Ⅱ：農山漁村地域の衰退
18．産業集積の衰退と再生Ⅰ：工業の集中と地方分散
19．産業集積の衰退と再生Ⅱ：産業クラスター計画と産業集積の再生
20．地場産業の活性化Ⅰ：地場産業の歴史と構造
21．地場産業の活性化Ⅱ：地場産業の販路開拓とグローバル化
22．商業の再生戦略Ⅰ：商業構造の変化と中心部の空洞化
23．商業の再生戦略Ⅱ：買い物弱者の発生とまちづくり
24．新産業の創出と可能性Ⅰ：環境・医療産業の創出
25．新産業の創出と可能性Ⅱ：観光・交通産業の発展
26．地方分権による地域再生Ⅰ：地方分権の進展と三位一体の改革
27．地方分権による地域再生Ⅱ：市町村合併から地方創生へ
28．地域のグローバル化Ⅰ：経済のグローバル化と地域
29．地域のグローバル化Ⅱ：国際観光の充実と地方の対応
30．地域政策の将来：競争と再分配をバランスした地域政策の方向性

講義では毎回、テーマを設定する。指定されたテキストの箇所を熟読すること。講義内では多くの板書を行うので、ノートテイクをしながら、問題点を意識しつつ内容を聞いていくようにしてほしい。リアクションペーパーでは当日の講義内容のおさらいをするので、集中して講義を聴くことが必要となる。また質問されたら、積極的に答えてほしい。

≪予習のあり方≫
テキストのうち、指定された箇所を事前に読み、関連する文献やサイトを調べる。また講義で取り上げられることが予告されたテーマについて新聞（朝日、読売、日経、山形等）の関連記事やwebサイトを読み、どのような地域問題が発生し、政策化されているか把握するようにしてください。
≪復習のあり方≫
1回の講義につき一つのテーマで講義をするので、講義終了後に講義ノートとプリントを踏まえながら講義内容の要約を作成するようにしてください。また分からない点は図書館やインターネットを用いて調べ、理解を深めておいてください。

本科目ではリアクションペーパー、レポートおよび試験の得点を合算し、絶対評価で成績を付ける｡レポート及び期末試験では単に知識を暗記しているのではなく、具体的な地域問題の要因を把握し、その基礎的な処方箋を論理的に描けるかどうかを確認する｡これらに毎回のリアクションペーパーの内容（知識の正確さ、論理の正しさ、文章力、学習意欲（質問等））の評価を加える｡評価で重視する基準は、①論理性、②知識の理解、③授業への積極さである。

本科目の成績評価では、知識の修得、理解の度合い、汎用的技能（論理的思考力、文章表現力）、参加の度合いを基準とします。そのためにリアクションペーパー30点、レポート20点（1回）、期末試験50点、合計100点の配分で評価します。
※本科目を地域公共政策論、自治体論等の2単位科目として履修する場合、地域政策論（前半）として履修する際には第1回～第15回までの出席が要求され、その講義中でリアクションペーパー（合計30点）を書き、レポートは1回（20点）で評価する。また期末試験に代替して単位取得レポート（50点）を課す。地域政策論（後半）として履修する際には第16回～第30回までの出席が要求され、その講義中でリアクションペーパー（合計30点）を書き、レポートは1回（20点）で評価する。また期末試験（50点）を受験すること。該当する学生は履修時に担当教員へ申請するようにしてください。

【テキスト】
山﨑朗・杉浦勝章・山本匡毅・豆本一茂・田村大樹・岡部遊志（2016刊行予定）『地域政策』中央経済社。
毎回、資料を配布するので収集するようにすること。
【参考書】
毎回の講義内で適宜、紹介する。

今年は地方創生への注目が続いています。地域生活が豊かになるためには何が必要か、学生自身が考える契機を得られるような講義になるよう心がけます。

木曜日12：00～13：30 山本研究室 それ以外は、講義で案内するメールにて予約をしてください。