行政法演習
 Undergraduate Seminar on Administrative Law
 担当教員:和泉田 保一(IZUMIDA Yasuichi)
 担当教員の所属:人文学部法経政策学科
 開講学年:3年,4年  開講学期:前期・後期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:  科目区分: 
【授業概要】
・テーマ
≪市民の中の行政法≫
市民生活との関わりにおいて、行政法的問題は具体的にどのように現れ、どのような解決が図られるか。
私たちが市民として(または将来行政機関の職員として)行政法に関わる問題と直面するとき、それらは多くの場合、教科書や問題集に載っているような項目立てられ整理されたような形では現れてきません。時には複合的に、あるいは法的問題には見えないような形で現れてくるかもしれません。例えば、高層ビル建設計画によって何らかの近隣トラブルが生じる場合、都市計画法、建築基準法、更には地方自治法や自治体独自の条例、加えて、指導要綱や近隣の暗黙のルール等まで関係してくるのが常です。
本講では、そのように現れてくる行政法的問題について、まずは、分析的に論点を見出し検討し、できれば解決法まで探ってゆきたいと思います。
・到達目標
基礎知識の習得・確認を一通り行った後、受講者が主体的にテーマを設定、論点を発見・提示し、調査・研究を行い、議論することを通じて、具体的な行政法的問題について整理・解釈(場合によっては解決)するための思考手段を身につけることを目標とします。

【科目の位置付け】
学部・学科のカリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解した上で履修して下さい。

【授業計画】
・授業の方法
前期は、行政法学の基本的項目の復習とともにそれらに関連する近年の重要判例を読み、争点となっている問題やそれに対する裁判所の判断について把握し議論する。
後期には、受講者の興味に沿ったテーマごとにいくつかのグループを作り、文献等による基礎的調査、実地調査などを経て、研究成果をまとめ、発表を行うという形をとりたいと考えている。
なお、人文ニュース'Agora'41-2(2009.10.1)P.4も参照。
・日程
取扱おうと考えている判例(一例)は次の通り。
・県知事による埋立事業等への公金支出の違法性・那覇地判H27.2.24
・難民認定処分の義務付けの訴え等・東京地判H27.8.28
・大飯原発運転差止訴訟第一審判決・福井地判H26.5.21(民事訴訟)

後期におけるテーマは受講者が主体的に設定することとなるが、イメージの把握のため、一例を挙げておく。
・行政上の義務履行確保の諸手法(放置自転車・歩行喫煙等の規制、禁煙条例、公契約条例、パチンコ店阻止条例等)
・公権力の私人へ委任(指定管理者制度、指定確認検査機関制度、PFI制度)
・開発の自由とその制限(都市計画法制、文化財保護法制、開発指導要綱、景観法制)
・原子力発電所の設置や大規模公共事業に対する訴訟
・公共工事の中止と補償

【学習の方法】
・受講のあり方
グループ毎に報告を行う。その際、報告に当たらない受講者にも質疑等の発言の機会がある。
・授業時間外学習へのアドバイス
報告者は、報告日の数日前にレジュメ・資料をその他の受講者に配布し、全員がその判例やテーマについて事前に予習しておくこととする。
演習時間中に考えた(又は考えが及ばなかった)り発言した(又は発言できなかった)内容について、関連するニュース等に注意し、随時、反芻・反省・否定・補強等を試みてほしい。

【成績の評価】
・基準
 出席や調査活動状況、レポート等の内容・発表、質疑等における発言による。これらについて、本学部の定める評価基準(①「主体的な参加の度合い」、②「知識の習得の度合い」、③「理解の度合い」、④「汎用的技能の習得の度合い」)に従って評価する。具体的には、次欄を参照。
・方法
 ①調査活動の状況や質問・議論の頻度等(20%)
 ②報告や判例研究における、前提知識部分(30%)
 ③報告や判例研究における、内容の深度(30%)
 ④報告や判例研究における、表現技術(20%)

【テキスト・参考書】
適宜参考書を示したいと考えているが、さしあたっては、稲葉馨他『リーガルクエスト行政法(第3版)』有斐閣(2015年)を挙げておく。

【その他】
・学生へのメッセージ
行政法関係科目を履習済であるか、履修予定であること、加えて、行政法に係わる何らかの問題について興味を持っていることが望ましい。
・オフィス・アワー
月曜日 14:40~16:10 和泉田研究室

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