熱・統計力学演習Ⅱ
 Recitation of Thermodynamics and Statistical Mechanics II
 担当教員:安東 秀峰 (ANDO Hideo)
 担当教員の所属:理学部物理学科
 開講学年:3年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:演習
 開講対象:物理学科  科目区分:選択科目 
【授業概要】
・テーマ
統計力学の基本的な理論構成を学び,さまざまな具体系へ応用する.
熱力学がマクロな平衡状態の普遍的特徴を記述するのに対し,統計力学は原子・分子の世界に立ち入って,ミクロの世界の力学法則(量子力学・古典力学)とマクロの世界の現象とを論理的,定量的に結びつける.この授業でははじめに統計力学の基礎として,確率論やアンサンブルの概念を解説する.基本的な原理や法則を学んだ後,理想気体,磁性体,調和振動子,格子振動,量子理想気体などの具体例を扱い,知識の定着と応用力の養成をはかる.適宜,レポート課題等を通して計算力を養う.
・到達目標
○ 統計力学の基礎的な物理が理解できる.
○ 実際に基本的な問題を自らの力で解くことができる.
○ 熱力学の知識と関連づけながら,相乗的に理解を深める.
・キーワード
平衡状態の統計力学,確率論,アンサンブル,熱力学,量子力学,演習

【科目の位置付け】
物質科学を扱う基礎学問.講義と演習を車の両輪とした専門教育科目であり,統計力学の基礎的な専門知識及び物理的な考え方を学ぶ.

【授業計画】
・授業の方法
統計力学の基礎を解説し,以下に挙げた標準的なテーマについて実際に問題を解く.関連した項目について適宜レポート課題を出す.
・日程
1.数学的な準備 - 確率論の基本
2.数学的な準備 - 物理量のゆらぎと大数の法則
3.量子力学 - エネルギー固有状態と状態数
4.量子統計力学(基礎)- 平衡状態とは
5.量子統計力学(基礎)- ミクロカノニカル・アンサンブル
6.量子統計力学(基礎)- カノニカル・アンサンブルの導出
7.量子統計力学(応用)- 理想気体
8.量子統計力学(応用)- 常磁性体
9.量子統計力学(応用)- 調和振動子の集団
10.古典統計力学(基礎)- 古典近似とエネルギー等分配則
11.量子・古典統計力学(応用)- 重力中の理想気体,高分子の弾性,二原子分子理想気体
12.量子・古典統計力学(応用)- 格子振動と結晶の比熱
13.量子統計力学(基礎)- グランドカノニカル・アンサンブルの導出
14.量子統計力学(応用) - 量子理想気体の基礎
15.期末テストとまとめ
なお,各タイトルの補題は主要な内容を表したものです.

【学習の方法】
・受講のあり方
熱力学の知識と統計力学で新しく出てくる概念をしっかり整理・理解し,さまざまな具体系への応用を扱うなかで論理展開の方法を学びましょう.同時に,計算力を高めてください.受講者に解答してもらうことがあります.
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の範囲を各自予習し,必ず式は自分で導出すること.単に解答を覚えるのでなく,なぜそう考えるのか,別の切り口で同じ答えを導けないか,この問題が解けたのはなぜか,どんな場合に解けなくなるか,そして,考えている問題に対して計算された結果は自然か等を意識することが大切です.熱力学を復習しておいてください.

【成績の評価】
・基準
主として統計力学に関する基礎事項を理解し,授業で扱う程度の基本的な問題を自らの力で解けることを合格の基準とする.
・方法
レポート(40〜50%),期末テスト(50〜60%)

【テキスト・参考書】
テキスト:田崎晴明,統計力学 I・II(培風館)
参考書:ライフ,統計熱物理学の基礎 上・中・下(吉岡書店),高橋康,統計力学入門 ― 愚問からのアプローチ(講談社),清水明,熱力学の基礎(東京大学出版会)

【その他】
・学生へのメッセージ
演習問題に対応する物理現象を数式とつきあわせてイメージするように心掛けましょう.予習を欠かさないこと.
・オフィス・アワー
いつでも可

30200670-2016-03-32240