国際文化学概論
 Introduction to International Culture
 担当教員:天野 尚樹(AMANO Naoki), 渡辺 将尚(WATANABE Masanao), 今村 真央(IMAMURA Masao)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科グローバル・スタディーズコース
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 本年度のテーマは「戦争の表象と記憶」である。戦争は、歴史書や文学、映画、慰霊碑などさまざまなかたちで表象され、人びとの記憶に刻まれつづける。戦争が国民を総動員し、国家が総力をあげて遂行する行為であるなら、自国の戦争の記憶は、人びとに自らがその「国民」であることを想像させ、「国家」への同一性を意識させる契機ともなる。したがってそれはときに、国民の統合をはかりたい為政者に利用されることもある。
 本年度の授業の目的は以下の3点である。
1) 日本、ロシア、ドイツ、東南アジアなど、異なる国家における戦争の表象のされ方について、各国の事例に即して知識を得ることを目的とする。
2) 戦争の記憶が人びとにどのように受け止められ、ときにはその記憶が動員される仕方について、各国の事例を比較しながら、戦争を考えるひとつの方法を身につけることを目的とする。
3) 各国の戦争の表象と記憶の学習を通じて、自らがどのように戦争を記憶しているのか、それがどのように自分をつくりあげるのに関わっているのかを自覚し、理解を深めることを目的とする。

【授業の到達目標】
この講義を履修した学生は
1) 異なる国家での異なる戦争の表象と記憶のあり方について説明できる。
2) ひとつのテーマを異なる視座から学び、比較できる。
3) 他国の戦争の記憶と自国の戦争の記憶、自らの戦争の記憶の記憶を対比し、関係づけ、対象化して討議することができる。

【授業概要(キーワード)】
戦争、表象、記憶、日本、ロシア、ドイツ、東南アジア、歴史、文学、映画、モニュメント

【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。

【授業計画】
・授業の方法
1) ロシア(天野)、ドイツ(渡辺)、東南アジア(今村)を専門とする3人の教員によるリレー形式でおこないます。
2) 教員それぞれが、専門とする国や地域における戦争の表象と記憶のされ方について、具体的な事例を紹介しながら講義します。
3) 戦争の記憶はすべてのひとにとって自分の問題でもありますので、学生同士や教員とのあいだでの討議の機会を適宜設けます。
4) 各教員の講義が一通り終了した段階で、3人の教員が一堂に会し、受講生も交えた全員討論をおこないます。
・日程
(天野)
第1回目 ガイダンス
第2回目 「解放」と「故郷喪失」:日ソ戦争の表象と記憶
第3回目 戦争における女性:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチを読む
第4回目 「大祖国戦争」:独ソ戦の表象と記憶
第5回目 記憶の動員/戦争の責任:表象と記憶のポリティクス

(渡辺)
第6回目 必要な戦争?:ドイツにとっての第一次大戦
第7回目 ナチズム、第二次大戦、「ドイツ中欧特異論」
第8回目 がれきの中からの再出発:ドイツ各地に作られた記念碑をめぐって
第9回目 「歴史家論争」(1986年):敗戦を受け止めることは、ドイツ人としてのアイデンティティを放棄することなのか

(今村)
第10回目 帝国、戦争、女性:「からゆきさん」から従軍慰安婦まで
第11回目 東南アジアと第二次大戦:小説・映画にみる日本人兵士
第12回目 ハリウッド映画の中のベトナム戦争:帝国のトラウマ
第13回目 冷戦期東南アジアの虐殺:記録と検閲、記憶と忘却
                                      
第14回目 戦争の表象と記憶を比較する(全教員参加の討論)
第15回目 まとめ

【学習の方法】
・受講のあり方
1) 板書やパワーポイントで示される講義内容をノートに筆記して内容の理解に努める。
2) 配布資料や、講義中に提示される表象事例をよく読みまたは鑑賞し、そこから得られた考えを記録しておく。
・授業時間外学習へのアドバイス
1) 特段指定のない限り予習は不要です。
2) 講義中に紹介された文献や映像作品を積極的に読書・鑑賞すること。
3) 身近に戦争体験者がいれば、ぜひ話を聞いてほしい。

【成績の評価】
・基準
1) 主体的な参加の度合い、知識の修得の度合い、理解の度合い、汎用的技能(論理的思考力・文章表現力など)取得の度合いのそれぞれの項目について判定し、その合計点を用いて評価します。具体的には、各国の戦争の表象と記憶のあり方を理解し、そこで得た知識をもとに、戦争の記憶に関する考察を自分の問題として深め、その考えを説得的に論述できることが合格の基準です。
2) 授業中の討議に積極的に参加し、明確な意見を述べられることも合格の基準とします。
・方法
議論貢献点20点+レポート点80点
レポート点は、各担当教員から提示される合計3回の小レポートを総合的に評価します。

【テキスト・参考書】
テキストは特に指定しません。参考書は授業中に随時紹介します。

【その他】
・学生へのメッセージ
自分が歴史のなかで生きていること。そんな自分の発見の場になってほしいと願っています。
・オフィス・アワー
天野:火曜日12:10-12:50
渡辺:木曜日12:00-13:00
今村:木曜日13:00-15:00
いずれも場所は各教員研究室

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