【授業の目的】
テーマ「〈声〉の表象―笑い、言語、匿名性」 表象文化論への理解を深めるため、われわれにとって身近な文化事象に焦点をあてて検討し、研究発表と議論を通じて、基礎的な知識を得ることを目的とする。
【授業の到達目標】
この演習を履修した学生は ①「声」という観点からさまざまな作品を分析することで、ただ「内容」を享受するだけではなく、その「内容」を支える思考枠組みそのものを批評的に分析・再検討する基礎的な知識を身につけることができる。 ②その知識をもとに発表を行い、議論に参加することができる。 ③修得した知識・方法論を、論理的な文章によって表現することができる。
【授業概要(キーワード)】
声(パロール)と文字(エクリチュール) パロディ 翻訳 パスティッシュ 模倣 テクスト 記号 文学 小説 絵画 写真 映画 マンガ アニメ 表象
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
受講者による発表と、それをめぐる議論で進行します。
・日程
受講者の数と関心にしたがって日程を決定します。 以下に概要と予定しているサブテーマと関連作品・参考文献を挙げます。 受講予定の者はどういった発表ができるか考えておくこと。
「声」、それは自分に最も近い、内的な感覚とみなされる一方で、録音された声は時におぞましく聞こえてくる。自分が一体どんな声を発しているのか、私たちは記録された「表象」を通じてしか知ることができない。が、それにもかかわらず他人からすれば、それこそが「私」なのだ。 声はそれを発した者の存在と切り離せない。我々は声によって誰かを判別することができる。だが他方で、声はあいまいなものでもある。たとえば小説などに書かれた声は、その主の身体から切り離されている。この声にまつわるパラドクスを踏まえて、作品をもう一度見つめ直してみたい。 あるいは身の回りの文化事象に目を向ければ、あいかわらずテレビでは歌番組や物まね番組が流れており、声の魅力は私たちを魅了してやむことがない。声は何を伝えるのか? あるいは、それ自体どのような表象なのだろうか?
1 声(メディア的なもの、非人称なものも含めて) ジョルジョ・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』(月曜社) 吉見俊哉『「声」の資本主義 電話・ラジオ・蓄音機の社会史』(河出文庫)
2 言語遊戯 ペレック、ウリポ、デュシャン、筒井康隆、多和田葉子、高橋源一郎
3 笑い ギリシア・ローマ喜劇、ボードレール、ニーチェ、ベルクソン、バタイユ、ブルトン(黒いユーモア)、フロイト、レーニン ジリボン『ベルクソン、フロイト 笑い/不気味なもの』(平凡社ライブラリー)
【学習の方法】
・受講のあり方
自分の関心を踏まえつつ、積極的に発表と議論にのぞむこと。
・授業時間外学習へのアドバイス
充分な時間をかけて発表の準備をすること。担当教員がアシストします。 報告後は、授業参加者からのコメントカードなどによって議論の内容をふりかえり、自分の意見とつきあわせてみましょう。
【成績の評価】
・基準
発表においては、基礎となる知識の確実性(到達目標①)を踏まえて、着眼点と論理展開のユニークさを評価します。議論においては、積極性を評価します(目標②)。レポートにおいては、発想の独創性と論理の明快さを評価します(目標③)。
・方法
発表40%、学期末レポート40%、議論への参加度20%
【テキスト・参考書】
高木裕(編)『〈声〉とテクストの射程』、知泉書館、2010年 その他、参考書は必要に応じて随時紹介しますが、以下は電子版も参照できますので是非読んでください。 阿部宏慈(編)、「声とテクスト」、『Nord-Est』、日本フランス語フランス文学会東北支部会報、第3号、2010年 http://genesis.hss.iwate-u.ac.jp/sjllf-tohoku/bull/Nord-Est_No3.pdf#search=%27%E9%98%BF%E9%83%A8%E5%AE%8F%E6%85%88+%E5%A3%B0%E3%81%A8%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%27
【その他】
・学生へのメッセージ
自分の発表だけでなく、他の人の発表もよく聞き、質問や意見を述べる姿勢が大切です。
・オフィス・アワー
柿並良佑:在室時随時(詳しくは開講時に指示します) 合田陽祐:火曜日16:20~17:50その他在室時随時 (詳細は開講時に指示する)
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