法哲学
 Philosophy of Law
 担当教員:池田 弘乃(IKEDA Hirono)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科総合法律コース
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:4単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
法と正義についての哲学的思考とはどのようなものか、それにはいかなる意義があるのかについて概説し、法哲学の基礎的知識を得ることを目的とする。授業は、大きく「第1部 現代の正義論」と「第2部 法の概念」という二つのパートに分かれる。第1部では、リベラリズムと呼ばれる考え方とそれに対する批判を軸に、現代の法哲学者による正義論の展開を検討する。家族・親密圏における正義や国境を超える正義等の個別の論点に対する考察も織り交ぜる。第2部では、法の概念について、権利、自由といった他の法学における基礎的概念との関係に留意しつつ考察する。自然法論と法実証主義の対抗関係や法と道徳の関連性といったトピックについて基本的な見通しを得ることを目的とする。全体を通じて、正義という理念への信頼と懐疑の双方に十分目配りしつつ、法に対する柔軟で主体的な考察のための機会を提供したい。

【授業の到達目標】
正義について哲学的に考察するための基本的知識を身につける。現代社会の抱える難問について適理的に討議することができる。法に対して柔軟で主体的な考察ができる。法と正義の意味について自分なりの観点をもつ。

【授業概要(キーワード)】
正義、法の概念、リベラリズム、功利主義、フェミニズム、法と道徳、自然法、法実証主義、法の解釈

【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。

【授業計画】
・授業の方法
講義形式で行う。適宜受講生とのディスカッションを織り交ぜ理解を確認しながら進める。論点提示や参考文献紹介のためにレジュメを配布する。
・日程
初回をイントロダクションにあて、2回目以降は概ね以下のトピックを扱う。
なお、一部の回においてゲスト講師を迎えての問題提起とディスカッションを行う予定である(詳細は初回に提示する)。

第1部:現代の正義論
1. 功利主義
2. 公正としての正義
3. リバタリアニズム
4. 平等主義
5. 共同体論
6. 多文化主義
7. フェミニズム 
8. 国境を超える正義

第2部:法の概念
1. 悪法問題
2. 法と道徳
3. 現代社会と自然法論
4. 法実証主義
5. 解釈としての法

【学習の方法】
・受講のあり方
講義の内容を各自ノートにとりながら、論点を把握すること。各トピック毎に問い掛けを事前に提示するので、応答を考えて授業に臨むこと。授業中の発言・リアクションペーパー等を通じて、授業内容に積極的に応答すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
受講ノートを見直し論点をまとめる。疑問点を質問する。授業で紹介する参考文献(映像資料を含む)にあたり、授業内容への理解を深める。授業と関連する国内外のニュースに関心を持ち、授業内容と結びつけて考える習慣をもつ。なお、折に触れて憲法学、政治思想史、公共政策学等との関連性について言及する予定なので各自の学習の参考としてください。

【成績の評価】
・基準
筆記試験によって授業内容への理解度と基本的知識の修得度合い、自らの考えを説得的に表現する力を見る。これに授業への主体的な参加の度合いを加味する。授業中の積極的な発言は特に高く評価される。
・方法
中間試験(40%)、期末試験(40%)、授業への主体的参加(20%)。ただし、受講生の人数に応じて配分を変えることがあり得る。

【テキスト・参考書】
テキストは使用しない。

参考書〔授業内でも適宜紹介する。図書館に所蔵しているものを中心とするが、仮に所蔵がない場合も教員が所有している場合があるので、遠慮せず問い合わせてほしい。〕
(全体を通じて)深田三徳・濱真一郎編『よくわかる法哲学・法思想〔第2版〕』(2015年、ミネルヴァ書房)、瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(2014年、有斐閣)。
(第1部について)マイケル・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』(2011年、鬼澤忍訳、ハヤカワ文庫)。
(第2部について)森村進『法哲学講義』(2015年、筑摩書房)、中山竜一『二十世紀の法思想』(2000年、岩波書店)。

【その他】
・学生へのメッセージ
この授業が、正義と法という言葉は「切れば血の出る」生々しい概念であることに触れるきっかけになり、法学という学問領域に魅力を感じている学生はもちろん、そうでない学生にとっても、法への新鮮な関心を喚起する時間になれば、と思います。
・オフィス・アワー
金曜日10:30~12:00(これ以外でも研究室在室中は随時可能)/人文2号館3階、池田(弘)研究室。

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