【授業の目的】
電磁気現象に関する古典物理学がマクスウェルの方程式に集大成されることを統一的かつ平易に叙述して,古典電磁気学を場の概念の基礎から電磁波まで学ぶことが電磁気学の授業全体の目的である。電磁気学Ⅰで学んだベクトル解析を基礎にして,ビオ-サバールの法則,ファラデーの法則などから電流,磁場,電磁誘導に関する基本法則を導き,全体をマクスウェルの方程式にまとめる。さらに,電磁場のエネルギー,電磁波,回路や準定常電流,物質中の電磁場に関する基本事項を習得する。
【授業の到達目標】
(1) 電流と磁場の基本法則からマクスウェルの方程式までを理解し,説明できる。【知識・理解】 (2) 古典電磁気学における場の概念とローレンツ力を理解し,説明できる。【知識・理解】 (3) 電場,磁場,回路,電磁波などに関する基本的な問題を解くことができる。【技能】
【科目の位置付け】
古典電磁気学は,力学と並んで物理学を構成する最も基本的な科目であり,量子力学,統計力学,相対論などから現代物理学を学ぶための必須分野である。この授業は,現代物理学の理解に必要な電磁気学の基礎知識と学力を身につける必修科目の第2部に位置づけられる。
【授業計画】
・授業の方法
通常の講義形式で,内容を板書しながら授業を進める。取り上げる各テーマについて,まとめ,例題と演習問題のプリントを配布する。数回,レポート課題を出題して授業内容の理解を確認する。
・日程
取り上げる内容の主要なテーマとその順序は,次のとおり(カッコ内は,予定授業回数)である。 II 定常電流とその性質(2) 1 定常電流と電荷の保存則 2 オームの法則 III 電流と磁場(5) 1 電流がつくる磁場(ビオ-サバールの法則) 4 磁気双極子 2 電流にはたらく力 5 ベクトル・ポテンシャル 3 アンペールの法則 IV 電磁誘導とマクスウェルの方程式(6) 1 電磁誘導に関するファラデーの法則 4 マクスウェルの方程式とそのポテンシャル表現 2 荷電粒子にはたらく力 --- ローレンツ力 5 電磁場のエネルギー,電磁波 3 変位電流 6 準定常電流と回路 V 物質中での電磁場(2) 1 物質中での電場 3 物質中でのマクスウェルの方程式 2 物質中での磁場
【学習の方法】
・受講のあり方
1) 電磁気学Iで学んだベクトル解析を理解していることが,受講の基本である。 2) 板書の筆写だけでなく,内容をまとめた自家用ノートの作成,演習問題を自分で解く,つくるなど受身の姿勢で受講しないように努める。 3) 「電磁気学演習Ⅱ」の授業にも積極的に取り組み,気に入った演習書を併せて活用する。
・授業時間外学習へのアドバイス
1) 授業で扱うテーマについて,あらかじめ,選んだテキストに目を通す。 2) 授業で学んだ事項について,テキストやプリントの演習問題を実際に解き,授業内容(基本概念や法則)の理解を深める。 3) 授業ですべてのことを扱えるわけではない。電磁気学Ⅰ,Ⅱを通して共通のテキストを最後まで通読して古典電磁気学全体の理解に努める。
【成績の評価】
・基準
電磁場の基本法則(マクスウェルの方程式)とその物理的意味を理解し,基本的な問題を解く力を身につけていることを合格の基準とする。
・方法
レポート課題を数回出題し,期末に筆記試験を行う。基本的には筆記試験(70%),レポート課題(30%)の重みで評点とする。
【テキスト・参考書】
授業は特定のテキストに準拠しないので,自分が気に入ったテキストと演習書(電磁気学Iで選択したもの)をそのまま使用する。 電磁気学の教科書や参考書は非常にたくさんある。代表的なテキストを例示すると次のとおりであるが,そのレベルはかなり異なる。 テキスト: 長岡洋介著,「物理入門コース 3,4 電磁気学 I,II」,岩波書店 テキスト: 飯田修一監訳,「バークレー物理学コース 電磁気」,丸善出版 テキスト: 太田浩一著,「電磁気学の基礎 I,II」,東京大学出版会
【その他】
・学生へのメッセージ
電磁気学Iのシラバスで紹介したジャクソンなどのレベルの高い専門書をみればわかるが,マクスウェルの方程式を導くまでは古典電磁気学の一部である。ポテンシャル論,電磁波,相対論や物質中での電磁場などのきわめて豊富な物理がこの授業では扱われないまま残されている。実際,ランダウの理論物理学教程には「場の古典論 原書第6版」(東京図書)という電磁気学と特殊および一般相対論に関する有名な本がもう1冊ある。「電磁気学Ⅲ」や「相対論」の授業を手始めに,これらについてもすこしずつ学んでいくことの大切さを忘れないようにする。
|