連続体力学
 Continuous Fluid Dymamics
 担当教員:梅林 豊治(UMEBAYASHI Toyoharu)
 担当教員の所属:理学部物理学科
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:物理学科  科目区分:選択科目 
【授業の目的】
 連続体,すなわち流体と弾性体の力学について学ぶことを目的とする。連続体(流体,弾性体)の概念,それらの運動を取り扱う力学の基本的な考え方,流れ,振動・波動,変形などの物理現象を理解・解析する基礎知識を習得する。また,さまざまな物理現象の解明に不可欠な数学「フーリエ級数」も併せて学ぶ。

【授業の到達目標】
(1) 連続体の運動を記述する方法,応力,基礎方程式などの力学的な理論構成を理解し,説明できる。【知識・理解】
(2) 完全流体と粘性流体の流れや波動,弾性体の変形と振動などの物理現象を理解し,説明できる。【知識・理解】
(3) フーリエ級数などの数学的手法の基本を理解し,基本的な問題を解くことができる。【技能】

【科目の位置付け】
 連続体力学は,広がりをもつ物体の流れ,振動・波動,変形などの現象を取り扱う古典物理について,基礎的な専門知識と考え方を学ぶ選択科目である。電磁流体,プラズマ物理,宇宙物理や地球物理などのさらに専門的な物理を学ぶための必須分野でもある。近年急速に発展した孤立波(ソリトン),カタストロフ,カオス,フラクタルなどの最先端分野の物理現象に触れる基礎にもなる。

【授業計画】
・授業の方法
 通常の講義形式で,内容を板書しながら授業を進める。取り上げる各テーマについて,まとめ,例題と演習問題のプリントを配布する。数回,レポート課題を出題して授業内容の理解を確認する。
・日程
 取り上げる主要なテーマとその順序は,次のとおり(カッコ内は,予定授業回数)である。
I  はじめに --- 連続体の力学(3)
 1 連続体とは何か                2 弦の振動 --- 波動方程式とフーリエ級数
II  連続体の変形と応力(5)
 1 連続体の記述                 4 応力と変形 --- 弾性体と流体
 2 連続体にはたらく力              5 連続体の基礎方程式
 3 連続体の変形
III 流体力学(5)
 1 完全流体の運動                3 圧縮性流体の運動 --- 音波
 2 2次元・3次元の簡単なポテンシャル流     4 粘性流体の運動
IV  弾性体の力学(2)
 1 弾性体の変形                 2 弾性波と弾性振動

【学習の方法】
・受講のあり方
1) 板書の筆写だけでなく,内容をまとめた自家用ノートの作成,演習問題を自分で解く,つくるなど受身の姿勢で受講しないように努める。
2) フーリエ級数などの数学は,授業できちっと説明するが,これらについても物理数学として体系的に学習する。
・授業時間外学習へのアドバイス
1) 授業で扱うテーマについて,あらかじめ,選んだテキストに目を通す。
2) 授業で学んだ事項について,テキストやプリントの演習問題を実際に解き,授業内容(基本概念や法則)の理解を深める。
3) 授業ですべてのことを扱えるわけではないので,テキストを最後まで読み通して連続体力学全体の理解に努める。

【成績の評価】
・基準
 連続体に関する基本的な概念とさまざまな物理現象,フーリエ級数を理解し,基本的な問題を解く力を身につけていることを合格の基準とする。
・方法
 レポート課題を数回出題し,期末に試験を行う。基本的には期末試験(70%),レポート課題(30%)の重みで評点とする。

【テキスト・参考書】
 授業は特定のテキストに準拠しないので,自分が気に入ったテキスト(と演習書)を1組選択して通読する。
 連続体の力学を扱った教科書や参考書はたくさんある。代表的なテキストを例示すると次のとおりであるが,レベルはかなり異なる。
テキスト: 恒藤敏彦著,「物理入門コース 8 弾性体と流体」,岩波書店
テキスト: 神部 勉編著,「流体力学」,「基礎演習シリーズ 流体力学」,裳華房(弾性体の力学も含まれている。)
テキスト: 巽 友正著,「基礎物理学コース 2 連続体の力学」,岩波書店
 なお,流体力学については,次の専門書がある。物理をさらに深く学び,研究していくときに役立つ。
参考書: 今井 功著,「物理学テキストシリーズ 9 流体力学」,岩波書店
参考書: 巽 友正著,「新物理学シリーズ 21 流体力学」,培風館
参考書: 今井 功著,「物理学選書 14 流体力学(前編)」,裳華房

【その他】
・学生へのメッセージ
 流体力学と弾性体論の理論構成はほぼ確立しており,乱流に代表される非線形現象の研究などにも強靱な有効性を発揮する。宇宙物理,地球物理や工学のさまざまな分野では,流体や弾性体に関する知識(素養)が不可欠である。「連続体力学」が対象とする物理の広がりは,光通信でも有名なソリトンを記述するKdV方程式,結晶転位や液晶,燃焼,超流動,相対論的流体などの現象から理解できる。

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