機能性無機化学
 Functional Inorganic Chemistry
 担当教員:栗原 正人(KURIHARA Masato)
 担当教員の所属:理学部物質生命化学科
 開講学年:4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
有機金属錯体の構造と性質を学習する。
有機金属錯体とは、少なくとも一つは金属-炭素結合を有している化合物である。無機化学IIで学んできた一般的な錯体はウェルナー錯体と呼ばれるが、有機金属錯体は非ウェルナー錯体と呼ばれている。有機金属錯体の構造は多様であるが、その構造を安定化できる要因について、遷移金属イオンのd軌道と配位子の軌道の重なりから理解する。π結合は既に有機物で慣れ親しんでいるが、遷移金属イオンと配位子の間にもπ結合性が関与した多重結合が存在している。遷移金属イオンと配位子の間の多様な結合様式は、錯体の反応性に大きく影響する。有機金属錯体の基礎とその機能性について学習する。

【授業の到達目標】
この授業は、自然科学、特に無機と有機化学が融合した化学分野における基礎的な知識を身につけることを目的とします。具体的には、有機金属錯体の構造を遷移金属イオンのd軌道と配位子の軌道の重なりから理解すると共に、有機金属錯体の反応性について説明できるようになることを目標とします。

【授業概要(キーワード)】
有機金属錯体、π受容性配位子、18電子則、酸化的付加、還元的脱離、配位不飽和

【科目の位置付け】
この授業は、無機化学についての深い知識を修得し、自己の中に体系化することにより、幅広い視野と探究心を身につけるものです(理学部ディプロマ・ポリシー)。そのため、無機化学IとII、無機・分析化学演習、化学実験IIIと相互に連携した総合的な授業の位置づけです。

【授業計画】
・授業の方法
テキストの精読を中心に講義を進めます。必要に応じて補足のプリントを配布して説明します。教員からの一方通行の授業でなく、適宜、質疑応答を含めて授業を進めます。
・日程
第1、2回目 配位化合物の復習、有機金属化合物の歴史的背景と18電子則
第3、4回目 π受容配位子(一酸化炭素の分子軌道)、有機金属化合物の構造と電子状態
第5回目 有機金属化合物における配位子とその供与電子数、およびその配位構造
第6、7回目 エチレン錯体、シクロペンタジエン錯体、シグマ結合を介した金属との結合
第8回目 第1~7回目の授業に関する試験(中間試験)とまとめ
第9回目 酸化的付加と還元的脱離反応、二窒素錯体
第11回目 アルキル錯体とβ水素脱離反応、カルベン錯体、一酸化炭素の挿入反応
第12回目 有機金属錯体の光反応と触媒反応および演習
第13、14回目 混合原子価錯体と電子移動
第15回目 第9回~14回目の授業に関する試験(期末試験)とまとめ

集中講義の形態をとりますので、上記の授業の進め方は、その都度、別途指示します。

【学習の方法】
・受講のあり方
教科書を購入し、本文に線を引くなどして活用する。板書した内容を整理してノートに筆記しその理解に努める。
・授業時間外学習へのアドバイス
回を重ねるごとに知識の連携が必要になります。教科書の該当箇所を自分で探して関連づけることを勧めます。特に、必修授業である無機化学I、IIと本授業内容についても自分で関連づけることを勧めます。

【成績の評価】
・基準
有機金属錯体の構造や反応性を、遷移金属イオンのd軌道と配位子の軌道の重なりを通じて理解し、適切に説明できることを合格の基準とします。
・方法
中間試験50点+期末試験50点で評価しますが、適宜、レポートを課してそのレポート点で試験の成績を代替することがあります。

【テキスト・参考書】
テキスト:「基本無機化学」第2版(荻野 ・飛田・岡崎 著:東京化学同人)
参考書:「詳説無機化学」(福田・海崎・北川・伊藤 著:講談社サイエンティフィク)

【その他】
・学生へのメッセージ
特に無機化学IIと関連・発展した授業内容です。無機化学IIの内容を復習できるようにその授業内容を組み立てます。錯体の基礎を学ぶことで、有機金属錯体・π結合性を有する錯体の機能について興味を持ってもらいたいと思います。
・オフィス・アワー
基本的にいつでもいます。居室(205)にきてください。

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