生物統計学
 Biostatistics
 担当教員:廣田 忠雄(HIROTA Tadao)
 担当教員の所属:理学部生物学科
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:生物学科  科目区分:必修科目 
【授業の目的】
自然科学の調査において,観察や実験で得られるデータは理解したい現象のほんの一部分でしかないことが多い。例えば,生物の体サイズのような基礎データについても,真の正解はその生物を全個体(母集団)測定しなければ得られない。だが,実際に全個体を測定するのは不可能な場合が多く,一部の個体(標本)の測定値から典型的な体サイズを推定しなくてはならない。統計学の役割の1つはこのような推定の妥当性を定量的に評価することである。
また,自然科学の調査では,複数の生物群の比較や,複数の処理の効果を比較することも多い。だが,生物を対象にした調査では,雑多な環境要因によって生じるばらつきが大きく,複数の生物群や処理群に差が観察されても,たまたま生じたばらつきに起因する可能性も否めない。そのため,観察された差が偶然の産物か否か定量的に評価(検定)するのが,統計学のもう1つの役割である。
このように統計学は,近代的な自然科学調査では欠かせない予備知識である。本講義は,初学者を対象に,統計学の基本理論を分かりやすく解説する。適宜演習も行い,主要な統計手法を実践する機会も設ける。

【授業の到達目標】
データの特性、検証課題に適した統計手法を選択できる能力を身につける。

【授業概要(キーワード)】
統計解析, 推定, 検定, ベイズ推定, モデル選択

【科目の位置付け】
得た情報を理論的に分析し、重要な要因や因果関係を見出す方法を学ぶことで、様々な文化に対する理解を深め、地域を創生する能力を有する次世代の形成を目指す。

【授業計画】
・授業の方法
PowerPointで作成した資料を用いて講義する。同様の内容の資料を配布するが,一部空欄になっているので、講義中に書き込むこと。
・日程
第1週 なぜ統計が必要か?
第2週 推定:代表値, 散布度, 点推定, 区間推定
第3週 検定の基本概念
第4週 二項検定, 一試料のカイ自乗検定
第5週 一試料のt検定
第6週 Fisherの正確確率検定,多試料のカイ自乗検定
第7週 Mann-Whitney検定, t検定
第8週 一元配置の分散分析
第9週 符号検定, Wilcoxonの符号順位和検定, 対応のあるt検定
第10週 二元配置の分散分析
第11週 線形モデル
第12週 最尤推定
第13週 一般化線形モデル
第14週 ベイズ法
第15週 モデル選択

【学習の方法】
・受講のあり方
演習に用いる関数電卓を持参すること(ノートパソコンは不可)。スマートフォンのアプリも可(http://web2.0calc.com)。
・授業時間外学習へのアドバイス
統計処理した際に感じた疑問や,前の講義で感じた疑問点を,講義で質問できるように整理しておくこと。基本的な概念について,分からないことは次の講義までに,できる限り解消しておくこと。

【成績の評価】
・基準
演習の遂行度に加え,講義で概説した基本概念の理解度を試験で確認する。
・方法
期末試験 100点。ただし試験を受けられるのは,演習課題・レポート提出を全て完了した者に限る。

【テキスト・参考書】
参考書
・粕谷英一『生物学を学ぶ人のための統計のはなし』文一総合出版. ・石居進『生物統計学入門』培風館.
・石村貞夫『分散分析のはなし』東京図書. ・Crawley MJ『統計学:Rを用いた入門書』共立出版.
・Grafen A, Hails R『一般線形モデルによる生物科学のための現代統計学 : あなたの実験をどのように解析するか』共立出版.

【その他】
・学生へのメッセージ
数学が得意でない学生にも理解できる講義を行う。ただし,毎回出席して演習を行わないと,講義内容の理解は困難だと思われる。
・オフィス・アワー
講義中に連絡する。

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