基礎腫瘍学
 Basic Oncology
 担当教員:北中 千史(KITANAKA Chifumi)
 担当教員の所属:医学部医学科
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:1単位  開講形態:講義
 開講対象:医学科  科目区分:専門教育・必修 
【授業の目的】
がん細胞の分子生物学、分子細胞生物学

本講義はモデルコアカリキュラム平成22年度改訂版の

E 全身におよぶ生理的変化、病態、診断、治療
2 腫瘍
(1)病理、病態
1)腫瘍の定義を説明できる。
2)腫瘍と染色体異常の関係を概説できる。
(2)発生病因・疫学・予防
1) 腫瘍発生に関わる遺伝的要因と外的因子を概説できる。
2) がんに関連する遺伝子(がん遺伝子とがん抑制遺伝子)の変化を概説できる。

に該当し、「細胞の増殖機構とそれらの異常を学び、腫瘍の定義、発生機構と病態を理解する」ことを目標とする。がんは「遺伝子の病気」であることから、特にがんで見られる遺伝子異常や、がん発生の分子メカニズムについての理解を深める。

【授業の到達目標】
上記の到達目標に示されるように、本講義ではどのような発がん要因が染色体やがん遺伝子・がん抑制遺伝子にどのような変化を引き起こし、その結果細胞にどのような変化が生じてがんが発生するのかを理解し説明できるようになることを目指す。

【授業概要(キーワード)】
腫瘍、発がん因子、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、染色体

【科目の位置付け】
基礎医学各分野、臨床医学を結びつける要に位置する分野である。他の分野についてのよい復習・予習の機会と捉えて学習に臨むこと。

【授業計画】
・授業の方法
パワーポイントを用いたスライド形式の講義を行う。
・日程
講義の主なトピックスはモデルコアカリキュラムに対応した形で以下の3つになる。
(1) 発がん要因とその遺伝子異常誘発のメカニズム
(2) 原がん遺伝子の生理機能とその発がんにおける役割・作用メカニズム
(3) がん抑制遺伝子の生理機能とその失活によるがん発生のメカニズム
これらのトピックスは互いに緊密に関連しあっているため、特に各回毎に割り振ることなく連続的に講義を行う。

【学習の方法】
・受講のあり方
近年の分子生物学の著しい進歩のため、講義で扱う内容も膨大なものとなっている。その内容を習得するためにはまず内容を「理解」することが不可欠である。講義ではノートを取ることよりも話を聞いて理解することに努めて欲しい。
・授業時間外学習へのアドバイス
異常(疾患)は正常を知るためのよい手がかりとなり、正常を知ることは異常を理解するうえで必要不可欠である。然るにがん細胞はゲノムDNAの複製・修復機構、分裂増殖(細胞周期)、生存・プログラム細胞死のメカニズム異常に特徴付けられる。従って本講義の内容をよく理解し習得するためには、複製・修復、細胞周期、プログラム細胞死等の生理機構について十分理解を深めておくことが望ましい。
また授業の進行状況にもよるが、可能な限り前回(まで)の授業範囲を対象とした復習テストとその解答・解説を行う。各テストは、積極的に活用すれば、習得度確認と知識・理解の定着に威力を発揮する。十分な予習(すなわち復習)をもって臨むこと。また、授業に際しては前回(まで)の講義プリントを持参することを勧める。通常、講義時間内には内容を「おおまかに理解する」のが限度であり、各論的事項までその場で習得することは困難と考えられる。従って講義終了後、講義内容(及びテストで正答できなかった箇所)についてなるべく速やかに復習を行い、知識・理解を確実にしておくことを強く勧める。

【成績の評価】
・基準
到達目標に記したがん細胞生物学に関する基礎的知識を身に着けるとともに、それらの知識を活用しながらがんの発生プロセスやがん細胞の特性を含めがんとはどのような病態であるかを理解できることを合格の基準とする。
・方法
出席のチェック、理解度確認テスト(このテストは授業各回の最後に行われるもので、上述の前回までの授業範囲を対象とする復習テストとは異なる)ならびに(全基礎腫瘍学講義終了後の)筆記試験を行う。
尚、本授業科目の筆記試験では、合格できなかった学生に対する再試験は実施しない。不可避かつ正当な事由で本試験を受験できなかった学生に対しては、追試験の実施を考慮する。

【テキスト・参考書】
指定しない。スライド内容を含むプリントを配布し、それに沿って講義を進める。
中村桂子、松原謙一監訳「細胞の分子生物学」第5版 ニュートン・プレス
Kumar, Cotran, Robbins編"Pathologic Basis of Disease"第8版 W.B.Saunders

【その他】
・学生へのメッセージ
今日がんの領域でも分子生物学が臨床の現場に浸透しており、その膨大な知見を理解に基づくことなく断片的に習得することは不可能に近い。従って将来臨床医学でがんを学ぶ際に惑わないためには本講義の履修を通じて「がんの基礎固め」をしておくことが不可欠であることを肝に銘じて欲しい。

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