有機化学Ⅱ(物質)
 Organic Chemistry II
 担当教員:片桐 洋史(KATAGIRI Hiroshi)
 担当教員の所属:理工学研究科
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:物質化学工学科  科目区分:専門科目・選択必修 
【授業の目的】
高校化学における有機化学は単に官能基の特性と変換を覚える化学であった。本講義では有機電子論に基づいて有機化学反応を理解する。結合は電子であり、多くの有機化学反応が電子の動きを理解することによって合理的に説明できる。受講するにあたっては、有機化学Iの「共鳴構造の概念」、「立体構造」、「有機反応の概観」、「カルボカチオンの安定性」に関する深い理解を必要とする。
基本的な有機反応は、付加反応・置換反応・脱離反応・酸化還元反応・転移反応・ペリ環状反応に分類される。付加反応は、有機化学Iのアルケンとアルキンの章で既に学んでいる。本講義は、はじめにテキストの11章のハロゲン化アルキルの反応の中で求核置換と脱離反応を扱い、SN1、SN2、E1、E2反応について詳しく学ぶ。12章と13章は本講義では実施しない。14章では、二重結合と単結合が交互に存在する共役系化合物の性質と反応性について学ぶ。

【授業の到達目標】
1)化合物の命名法を理解し、構造式から化合物名への変換ならびに名称から構造式への変換ができるようになる。2)有機電子論に基づき曲がった矢印を用いて反応機構の説明ができるようになる。3)反応の立体選択性・位置選択性の説明ができるようになる。4)官能基特有の性質と反応を理解している。5)化合物特有の性質と反応を理解している。

【授業概要(キーワード)】
ハロゲン化アルキルの求核置換反応と脱離反応、共役ジエンへの求電子付加反応、芳香族性、芳香族求電子置換反応、アルコールとフェノールの酸性度と反応、エーテルとエポキシドの合成と反応性、チオールとスルフィドの合成と反応性

【科目の位置付け】
この講義は、物質化学工学科の学習・教育目標「(B)工学基礎および専門知識の習得と継続的学習」に主に対応する。

【授業計画】
・授業の方法
講義の最後にテキストの中の問題を宿題として出す。次回の講義が始まる前に提出(A4レポート用紙、表紙は不要)してもらう。
・日程
第1週 11章 ハロゲン化アルキルの反応:求核置換と脱離(1)
第2週 11章 ハロゲン化アルキルの反応:求核置換と脱離(2)
第3週 11章 ハロゲン化アルキルの反応:求核置換と脱離(3)
第4週 14章 共役ジエン(1)
第5週 14章 共役ジエン(2)
第6週 15章 ベンゼンと芳香族性(1)
第7週 15章 ベンゼンと芳香族性(2)
第8週 16章 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換(1)
第9週 16章 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換(2)
第10週 16章 ベンゼンの化学:芳香族求電子置換(3)
第11週 17章 アルコールとフェノール(1)
第12週 17章 アルコールとフェノール(2)
第13週 18章 エーテルとエポキシド:チオールとスルフィド(1)
第14週 18章 エーテルとエポキシド:チオールとスルフィド(2)
15週 定期試験+総合演習

【学習の方法】
・受講のあり方
教科書は必ず持参すること。授業中は私語、飲食等で他の受講生の迷惑となる行為を行った場合は、受講を遠慮してもらいます。途中に教室を出たり入ったりする事も周りの迷惑になるので原則として禁止します。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義前に予習をして関連する有機化学Iの内容を復習しておくことが大切です。

【成績の評価】
・基準
60点以上:化合物の命名法を理解ている。有機電子論に基づき曲がった矢印を用いて反応機構の説明ができる。
70点以上:反応の立体選択性・位置選択性の説明ができる。
80点以上:官能基特有の性質と反応を理解している。
90点以上:化合物特有の性質と反応を理解している。
・方法
期末試験(100点)において、60点以上を合格とする。
なお出席が3分の2に満たない学生は期末試験を受ける資格を失う。

【テキスト・参考書】
マクマリー有機化学 第8版 (上)、第8版 (中), JOHN McMURRY著, 伊東,児玉 訳,東京化学同人, (上)4860円、(中)4752円、大学生協で入手可。
有機化学の教科書は良書が多く出版されており、図書館にも用意されています。ぜひ参考にしてみてください。また、丸善等で販売している分子模型を購入することをお勧めします。有機化学の理解がよりスムーズになります。

【その他】
・学生へのメッセージ
有機化学の魅力は、炭素とその周辺の限られた元素から膨大な化合物が形成される多様性にあります。その多様性から暗記の学問と思いがちですが、有機電子論を理解することで多くの化学反応を系統的に説明できるようになります。そして有機電子論の正当性と適用限界を正しく理解することで軌道概念の重要性を知ることができます。まずは曲がった矢印を用いて反応機構を説明できるようになってください。特徴を持った官能基と個性的な化合物に興味が湧いてくると思います。
・オフィス・アワー
毎週火曜日17:00~18:00、3号館3階3-3204号室

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