量子物理
 Quantum Physics
 担当教員:高橋 豊(TAKAHASHI Yutaka)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)電気電子工学分野
 開講学年:2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:電気電子工学科  科目区分:専門科目・選択必修 
【授業の目的】
現在のIT社会の基礎をハード面から支えているのはさまざまな電子デバイス・光デバイスである。これらのデバイスの開発を可能にしたのは、量子物理学により物質の構造・電気的特性が理解できるようになり、またそれらを定量的に計算できるようになったためである。本講義では、半導体デバイス、磁気デバイス、超伝導デバイスの基礎である量子物理を学んでいく。

量子物理が生まれた背景を考え、基本方程式であるシュレーディンガー方程式を学ぶ。シュレーディンガー方程式の物理的意味を理解し、1次元の電子の運動についてシュレーディンガー方程式を適用して解いてみる。その結果、古典的な電子の運動と量子物理を考慮した電子の運動の違いを理解する。

【授業の到達目標】
○ボーアの水素原子模型を説明できる。また、それを用いて水素の発光スペクトルの波長を計算できる。
○ド・ブロイ波を理解し、電子や粒子のド・ブロイ波長が計算できる。
○シュレディンガー方程式を理解し、1次元のシュレディンガー方程式を説明できる。
○一次元井戸型ポテンシャル中の電子のエネルギーや存在確率をシュレディンガー方程式から計算できる。
○段型ポテンシャルや箱型ポテンシャルに電子が衝突した時の透過・反射をシュレディンガー方程式で説明できる。
○トンネル現象、量子効果を利用したデバイスを量子論的に説明できる。

【授業概要(キーワード)】
ボーアの原子模型、波動関数、シュレディンガー方程式、井戸型ポテンシャル、トンネル効果、 量子物理の最新技術への応用。

【科目の位置付け】
学習・教育目標A-Dとの対応:B
この講義は「電子物性I」と平行して開講され、「電子物性II」 「半導体工学」「電気電子材料」を理解するための基礎的な事柄を学習する。

【授業計画】
・授業の方法
週一回90分の講義を行う。必要に応じて演習を行う。
・日程
第1週:量子物理の基礎 電子工学の最先端
第2―3週:量子効果の発見 光電効果・水素原子モデル
第4-6週:シュレディンガー方程式の導入およびその物理的意味
第7―8週:シュレディンガー方程式の応用1、井戸型ポテンシャル
第9週:前半のまとめと中間試験
第10―12週:シュレディンガー方程式の応用2、ポテンシャル段差
第13週:シュレディンガー方程式の応用3、ポテンシャル障壁
第14週:量子現象を利用した最新技術
第15週:講義のまとめと期末試験

【学習の方法】
・受講のあり方
古典力学(ニュートンの運動の法則)と波動の基礎を理解していることを前提に講義が進む。理解不足の場合には、それらの復習の機会ととらえてこれらの基礎からしっかり復習するとともに、講義の中盤から後半にかけても古典力学との類似点、相違点に注目して理解を深める。
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の講義内容について事前にテキストに目を通し、理解できない項をチェックし整理しておく。わからない点は積極的に質問する。

【成績の評価】
・基準
科目の達成目標に記載の項目について試験を行い、以下の基準を満足したものを合格とする。中間試験50点と期末試験50点の合計100点満点で60点以上を合格とする。また、講義の3/4以上に出席した学生のみが定期試験を受ける資格を持つ。
・方法
量子物理の基礎、シュレーディンガー方程式の意味やその応用などを理解しているかどうかを判断するため、中間試験、期末試験を実施する。

【テキスト・参考書】
<テキスト>応用物性論 (基礎工業物理講座6) 青木昌治 朝倉書店
(「電子物性1」、「量子物理」、「電子物性2」で共通の教科書を使う)
<参考書>基礎電子物性工学 ―量子力学の基礎と応用―、阿部正紀 コロナ社
理工系のための解く量子力学、伊藤治彦、講談社サイエンティフィク

【その他】
・学生へのメッセージ
学科改組によるカリキュラムの変更のために、この講義は本年度(2017年度)が最後の開講となり、2018年度以降は開講されません。この講義の受講を希望する学生は必ず本年度に受講してください。
・オフィス・アワー
8号館219号室。金曜日16時―17時

50304150-2017-05-52440