機械システム設計及び製図Ⅲ
 Mechanical System Design and Drawing III
 担当教員:久米 裕二(KUME Yuji),井坂 秀治(ISAKA Hideharu)
 担当教員の所属:理工学研究科
 開講学年:3年  開講学期:後期  単位数:3単位  開講形態:講義および実習
 開講対象:機械システム工学科  科目区分:専門科目・必修 
【授業の目的】
これまで習得した機械工学の知識を基に,「ものづくり」として,機械装置を設計して製作図を完成させる.
機械工学の総合演習として手巻きウインチの設計及び製図を行う.ドラム,歯車,ブレーキ,軸などの各種部品の設計計算を行いながら,材料力学,JIS 規格,工業材料,機械要素などに関する知識の利用法を習得する.そして許容応力を基準とした強度設計,および操作性と安全性を考慮したバランスの良い人間工学的設計に基づいた製作図面の完成をめざす.また,3D-CADについての概要を学ぶ.

【授業の到達目標】
(1) 与えられた課題に対して,これまで学んだ様々な教科を総合的に用いて,自分独自の方針で6週間程度で設計を完了させ,それをもとに設計図面を8週間程度で製完成できること(学習・教育到達目標 I,J).
(2) 特に,基礎製図,工業材料,材料力学,設計工学,機械工作法で学んだ内容およびJIS規格を自らの設計に適用できること(学習・教育到達目標 G,I).
(3) 設計図面を読みとれること.バランスのとれた使いやすい機械装置を設計できること(学習・教育到達目標D,I).

【授業概要(キーワード)】
キーワード:設計法,製図法と規則,加工法,産業機器/装置

【科目の位置付け】
専門科目「基礎製図」,「機械システム設計および製図I,II」の内容を引き継ぎ発展的内容を取り扱う専門科目である.機械システム工学科の学習・教育到達目標のうち,(D)「創造的,自主的行動力およびコミュニケーション能力」(0.2),(G)「機械工学の基礎力」(0.3),(I)「開発・設計および生産の技術」(0.3),(J)「実験・シミュレーションの計画・遂行力」(0.2)を養成する科目である.括弧内の数値は重みを示す.

【授業計画】
・授業の方法
1回180分の講義および演習を15週にわたり行う.1回の概要は,最初に要点について講義し,与えられた課題に対して各自の設計方針や計画に基づいて演習(設計と製図)を行う.
・日程
第1週 手巻きウインチの設計概論
強度設計法,基準強さ,安全率,許容応力,標準数,機構の選定.
(予習) テキスト第1章を熟読しておくこと.
(復習) 各自の設計仕様,制約条件を再確認し,ウインチの構想図を完成させる.
第2週 ワイヤロープの選定とドラムの設計
引っ張り,せん断,鉄鋼材料.
(予習) テキスト第2,3章を熟読しておくこと.
(復習) ドラムの主要寸法を定め,概略図を描いておくこと.
第3週 歯車の基本設計とつめ車の設計
歯車設計.
(予習) テキスト第4,5,6章を熟読しておくこと.
(復習) 歯車の基本諸元を定め,歯車列の概略図を描いておくこと.また,つめ車の主要寸法を定めておくこと.
第4週 3D-CAD演習
CAD,3次元モデリング,コンピュータ端末の操作.
(予習) CADシステム全般について基礎製図の教科書第3章「CAD製図」を読み,
予備知識を得ておくこと.
(復習) 3D-CADを利用して巻き胴軸設計のための重量計算をしておくこと.
第5週 ブレーキ装置の検討と軸の設計
ブレーキ機構,軸の曲げとねじり.
(予習) テキスト第7,8章を熟読しておくこと.
(復習) ブレーキ機構を定め,その主要寸法を定めておくこと.また,各軸の太さを決めておくこと.
第6週 軸受の選定,歯車の詳細設計,フレームの設計.
すべり軸受け,非鉄材料,曲げ,はめあいの種類と等級.
(予習) テキスト第9,10,11章を熟読しておくこと.
(復習) 軸受長さを定めておくこと.また,歯車のリム,リブ,ウェブ等の寸法を検討しておくこと.さらに,控えボルト長さを決定し,装置全体の概略図を描いておくこと.
第7週 設計書の完成.
詳細設計.
(予習) これまでの検討結果をまとめておくこと.
(復習) 設計書の検査結果に従い,組立図を描けるよう準備をしておくこと.
第8~10週 組立図製図.
製図.
(予習) 設計書を基に,組立図を描けるよう準備をしておくこと.
(復習) 検図の締切に間に合うよう,遅れている作業を進めておくこと.
第11週 中間検図.
図面の検査.
(予習) それまで描いた図面に不備がないよう,予め図面を検査しておくこと.
(復習) 検図チェックリストに従い,図面の不備を修正しておくこと.
第12~14週 部品図製図.
製図.
(予習) 設計書および描いた組立図に基づき,部品図を描けるよう準備をしておくこと.
(復習) 検図の締切に間に合うよう,遅れている作業を進めておくこと.部品表の準備をしておくこと.
第15週 最終検図.
図面の検査.
(予習) 設計書,描いた図面,部品表等において不備がないことを予め検査しておくこと.
(復習) 合格水準に達しない図面を修正しておくこと.
※日程は変更になる場合がある.

【学習の方法】
・受講のあり方
欠席および遅刻を厳しく禁止する.計画的に作業を進め,提出期限を厳守すること.毎回出席を取る.
・授業時間外学習へのアドバイス
・予習のあり方
設計や製図を期限内に完成させるために,テキストをあらかじめ良く読み,設計手法や製図法を確認しておくこと.
・復習のあり方
設計をスムーズに進めるために,引張,曲げ,ねじりおよびせん断等の外力に対する強度計算の手法について,そのつど復習して良く理解しておくこと.

【成績の評価】
・基準
課題に対して最適な設計がなされているか,図面が JIS「製図総則」や「機械製図」に従っているか,尺度・バランス・レイアウトの適切さ,線の使用法と鮮明さ,また提出期限を守っているかなどについてチェックし,総合的に評価する。100点満点中60点以上を合格とする。
評価内容として,設計法に関する項目40%(到達目標の(2)),製図法と規則,加工法等に関する項目40%(到達目標の(1)),設計および製図全体をバランス良く遂行しているかに関する項目20%とする(到達目標の(3)).
・方法
設計書,提出図面の結果,提出状況を総合して成績を評価する.

【テキスト・参考書】
テキスト:
機械設計研究会 編,「手巻きウインチの設計 第3版」,理工学社(税込¥2,160- 使用予定)
林洋次 監修,「機械製図」,実教出版.

参考書:
大西清,「基礎製図 第2版」,理工学社(¥1,900)
大西清,「JISにもとづく標準製図法 第13全訂版」,理工学社(¥1,800)
野田直剛ほか,「要説 材料力学」,日進出版
打越二彌,「図解 機械材料 第3版」,東京電気大学出版局
尾田十八ほか,「機械設計工学1 要素と設計 改訂版」,培風館

【その他】
・学生へのメッセージ
真面目に取り組めば,授業時間内に完成することもできる.遅刻や欠席は厳禁である.
設計製図では,工業材料,材料力学,設計工学,機械工作法,基礎製図などで学んだ基礎知識を必要とするので,十分復習しておくこと.「基礎製図」のテキストも必ず持参すること.
・オフィス・アワー
機械システム工学科のwebページから参照できる.

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