機械技術者倫理
 Engineering Ethics
 担当教員:安原 薫(YASUHARA Kaoru)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)機械システム工学分野
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:機械システム工学科  科目区分:基盤教育科目・必修 
【授業の目的】
科学技術の発展は経済活動の発展とともに、人間生活の高度化、複雑化、多様化を加速しています。それはときに、事故や環境破壊を、より大規模なものにし、被害の拡大や多発化をひきおこすことがあります。これらの背景を技術者の倫理的側面からみると、未然に防げたケースが少なくはありません。
本講義では、科学技術の歴史や過去の事例、我々の住む山形の技術と環境対策、先輩技術者の行動事例を教材とし、いま直面している課題に向き合っていきます。そして、みなさんがこれからの科学と人類の発展を支える技術者として、身につけるべき社会的規範、組織のなかで遵守すべき法律、道徳そして倫理観について、学び、涵養し、表現することを目的としています。

【授業の到達目標】
1. 機械工学の技術者として高度な知性と知識、それに伴う判断能力を求められることを認識し、必要な安全対策とリスクの考え方、環境や生命の保護に対する技術者の責任を理解する。【知識・理解】〔DP1,2〕
2. 公益、リスクとトレードオフ、アセスメントやユニバーサルデザインについて技術者としての視点からその理念を説明することができる。【知識・理解】〔DP4,7〕
3. 知的財産権、製造物責任法および公益通報者保護法などの意義を理解し、技術者が関わる基礎的な法規を説明できる。【知識・理解】〔DP8〕
4. 技術者としての倫理的な観点から過去の事例の原因や問題点を主体的に考察できる。【態度・習慣】〔DP5〕
5. 山形県の技術、環境問題に目を向け、技術者としての見解を示すことが出来る。【態度・習慣】〔DP2〕
6. グループワークに積極的に取り組み、コミュニ-ケーション、複眼的思考を通してグループメンバーの意思統一を行うことが出来る。【技能】〔DP3〕
7. 様々な事例・課題に対して、機械工学の技術者としての見解から、問題点と解決策を小論文にまとめることが出来る。【技能】〔DP5〕

【授業概要(キーワード)】
技術者倫理、公益、、品質管理、リスク、トレードオフ、製造物責任法、知的財産権、公益通報者保護法、環境問題、アセスメント、ユニバーサルデザイン、グループワーク

【科目の位置付け】
社会に立つ機械技術者の視点から倫理問題の考察を行うことで、機械システム工学科の教育理念にある「学生個々人の個性を尊重した人格の形成」や「健全かつ多様な価値観に基づき主体的に行動できる」という人材育成に関与する。具体的には、機械システム工学科の学習・教育目標における(B)技術者倫理と国際性を兼ね備えたリーダーシップ、(F )職業観、(K)技術者倫理観に対応する。

【授業計画】
・授業の方法
1回90分全15回、 講義とグループワークを織り交ぜながら行う。講義では、毎回出席票兼ミニッツペーパーを提出、また講義時間内に4回小論文を作成する。
・日程
第1週 技術者倫理とは 公益の確保
・講義の進め方 ・公益について ・技術者倫理と道徳の違い
・技術者の直面する社会的課題 ・JABEEと技術士制度
第2週 Engineerの課題と責任 リスクとトレードオフ
・品質のとらえ方 ・品質管理、PDCAサイクル ・リスクとトレードオフ
第3週 事例解説1
第4週 グループワーク1 過去の事例に関する問題提起
第5週 倫理の法体系・倫理綱領 産業財産権と製造物責任
・製造物責任法 ・知的財産権
第6週 歴史と先人に学ぶ (映像教材 知的財産権がテーマ)
第7週 倫理的意志決定 公益通報
第8週 事例解説2
第9週 グループワーク2 意見の統一
第10週 グループワーク3 線引き問題
第11週 環境問題とテクノロジー
・環境問題および環境調査 ・テクノロジーアセスメント
第12週 事例解説3 (映像教材 環境問題とテクノロジーがテーマ)
第13週 ユニバーサルデザイン
・バリアフリーからユニバーサルデザインへ
・グローバル社会における価値観の多様性
第14週 グループワーク4 課題発見と解決策の提案
第15週 まとめと期末試験

【学習の方法】
・受講のあり方
本講義内容の本質や性格上、受講態度や姿勢、提出物の状況を重視している。それゆえ、正当な理由のない欠席、遅刻は減点対象となる。また、常に自分自身が技術者であるという自覚を持ち、講義内容の理解やグループワークに取り組む。
・授業時間外学習へのアドバイス
・予習のあり方
授業計画の題目を参考に、常に新聞やニュース、インターネットを活用し、身近な「技術者倫理」に関わる事例に関心を持ち、技術者としてどのように問題や課題に取り組むべきかを考える。また、小論文のテーマにもなり得るため、それを基に「技術者としての見解」をまとめておくとよい。
・復習のあり方
講義中に出てきたキーワードや法律、重要な事例等については正確に説明できるようにしておく。理解不足の点等については、自分自身の調査も重要である。講義では最近のニュースや事例についても取り上げる、その後についても自分で調べておく。

【成績の評価】
・基準
小論文、グループワーク、期末試験を通して以下のことができることが合格基準となる。
・講義を通して得られた技術者としての倫理判断に必要な概念、法律、および事例について正確に説明できる。
・社会の様々な技術的問題、環境問題、技術者の関わる倫理問題に対して、自分自身の技術者としての見解を提示できる。
・グループワークにおいて、協調して課題に取り組むことができる。
・方法
小論文 全4回作成 各10点×4回 計40点
グループワーク 全4回 各5点×4回 計20点
期末試験 40点満点 (内10点はレポート)
合計100点満点で評価を行い、60点以上を合格とする。
また、本講義の本質や性質上、レジュメのみによる独学は非常に困難である。したがって、複数回の正当な理由のない遅刻、欠席に伴うミニッツペーパーの未提出についてはその度合いにより減点を課す。

【テキスト・参考書】
各講義中に講義内容に関するレジュメを配付し、それをテキストとする。
参考読本、参考書は講義中に紹介する。

【その他】
・学生へのメッセージ
技術者倫理とは、正確な解答はない学問と言えるかもしれません。自らが能動的に課題に向き合い、技術者としての知性と知識を持って、周囲の人とのコミュニケーションを取りながら柔軟に判断することが、あなた自身や人類の未来を切り開く結果をもたらします。
この講義が、自分の置かれている社会に目を向け、公益を守る技術者としての責任を自覚し、自己研鑚に努めるきっかけとなることを期待します。
・オフィス・アワー
居室:7号館109号室 (オフィスアワーは学科掲示版を確認してください。)

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