今日の農村計画は、その内部に劣化要因を抱えつつも様々な価値を有している農村地域を対象に、それらの価値を維持し発展させることが求められている。本授業では地域環境整備に配慮した資源環境計画学の基礎知識を学び、農産物の生産、販売、消費はもとより、環境、社会、経済、文化の面からの影響を配慮した『長期展望に立った地域のあるべき姿』を『ある地域でセットとして総合的に模索』できる計画者（プランナー）となることを目的とする。

　この授業を履修した学生は、
１）農村地域の実態について、水土環境科学の本質的な観点から説明できる。【知識・理解】
２）計画立案事例を作成できる。【技能】
３）計画理論の視点から環境に配慮した農村計画について、討議することができる。【態度・習慣】

水田、森林環境、灌漑、排水、農道、畑地、農業生産、農法、環境保全、生物多様性、圃場整備、汎用農地、計画理論、技術者倫理

　この授業は「大地（農地と道路）」「水（水利）」「空気と緑とエネルギー（農村環境）」「人（社会）」の統合体を対象に、農山村の自然環境について様々な視点から理論的に考察することによって、市民、技術者および研究者として相応しい健全な精神に裏付けられた幅広い社会知識を習得するものであり、以下の食農環境マネジメント学コースのディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーに該当する。
【ディプロマ・ポリシー：】
１．豊かな人間性と社会性
（１）人類の叡智と多様性に関心を持ち、洞察力をもって主体的、自律的に学び続けることができる。
（２）健全な批判精神を持つ良識ある市民としての倫理観と責任感を持っている。
２．幅広い教養と汎用的技能
（２）現代社会を生き抜くための基本技能として、論理的思考力とチームワーク力及び膨大な情報の取捨選択力を身に付け、社会生活に活用できる。
３．専門分野の知識と技能
（１）食料・農業・環境の実態についてフィールドを通して理解し、持続可能な農業経営の発展や地域活性化方策についての基本的な概念や原理を体系的に理解している。
【カリキュラム・ポリシー：】
１．教育課程の編成・実施など
（１）学士課程基盤教育においては、豊かな人間力と社会力を醸成する基盤共通教育科目と、専門分野の中核となる概念や原理を理解する専門教育科目とが有機的に構造化されたカリキュラムを編成する。
２．教育方法
（１）生涯を通じて主体的に学び続ける動機づけとなるような、多様で学際的な知識と技能が身に付く初年次教育を展開する。また、必要に応じて、基礎学力の定着を目的とした授業時間外学習を促す。
３．教育評価
（１）学習者が到達度を確認できる明確な成績評価基準を策定し、不断の教育課程の点検と学生の学習成果を組織的に評価する。

１）プリント資料の精読を中心に進め、スライドや映像教材なども併用する。
２）毎回、授業の最後に授業の内容について小テストによる質疑を行う（選択制）。
３）基本的な事項からかなり平易に説明する。

第１回目 はじめに（ガイダンス）―農村計画学の役割と倫理観―
第２回目 農業生産計画論 １．農村計画の定義および計画理論についての定義 ２．農業生産の意義と増収の理由
第３回目 水田灌漑計画論 １．灌漑の意義 ２．水田灌漑水の収支と灌漑計画
第４回目 水田排水計画論 １．水田浸透 ２．生産力と用排水操作
第５回目 水田排水計画論 ３．地下水位と浸透量の水田構造への影響 ４．圃場排水計画
第６回目 農地汎用化計画 １．日本の農法の特徴 ２．輪作と生物多様性の保全
第７回目 農地汎用化計画 ３．台湾の立地と気候 ４．華南大圳での成功例
第８回目 農地汎用化計画 ５．区画整理と換地理論 ６．農村計画における環境配慮の方法
第９回目 圃場整備計画論 １．圃場整備工事と土木工事の相違点 ２．庄内での成功例 ３．農地の流動化と大規模借地経営、大区画圃場
第10回目 圃場整備計画論 ４．難透水性土層の造成 ５．圃場の独自性と連帯性 ６．非農用地の換地、耕作放棄、中山間地域と農村活性化
第11回目 環境保全計画論 １．森林と農地 ２．農村景観（棚田・谷地田）の存在意義と保全 ３．畑地からの硝酸流出防止方法
第12回目 環境保全計画論 ４．水田からの窒素流出 ５．水田からの窒素流出防止方法 ６.持続可能な農地環境基盤の創出
第13回目 環境保全計画論 ７．活性窒素をわたしたちの生活の視点から考える ８．森林環境の重要性
第14回目 自然と人間の共生構造の視点から試みた新たな農村自然環境構造の導出
第15回目 『持続可能な発展の保証』としての『環境への配慮』－再考－

１）プリント資料の重要部分に線を引くなどして活用する。
２）授業内容をノートなどに筆記して内容の理解に努める。その際、言われたことを鵜呑みにしないで、自分の頭で考える。
３）遅刻をしないこと。

１）参考書や次回のプリント資料を通読すること。
２）授業内容とそれと関連する参考書の箇所について、各自で整理し、自分用のノートを作成すること。
３）小テストの内容について、正解と照合し解き直すとともに、図書館やインターネットを活用し、情報を収集し、整理しながら復習し、自分の考えをまとめておく。
４）回を重ねるごとに知識の連携が必要になるので、プリント資料と小テストの該当箇所を自分で探し関連づける。
５）わからないことは担当教員に遠慮無く質問すること。

　合格の基準：授業終了時に、以下の三つの事項がすべて達成されること。
１）農村地域の実態について、水土環境科学の本質的な観点について適切に述べることができること。
２）計画立案事例の問題点や改善方法について、主体的に考え、準備できること。
３）計画理論の視点から環境に配慮した農村計画について、討議することができること。

　授業内容について毎回小テスト（100点満点）を行い、テスト回数を考慮して、小テストの合計を100点に圧縮し、成績を評価します。または、授業出席回数が大学基準（「1/3を超える欠席」は不可）を満たす者について、最終回に１回だけ試験を行い、その内容を評価します。ただし、履修決定直前の授業の際、授業出席者に当成績評価方法についての是非を問い、最終的な成績評価方法を授業出席者の多数決で決定します。
１）小テストの合計を100点に圧縮。
または、
２）最終回での１回のみの『まとめテスト100点（授業の全範囲）』

　担当教員が作成したテキストのうち、次回の授業内容に該当するテキスト（プリント）を毎回配付する。
参考書：「農業農村工学ハンドブック」（（社）農業農村工学会）、塩沢昌、山路永司編「農地環境工学」（文永堂出版）

１）「知識の欠落」は「頭の鈍さ」と一緒ではありません。「知識の欠落」から生じた「独創性」を大事にしてほしいと思います。
２）知識の量が増えた後でも「知的興奮」が持続できれば、よく勉強したといえるでしょう。
３）理系・文系の学生にもわかる授業内容です。

木曜日の12:00～13:00（研究室）・連絡先は講義で連絡します。