農村地域の歴史と生活
 History and Life of Rural area
 担当教員:保木本 利行(HOKIMOTO Toshiyuki)
 担当教員の所属:農学部食料生命環境学科食農環境マネジメント学コース
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:食料生命環境学科  科目区分:必修科目 
【授業の目的】
社会“問題”の発生は、社会関係の変貌の写し鏡です。本講義では、世界および日本の農村社会がこれまでに経験してきたさまざまな社会“問題”への着目という切り口から、社会の歴史的変容の経緯を探り、問題発生の背後で進展した伝統的な地域の社会関係の重層的な変容の有様を考察します。
世界および日本の地域社会がこれまで経験してきたさまざまな社会“問題”を、1.問題発生の歴史的経緯、2.当事者間の立場の相違・対立、さらに、3.問題発生の背後にある社会関係の変容の有様、に注目しながら、時代の経緯に即して概説してゆきます。そのさい、問題発生の基本的メカニズムへの理解を確かなものとするために、<地縁的秩序から貨幣媒介的秩序への変容>という視座を強調しながら講述を進めてゆきます。

【授業の到達目標】
1)眼前の諸社会問題を、歴史的・文化的・経済的・および社会学的視座から複眼的に考察する力を身につけます。
2)今日の食料・農業・農村分野での諸課題に対して、さまざまな当事者の立場の違いを乗りこえて、高い見識と展望をもって、具体的な問題解決策を提示しうる力を身につけます。

【授業概要(キーワード)】
農業史、農村社会学、農業をめぐる政治経済学

【科目の位置付け】
この授業は、学部のディプロマ・ポリシーに掲げられている、環境、食料、農業問題等についての総合的な判断力、諸課題への高い見識と展望および解決能力をもつ力を身につけるための教育の一環です。

【授業計画】
・授業の方法
必要に応じて資料プリントを配布し、また、視覚資料等も多用しながら講義します。
・日程
第1回:イントロダクションー“問題”を通して歴史的視野から農村社会を理解する
第2回:狩猟採集から農耕文明へ:マーヴィンハリスの論考を参考に
第3回:風土が律する農業と社会の形:乾燥アジアと湿潤アジアをめぐって
第4回:砂糖入り紅茶とパックスブリタニカ:近代社会の形成と世界の一体化
第5回:前近代社会と近代社会の相違のまとめ:個と集団の矛盾とその異なった解決方法
第6回:映像の世紀:JAPAN〜世界がみた明治・大正・昭和
第7回:日本における農業問題の歴史的背景1:地目結合の生産力とイエ・ムラ
第8回:日本における農業問題の歴史的背景2:近代的所有権とはなにか?地主制的農村秩序と小作争議
第9回:日本における農業問題の歴史的背景3:加害の経験:農業問題と植民地と統制経済
第10回:戦前期農村社会変貌のまとめ:1870年生、1900年生、1930年生の世代経験から
第11回:戦後占領下の民主化から朝鮮戦争下の「逆」コース・55年体制の形成へ
第12回:高度経済成長下の農業近代化と農工間所得「格差」の発生
第13回:農産物過剰「問題」下の後継者難と政府「依存型」地域経済の形成
第14回:貿易自由化「論争」と農業切り捨ての大合唱
第15回:戦後農村社会変貌のまとめ:何が変わったのか、なぜ変わったのか、どう変わったのか

【学習の方法】
・受講のあり方
資料等も大部配布しながら進めますが、配られた資料をただ眺めるだけといった受け身の姿勢ではなく、授業での講述内容をしっかりと自筆ノートにとり、不明な部分は適宜質問し、自分なりの理解を組み立てながら講義を受けるようにしてください。
・授業時間外学習へのアドバイス
農村地域の歴史的変遷を学ぶためには、今日の社会状況からは想像できない各時代状況を、具体的にイメージできるようになることが必要です。そのためには、授業で取り上げたさまざまな出来事について、インターネットや図書館等を利用して、自分なりに調べながら復習することが有効です。

【成績の評価】
・基準
農業をめぐる地域や社会の変遷について、多面的かつイメージ豊かに考察でき、今日の食料・農業・農村地域の諸問題に対して、自らのしっかりした見解を述べられることを合格の基準とします。また、授業に積極的・能動的に参画できていることも合格の基準です。
・方法
試験(30%)と、3回の提出レポート(30%)、および出席状況(30%)と履修の態度(10%)にもとづいて総合的に判断します。

【テキスト・参考書】
レポート課題として、以下の三冊を授業の中でとりあげます。
宮本常一『生きていく民俗 -生業の推移』河出文庫
小熊英二『日本という国』理論社
山下惣一『農から見た日本 ある農民作家の遺書』清流出版
それ以外は、下記の書籍を適宜参考にしてください。
暉峻衆三『日本の農業150年』有斐閣ブックス、2003年
岸康彦『食と農の戦後史』日本経済新聞社、1996年
井村喜代子『現代日本経済論』新版、有斐閣、1993年
NHKスペシャル『映像の世紀』

【その他】
・学生へのメッセージ
毎回、出席カードを配ります。そこに授業内容の感想や疑問を記入し提出してください。

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