農地工学
 Land Resource Sciences
 担当教員:石川 雅也(ISHIKAWA Masaya)
 担当教員の所属:農学部食料生命環境学科水土環境科学コース
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:食料生命環境学科水土環境科学コース  科目区分:コース必修科目 
【授業の目的】
 農地・農村・森林を対象に、先行研究で明確になっている『空気や水、緑や大地』そして『生き物』の相互メカニズムへの理解を深めるために、現状ではそうした自然物を人間がマネジメント(コントロール=管理・運営)できるのだろうか、どの部分ができて、どの部分がまだできていないのだろうか、どうしたら自然物を適切にマネジメントできるのか、について焦点を当てて検討し、特に以下の三つの観点(テーマ)を通じて、近年の研究状況について基本的な概念と基礎的な知識を得ることを目的とする。
1.水質環境と水質保全
2.温室効果ガスと低炭素社会
3.エネルギー転換

【授業の到達目標】
 この授業を履修した学生は、それぞれのテーマについて、
1)その実態を十分に理解できる。【知識・理解】
2)その問題点や改善方法について考え、準備し、実施できる。【技能】
3)農地・農村・森林における『大気・水・緑・土壌に対する人為的な管理』に対して、水質環境や温室効果、燃料資源の観点から理解を深め、自分自身の『環境問題、食料問題、エネルギー問題』として考え、討議し、配慮できる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
水質環境保全、森林環境保全、地球温暖化、砂漠化、自然再生、バイオマスエネルギー、循環型社会、水土の知

【科目の位置付け】
 この授業は「大地(農地と道路)」「水(水利)」「空気と緑とエネルギー(農村環境)」「人(社会)」の統合体を対象に、農山村の自然環境について様々な視点から理論的に考察することによって、技術者および研究者として相応しい健全な精神に裏付けられた幅広い社会知識を習得するものであり、以下の水土環境科学コースのディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーに該当する。
【ディプロマ・ポリシー:】
1.豊かな人間性と社会性
(2)持続可能な農業と農山村のあり方を検討することができる。
(3)社会の一員として他者への理解と協調のもとに、より良い地域づくりに貢献できる。
2.幅広い教養と汎用的技能
(1)身近なフィールドを通して農業と地域の実態を理解すると共に、地球規模での食料・生命・環境の問題を多面的に理解できる。
3.専門分野の知識と技能
(2)農村・農地・農業水利施設などの整備に必要な基礎知識を身に付けるとともに、社会資本の整備に伴う環境への影響を理解して環境保全策を検討することができる。
【カリキュラム・ポリシー:】
1.教育課程の編成・実施など
(1)専門分野の中核となる概念や原理を理解する専門教育科目と専門科目を有機的に構造化し、土と水の科学及び農村・農地・水利に関する技術を修得しやすいカリキュラムを編成する。
2.教育方法
(1)身近なフィールドを通して農業と地域の実態を理解するとともに、国際的な視野をもって農業・環境問題の多面的な理解と環境保全策の検討につながる授業を拡充する。
(2)農業と農山村の持続可能な発展に資することができる農村・農地・農業水利施設の計画、設計法を身に付けることができる専門科目を展開する。
3.教育評価
(1)学習者が到達度を確認できる明確な成績評価基準を策定し、教育課程及びカリキュラムを不断に点検・評価する。

【授業計画】
・授業の方法
1)教科書の精読を中心に進め、映像教材なども併用する。
2)毎回、授業の最後に、授業の内容について小テストによる質疑を行う。
3)かなり平易に基礎から説明する。
4)なるべく1コマごとに内容を区切るようにする。
・日程
第1回目 1.技術と人間-技術の価値観と倫理観 2.地下水枯渇問題に内在する汚染物質と酸性化現象
第2回目 1.水土環境管理における『持続可能な未来』と『持続可能な社会』 2.エコロジカル・フットプリントと南北格差 3.フェアトレード と循環型社会 4.里山の文化と地元学
第3回目 1.農業の環境保全機能-活性窒素種 2.河川と湖沼、森林の現状
第4回目 1.農業農村整備事業における環境への配慮 2.水質変動要因
第5回目 1.湖沼の生態系復元への取り組み 2.港湾でのネガティブスパイラル
第6回目 1.アフリカ・中国・ドイツ・米国の水土環境 2.自然浄化機能の限界
第7回目 1.リンと貧酸素水塊 2.自然再生事業
第8回目 1.大都市水道水の現状 2.生活排水
第9回目 1.畑地からの窒素の流出 2.畑地灌漑時の土壌水分計算 3.畜産汚染
第10回目 1.温室効果ガスと排出量取引 2.ティッピング・ポイント
第11回目 1.スウェーデンでの炭素税 2.カーボンオフセット
第12回目 1.ドイツでの自然エネルギー 2.日本の発電事情と環境税
第13回目 1.ドイツの環境税戦略 2.低炭素社会への転換
第14回目 1.バイオマスプラントと小型水力発電 2.太陽光発電
第15回目 1.農地農村基盤の新たな創成 2.森林の環境保全効果 3.限りある資源から産み出す資源への転換

【学習の方法】
・受講のあり方
1)テキストを購入し、重要部分に線を引くなどして活用する。
2)授業内容をノートなどに筆記して内容の理解に努める。その際、言われたことを鵜呑みにしないで、自分の頭で考える。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)小テストの内容について、正解と照合し解き直すとともに、図書館やインターネットを活用し、情報を収集し、整理しながら復習し、自分の考えをまとめておく。
2)回を重ねるごとに知識の連携が必要になるので、教科書と小テストの該当箇所を自分で探し関連づける。
3)わからないことは担当教員に遠慮無く質問すること。

【成績の評価】
・基準
 合格の基準:授業終了時に、以下の三つの事項がすべて達成されること。
1)三つのテーマの基礎的な事項について適切に述べることができること。
2)三つのテーマの問題点や改善方法について、主体的に考え、準備できること。
3)農地・農村・森林における『大気・水・緑・土壌に対する人為的な管理』に対して、水質環境や温室効果、燃料資源の観点から理解を深め、自分自身の『環境問題、食料問題、エネルギー問題』として、応えることができること。
・方法
 原則として授業内容について毎回小テスト(100点満点)を行い、テスト回数を考慮して、小テストの合計を100点に圧縮し、成績を評価します。または、授業出席回数が大学基準(「1/3を超える欠席」は不可)を満たす者について、小テストの成績が不満な者に対して、最終的な課題のレポートを提出してもらい、その内容も評価します。
1)小テストの合計を100点に圧縮。
または、
2)『小テストの合計を50点に圧縮』+『レポート50点』

【テキスト・参考書】
テキスト:「清らかな水のサイエンス」ー水質環境学ー((社)農業農村工学会)参考書:田渕俊雄著「湖の水質保全を考える 霞ヶ浦からの発信」(技報堂出版)その他、「水環境ハンドブック」((社)日本水環境学会)、「環境白書」(国及び県で毎年発行)

【その他】
・学生へのメッセージ
1)「学生諸君は単位を取得するためだけでなく、心から学びたがっている」という前提のもとで授業を行います。
2)学生を尊敬し、丁重に接します。しかし「甘やかすこと」はしません。
3)特に、水質環境や温室効果ガスについて、日本ならびに世界の事例を紹介しながら、相当濃密に授業します。この課題に関心があり、熱意のある人は、受講してください。
4)理系・文系の学生にもわかる授業内容です。
・オフィス・アワー
・木曜日の12:00~13:00(研究室)・連絡先は講義で連絡します。

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