【授業の目的】
社会科学系3コースの学生が公共政策を学んでいくための基礎講座です。公共政策とは環境・医療・福祉など社会全体に共通する課題に取り組むために選択、決定される方針を指します。つまり私たちは全員が公共政策の対象であるとともに市民として公共政策の決定に関わる主体です。そして課題も全地球的なものから身近な地域社会に至るまで広範囲にわたります。本講義は市民にとって必要な公共政策についての基礎的な知識を得ることを目的として、現在の公共的課題への取り組み方について、政治学,経済学,法学,地理学,社会学などの領域から具体的な事例を紹介し、検討していきます。
【授業の到達目標】
この講義を履修した学生は、以下のことができるようになります。 1)広範な公共政策について基本的な知識と考え方を他者に説明すること。 2)地域社会がかかえる公共的課題を自ら調べ、発見し、理解すること。 3)公共的課題を地域性を活かして解決するために必要な専門的な知識を探究していくこと。 4)公共政策についての考察を深めていくこと。 5)市民として今後の市民社会形成について考え、他者と討議すること。
【授業概要(キーワード)】
公共政策、環境、医療、福祉、公共経済学、行政、政府、地方自治体、国際機関、NPO
【科目の位置付け】
カリキュラム・ポリシーとの関係については、「カリキュラム・マップ」を参照し、よく理解したうえで履修してください。
【授業計画】
・授業の方法
配布資料、板書、対話、スライド、ビデオ等の多様な方法を用います。ただし、その回のための資料は講義時に配布はしませんので、WebClassから必ず事前に電子ファイルをダウンロード、プリントアウトして持参してください。
・日程
<総論> ・第1回 川村一義「公共政策はなぜ難しいのか」 ガイダンスも兼ね,公共政策の難しさの原因について解説します。 ・第2回 是川晴彦「公共経済」 公共部門が社会に対してどのような役割をはたすべきかについて,経済学の視点から解説します。 <地域公共政策> ・第3回 北川忠明「地域主義の展開と地域創生」 日本の地域主義の展開と地方分権改革を踏まえて、地域創生の課題を考えます。 ・第4回 山田浩久「都市計画とまちづくりの関連」 都市計画もまちづくりも意志を持って街を変えていこうとするものですが,両者の関連からその特徴を明らかにしていきます。 ・第5回 松本邦彦「市民団体がになう公共政策」 国内外で活動する市民団体(NPO,NGO)に着目します。 ・第6回 阿部晃士「住民意識と公共政策」 住民は公共政策をどのように認識し、行動しているのでしょうか。廃棄物問題などを例に説明します。 ・第7回 山本英弘「市民参加と公共政策」 個々の市民がどのように政治に参加し、公共政策に価値や利益を反映させうるのかについて解説します。 <国の法体系のもとの公共政策> ・第8回 金子優子「我が国行政の制度とその変容」 行政の役割・制度について概説し、行政改革への取組を分析します。 ・第9回 和泉田保一「公共政策と条例」 まちづくり条例などの条例制定を通じた政策実現の可能性と実際について解説します。 ・第10回 戸室健作「非正社員増大の実態と背景」 非正社員増大の実態と背景を説明し、あるべき雇用社会の実現にとって、この問題にどのように対処すべきなのかを考えます。」 ・第11回 阿部未央「日本的雇用システムとその変容」 3つの特徴を有する日本的雇用システム、その前提となっていた社会環境の変化および直面している課題について解説します。 <国際公共政策> ・第12回 高橋和「国内社会と国際社会の仕組みはどう違うのか」 政府が国内を統治する仕組みの国内政治では、公共政策の利害の対立は政府が主導して調整することができますが、「世界政府」のない国際社会では、国際公共政策を実施するための調整がより難しいものとなります。国際社会と国内社会の政策決定のプロセスが異なるのはなぜか。社会の仕組みの違いから考えます。 ・第13回 丸山政己「国際公共政策と国際組織」 地球的規模の課題を解決するために国連などの様々な国際組織が果たす役割について考えます。 <総論ふたたび> ・第14回 星野修「公共政策の政治哲学」 政治的(集合的)決定の正当性について、M・サンデルおよびJ・ロールズらの議論に沿って考察します。その際、サンデルの諸著作において取り上げられている事例を参考に考察を進めてゆきます。 ・第15回 期末試験
【学習の方法】
・受講のあり方
講義を聴くだけでなく、社会の抱える問題についてどのように取り組めばいいのか、主体的に考える姿勢をもってください。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義に関係するニュース等に気を配り、講義内容に関心を持って臨むように。ノートや配布プリントを整理し、疑問点は図書館などで調べ、それもノートしましょう。
【成績の評価】
・基準
知識の習得、理解の度合い、汎用的技能(論理的思考力)、参加の度合いのそれぞれの項目について評価し、その合計点を用いて判定します。判定の基準は、1)社会が抱える問題について具体的事例や現状を説明し、問題点を明確に指摘できる。2)公共政策の考え方を論理的に説明ができる。3)授業に積極的に参加し、教員や他の学生と意見交換を行い、自分の意見を客観的に評価できる。特にレスポンスカードでは知識の習得、理解の度合い、参加の度合いを評価します。
・方法
・期末試験(60点)。 ・毎回の講義で提出するレスポンスカードによる授業の理解度(40点) ・試験を受けるためには、レスポンスカードが全回数の三分の二以上提出されていなければなりません。
【テキスト・参考書】
テキストは特に指定しません。参考書は担当者ごとに提示します。
【その他】
・オフィス・アワー
各担当教員のオフィス・アワーを参照してください。
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