【授業の目的】
本授業では、第2次世界大戦以後の戦争と虐殺をテーマとして取り上げ、大規模の政治的暴力がどのように記録・記憶されてきたかを、主に映画をテキストとして議論していきます。第二次世界大戦後いわゆる冷戦期も、紛争や虐殺が多くの地域で起こりました。現在も、終わりが見えない戦争から未曾有の難民問題を生じています。アジア太平洋戦争から現在の中東状況までの世界史理解を深めるとともに、歴史と記憶の関係について理論的な問いを討議していきます。また、小論文の書き方、特に「問い」の立て方の基礎を身につけます。
【授業の到達目標】
授業で取り上げられる戦争と虐殺を大きな歴史的文脈に位置づけ、その歴史的背景を簡潔に説明できるようになること。授業で取り上げられる映画を比較した上で、歴史と記憶について自分の理論的分析を口頭でも文章でも伝える力を身につけること。教室及びウェブクラスでの議論に積極的に参加し、討議に寄与できること。
【授業概要(キーワード)】
戦争、暴力、記憶、倫理、世界史、ドキュメンタリー、映画、
【科目の位置付け】
本授業は、(1)人間社会ではなぜ大量殺りくなどの暴力が終わらないのか、という問いを念頭に、健全な批判精神に裏打ちされた幅広い教養を習得すること、そして(2)読み手・聞き手に伝えるコミュニケーション力を高めるものです。
【授業計画】
・授業の方法
現代史から、①アジア太平洋戦争、②ベトナム戦争、③インドネシア9・30虐殺、④イラク戦争という4つの事件について、ドキュメンタリー映画を主なテキストとして使いながら学びます。上映前に講師が各映画についての歴史的背景を説明し、上映後に履修生との質疑応答及び討議を行います。履修生からは、各映画について考察の提出と、ウェブクラスでの討論への参加が求められます。映画によっては小グループに分かれての討論の時間も設けられます。
・日程
第1回 イントロダクション (この日にシラバス完全版が配られます。) 第2回 講義:戦争の過去、戦争の現在 第3回 講義:アジア・太平洋戦争 第4回 映画①『ゆきゆきて、神軍』について 第5回 講義:インドネシア9.30虐殺 第6回 映画②『ルック・オブ・サイレンス』について 第7回 講義:ベトナム戦争 第8回 映画③『映像の世紀 ベトナム戦争』について 「考察」提出 第9回 講義(小論文の書き方)と小グループ討論(「考察」をもとに) 「小論文A」(①②③)について)提出 第10回 「小論文A」をもとに討論 第11回 講義:イラク戦争 第12回 映画④『祖国—イラク零年』について 第13回 ゲスト講師 「小論文B」(④について)提出 第13回 「小論文B」をもとに討論 第14回 講義:記憶と忘却 第15回 総括
【学習の方法】
・受講のあり方
この授業はグループワーク・プレゼンテーションなど学生が主体的に参加する学習活動を含みます。(活動内容は授業により異なります。)
・授業時間外学習へのアドバイス
4本の映画を上映します。このうち3本の映画はDVDが図書館に入っているので、図書館で視聴が可能です。個人でもグループでもDVD鑑賞をすることが可能です。積極的に活用してください。4本目の映画は、山形国際ドキュメンタリー映画祭ライブラリーとの特別上映になります。上映会以上では視聴できないので、上映会を決して見逃すことのないようにお願いします。
【成績の評価】
・基準
授業で取り扱われる4つの事件を現代史の大きな流れのなかに位置づけ、歴史的背景を説明できること。戦争の記録と記憶について理論的な分析を提示することができ、自分自身の分析を文章でも口頭でも伝えることができること。この3点を合格の基準とする。
・方法
①小論文(1500字)2枚 80%(各40%)②授業・ウェブクラス参加 20%
【テキスト・参考書】
テキスト 『ゆきゆきて、神軍』(日本、122分)『ルック・オブ・サイレンス』(インドネシア、103分) 『ハーツ・アンド・マインズ』(米国・ベトナム)112分『祖国--イラク零年』(334分)
【その他】
・学生へのメッセージ
本授業で扱われる主題はとても深刻で重いものです。読書課題はあまり多くありませんが、映画を観て考えさせられたことについて自分なりに調査・分析し、口頭と文章で論じることが求められます。書いたものを他の履修生とシェアしてきますので、書く力が身につくはずです。ぜひ、他の履修生による「考察」を積極的に読んで、学生同士で活発に議論してください。
・オフィス・アワー
第一回目の授業でお伝えします。
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