歴史にみる共生(共生を考える)
 Moral Economy in Histories(Living with Diversity)
 担当教員:岩田 浩太郎(IWATA Koutarou)
 担当教員の所属:人文社会科学部人文社会科学科経済・マネジメントコース
 開講学年:1年,2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
 人々がお互いに助け合い共に生きていくことは「人間」の本源的な営みといえる。この営みを「共生」と呼ぶならば、災害や飢饉といった危機時に、しばしばこの「共生」の関係は破綻したり、あるいは強められたりした。人類が歴史のなかで培ってきた「共生」の営みに注目し、現代の観点から学ぶことを目的とする。
 本年度は、災害や飢饉といった危機時に、人間が生きていくために不可欠な食糧の確保や分配をめぐる事件や紛争が世界各地で起きた歴史に注目し取りあげる。とくに世界史における封建制から資本制への移行の時代には、世界の各地で米一揆や食糧蜂起などと呼ばれた運動が多発した。そこにあらわれた人々の思想や行動を検討し、さらに国家や地域社会は食糧危機にどのように対応したのかを考察しながら、上記のテーマに迫りたい。

【授業の到達目標】
 近年、世界や国内で格差社会化が進み「生存権」の重要性が問い直されている。
1)「生存権」概念が世界史のなかでどのように形成されたのかを、その前提となった伝統的な思想や運動をふまえて説明できる。【知識・理解】
2)私的所有や「営業の自由」といった近代的な制度や価値観が、しばしば伝統的な「共生」の手法や思想と対立したことを理解し、現代人を深く拘束している近代的な制度や価値観の性格、その意義と限界について議論できる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
 食糧、生存権、民衆運動、近代国家、所有、モラル・エコノミー、共同体、地域社会 

【科目の位置付け】
 現代を他者と共に生きるために必要となる多様なものの見方を自ら作り上げる力を養うために、自然と人間の共生、人と人の共生、社会と個人の関係性、事象の多元的解釈などを題材とする授業を行う。

【授業計画】
・授業の方法
 歴史資料にもとづき講義する形式を中心とする。適宜プリントを配布する。
・日程
 主な講義の内容項目は以下の通り(各項目を数回ずつ、計15回おこなう)。
1.歴史にみる「共生」という観点
2.ヨーロッパにおける食糧蜂起の歴史
3.アジアにおける食糧確保の諸相
4.江戸時代の食糧確保と民衆思想
5.大正期の米騒動と近代日本
6.現代に学ぶもの、現代から考える
7.まとめ(試験を含む)

【学習の方法】
・受講のあり方
 講義を集中して聴く態度を身につけ、関心をもった内容について文献を調べてまとめてみよう。学生自らが主体的に考えながら学習に取り組む。配布したプリントは繰り返し使用するので、毎回全部を持参する。板書以外の説明も適宜ノートをする。
・授業時間外学習へのアドバイス
「予習の仕方」
 前回までの講義ノートを読み、講義の流れを理解して授業に臨むようにする。世界史における生存権に関する取り組みに関する文献を見つけて読みまとめてみる。
「復習の仕方」講義ノートと配布プリントを読み直す。欠席した際にはプリントを取りに来る。関心をもったテーマの「参考文献」を読み進める。

【成績の評価】
・基準
 講義内容について基本的な説明ができることと、講義を通じて得られた知識をふまえて主体的に考察し、論述できることを合格の基準とします。
・方法
 平常点(参加度)20点
 中間レポート  30点
 期末試験    50点

【テキスト・参考書】
「テキスト」なし。
「参考文献」岩田浩太郎『近世都市騒擾の研究』(吉川弘文館、2004年)、柴田三千雄『近代世界と民衆運動』(岩波書店、1983年)、遅塚忠躬『ロベスピエールとドリヴィエ』(東京大学出版会、1986年)、近藤和彦『民のモラル』(山川出版社、1993年)、山根徹也『パンと民衆』(山川出版社、2003年)、紙谷信雄『米騒動の理論的研究』(柿丸舎、2004年)、中筋直哉『群衆の居場所』(新曜社、2005年)、堀地明『明清食糧騒擾研究』(汲古書院、2011年)。他に適宜講義で紹介する。

【その他】
・学生へのメッセージ
 歴史を学ぶことは現代や自分を相対化することである。
・オフィス・アワー
(前期)月曜の正午から14時まで  岩田研究室(人文社会科学部2号館3階)
(後期)月曜の11時から13時まで  〃
連絡先:iwata@human.kj.yamagata-u.ac.jp

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