【授業の目的】
―響きのいい言葉を鵜呑みにするな。響きのいい言葉ほど劇薬かもしれない― 共生という日本語は、1888年に生物学者の三好学が、symbiosisの訳語として最初に日本で用いたとされています。このように本来、共生という言葉は生物学用語だったのです(今でもそうですが)。共生という言葉は、様々な人間や多様ないきものが一緒に仲良く生きるイメージですが、生物の世界は食う―食われるの関係が基盤にあり、それを見て見ぬふりをするわけにはいきません。共生にしても互いに利益のある相利共生から一方にだけ利益のある片利共生、さらには片害共生まであります。さらに生物界の生き方として寄生がとてもポピュラーです。生物の生き方自体きれいごとに収まらない多様性を含んでいます。 生物の生き方の多様性を見ていきましょう。すると豊かな世界が垣間見れてきます。そして人間の社会について考えることにしましょう。どうして共生という語が現代のスローガンの一つになっているかを考えることによって、地球環境や移民・難民などの現代的な課題が見えてくるはずです。
【授業の到達目標】
共生について生物学の基礎的な知識が身に付き、それを説明することができるようになります。共生を理解し、それについて自分の考えを語ることができるようになります。科学的思考力と批判的精神・能力が向上します。自己と世界について広く深く考える基盤が形成されます。
【授業概要(キーワード)】
共生、生物界、生物の多様性、寄生、適応、進化、自然選択説、種間関係、個体関係、自国第一主義、トランプ、学生主体型授業
【科目の位置付け】
基幹科目 人間を考える・共生を考える領域 共生を考える
【授業計画】
・授業の方法
共生という言葉の心地よさについて考えましょう。それから、ビデオと教科書を使って生物界の共生について基本的な知識を身に付けましょう。次に、みなさんがグループで調べ考え発表し、討議する授業になります。最後に、共生と社会について全員で考えを深めていくことにしましょう。
・日程
(1)オリエンテーション 共生というスローガンの現代的意義と課題(講義) (2)生物界の種間関係―1 生物の共生を見る(ビデオと講義) (3)生物界の種間関係―2 共生以外の生物界の種間関係(講義) (4)生物界の個体関係 性がもたらしたもの(講義) (5)細胞内共生説 共生の一つの究極の姿:自己同一性の喪失(講義) (6)進化論 進化の結果としての生き方の多様性(講義) (7)生物の共生と種間関係の探求 共生の多様性(グループ発表と全体討論-1) (8)生物の共生と種間関係の探求 共生の多様性(グループ発表と全体討論-2) (9)生物の共生と種間関係の探求 共生の多様性(グループ発表と全体討論-3) (10)生物の共生と種間関係の探求 共生の多様性(グループ発表と全体討論-4) (11)人間社会の共生 国家・民族・個人間の共生:課題と理想(講義) (12)人間社会の共生 課題と理想(グループ発表と全体討論-1) (13)人間社会の共生 課題と理想(グループ発表と全体討論-2) (14)人間社会の共生 課題と理想(グループ発表と全体討論-3) (15)終わりの始まり 未来に向けて共生を考える(個人発表)
【学習の方法】
・受講のあり方
1)講義中は真剣に私の話を聞いて下さい。 2)予習復習にテキストをよく読んでください。 3)深く考えるように努力してください。 4)遠慮会釈のない議論をしてください。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)この授業はグループワーク・プレゼンテーションなど学生が主体的に参加する学習活動を含みます。 2)予習復習にテキストをよく読んでください。 3)図書館・インターネットを積極的に活用してください。 4)いろいろな本を読んでください。 5)議論したことを自分のものにしてください。
【成績の評価】
・基準
1)共生について生物学の知識の習得度を評価します。 2)共生について自分の考えが発表できることを評価します。 3)科学的思考力と批判的精神・能力を身に付けたことを評価します。 4)自己と世界について広く深く考える基盤が形成されたことを評価します。
・方法
発表:30%、レポート:30%、試験:30%、質疑応答:10%
【テキスト・参考書】
『新訂 生物学と生命観』小田隆治著(培風館)
【その他】
・学生へのメッセージ
◆常識にとらわれたくない人、集まってください。 ◆高校の知識は特別必要ありません。知識がある人は有効に活用してください。
・オフィス・アワー
毎週月曜日11〜13時(地域教育文化学部2号館5階小田研究室)
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