社会経済学入門(経済学)
 Introduction to Political Economy (Economics)
 担当教員:久保 誠二郎(KUBO Seijiro)
 担当教員の所属:人文社会科学部非常勤講師
 開講学年:1年,2年,3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
私たちの住む社会を指して資本主義社会と呼びます。では、その「資本」とは何でしょうか?実はこの「資本」の運動と、私たちが働き社会生活を送ることとは密接に結び付いています。現代の様々な社会問題―いわゆるグローバル化、地球環境問題、貧富の差やブラック企業や過労死など―に、この「資本」の運動が深く関与しています。経済社会を捉えるためには「資本」への理解が不可欠なわけです。この授業では「資本とは何か」をテーマとし、初学者向けにK.マルクスの『資本論』に基づく経済学説(マルクス経済学)を講義します。経済社会という捉えどころのないように思えるものを掴み取る―それに必要なものは経済学的な物の見方です―ために、マルクス経済学の基礎概念を、現実の歴史や事象に目を配りながら理解することを授業の目的とします。

【授業の到達目標】
この授業を履修した学生は
1)商品、貨幣、価値、資本、労働力、剰余価値といったマルクス経済学の基礎概念を理解し、説明できる。【知識、理解】
2)現代の経済社会の諸課題に関心をもち、その背景を推論できる。【知識・理解】

【授業概要(キーワード)】
市場、自由、資本主義的生産、搾取、生産力、階級、富裕と貧困

【科目の位置付け】
この授業では、労働価値説に基づく経済学説が取り上げられ、経済社会に関する常識的な認識が批判的に吟味されます。健全な批判精神に裏打ちされた幅広い知識の習得に資するものと考えます。

【授業計画】
・授業の方法
配布資料をもとに講義を進めます。毎回の授業を学生との質疑を交えながら行います。
・日程
第1回 マルクス経済学の視座 社会の歴史と経済学
第2回 商品、価値と労働
第3回 貨幣の生成
第4回 市場と社会的分業
第5回 資本の生成と労働力の「商品化」
第6回 資本による剰余価値の生産
第7回 過労死と長時間労働
第8回 資本による生産力の高度化と剰余価値生産
第9回 機械制大工業の成立と労働の変容

第10回 資本による搾取と文明化作用/実質賃金の上昇可能性
第11回 市場とその深部―個人の自立・自由と従属―
第12回 資本と労働者の「再生産」―階級の定在―
第13回 資本の巨大化と資本構成の変化
第14回 就業と失業の基礎構造
第15回 まとめ 試験

【学習の方法】
・受講のあり方
1)空欄のあるレジュメ(概要資料)を配布します。授業で解説するので、空欄を埋めてレジュメを完成させてください。板書をレジュメやノートに筆写して理解に努めることも必要です。
2)授業中の質問には、間違っても構わないので自分なりに考えて答えてください(「わかりません」は不可とします)。
3)不定期で課題(宿題)を出し、授業で回答してもらいます。
4)わからない点があれば放置せず、授業後に必ず講師に質問してください(気軽にどうぞ)。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)適宜、授業の復習をし、参考書の該当箇所を読んでおくとよいです。
2)授業で扱った理論や社会問題について自分にも関係する問題として考えてみてください。関心を持った点について、インターネットを活用しながらも、ある程度まとまった本を読むことを勧めます。本についてはアドバイスできることもありますので、相談しに来てください。

【成績の評価】
・基準
授業で示したマルクス経済学の基礎的な概念・用語を理解し、適切に説明できることを合格の基準とします。
・方法
筆記試験90点、平常点(課題(宿題)、授業中の発言)10点の計100点

【テキスト・参考書】
参考書:『政治経済学の再生』柴田信也編、2011年、創風社。
『経済原論 資本主義経済の構造と動態』富塚良三、2007年、有斐閣。
『『学説史』から始める経済学』大村泉ほか編、2009年、八朔社。

【その他】
・学生へのメッセージ
社会科学には異なる観点からの社会認識(経済学説)があります。マルクス経済学は現代では少数派の学説ですが、異彩を放っています。この学説は、いわば資本主義社会の光と闇を探求します。社会への関心をもつ学生の参加を期待します。

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