授業実践の記録・分析と校内研修
 Recording and Analysis of Classes in the Lesson Study Reflection
 担当教員:江間 史明(EMA Fumiaki)
 担当教員の所属:大学院教育実践研究科
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
授業記録は、あるがままの授業の事実をそのまま写し取るものではなく、記録者が自らの問題意識によって発見し、切り出して構成するものである。この意味で、授業を記録し分析する力量は、授業を見る力量と支え合う関係にある。本授業は、ストップモーション方式の授業分析法を中心に学ぶ。授業から記録を作成・分析する演習を行うことで、授業分析法を活用できるようにする。

【授業の到達目標】
1 授業ビデオを活用したストップモーション方式の授業記録を作成できる。
2 授業記録作成の実践的意義を理解できる。
3 校内研修に授業ビデオを活用する諸方法を理解し、その活用をリードできる。

【授業概要(キーワード)】
授業分析、教室談話、ストップモーション方式、授業リフレクション、校内研修

【科目の位置付け】
共通科目 教科等の実践的指導方法 必修

【授業計画】
・授業の方法
〇まず、授業研究の理論と歴史について概観する。
〇実際の授業分析にあたっては、ストップモーション方式の授業分析法を中心とする。これは、言語情報だけでなく、非言語情報や状況の描写をも記述し、記録の途中に適宜、記録者の分析コメントを挿入するものである。実際の授業を受講生全員で参観し、ビデオに記録する。授業者をまじえたビデオを用いた検討会のあと、その授業の記録作成分析演習を行う。
〇連携協力校の授業研究会に参加し、校内研修における授業ビデオの活用と記録作成分析について学ぶ。
〇最終レポートを作成、受講生全員で読み合うことで、各自の洞察をより深める機会とする。
・日程
第1回: オリエンテーション/講義のねらい及び進め方/導入8分間の記録と分析
第2回: 授業分析の理論研究/稲垣忠彦、佐藤学『授業研究入門』(岩波書店)を使い、「授業の三つの側面」と「出来事」概念を学ぶ。
第3回: 授業分析の理論研究/同上書を使い、「反省的実践」概念を学ぶ。
第4回: 授業参観とビデオ記録/授業を附属学校で参観し、ビデオに記録する。
第5回: 授業検討会/第4回で記録した授業をビデオで再生しながら、授業者をまじえてストップモーション方式の検討会を行う。
第6回: 次期学習指導要領の検討/『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』(図書文化)第1章と第2章を検討する。
第7回: 附属中学校の公開研究会に参加し、授業の記録と分析、事後研究会での授業検討を行う。
第8回: 記録作成分析演習/各自が授業記録の作成と分析を行う。ビデオを再生しながら、各自の記録 と分析を受講生全員で検討していく。記録者は、検討をふまえて、自分の記録と分析を次回までに書き直してくる。授業の前半について。
第9回: 記録作成分析演習/検討を続ける。授業の後半について。
第10回: 附属小学校の公開研究会に参加し、授業の記録と分析、事後研究会での授業検討を行う。
第11回: 附属公開研の1エピソード・レポートを作成・検討する。教職専門実習Ⅰ(前半)での授業実習を素材に記録と分析を行う。
第12回: 教職専門実習Ⅰ(後半)での授業実習を素材に記録と分析を行う。
第13回: 次期学習指導要領の検討/『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』第3~7章を検討する。
第14回: 授業分析と学校経営の理論研究/中原淳、金井壽宏『リフレクティブ・マネジャー』(光文社新書)を使い、実践とその省察を学ぶ。
第15回: 授業記録作成分析の「ふり返り」/最終レポートをまとめ、各自のレポートを読み合い、検討する。

【学習の方法】
・受講のあり方
個人ないしチームでの事前準備の作業に積極的に取り組んでほしい。個人情報の扱いについては、十分留意すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
次回までの文献ないし作業の課題に取り組むこと。一つの事例で学んだことを、これまでの自分の実践経験と結びつけて考察すること。関連づけられる事例を多くすることが、考察を深めることになる。

【成績の評価】
・基準
C(合格に必要な最低限度)基準:
学部卒院生:授業の事実をもとに、教師と学習者の思考をたどる詳細な授業記録を書ける。
現職院生:授業の事実をもとに、教師と学習者の思考を解釈し意味づけた授業記録を書ける。
・方法
次の項目について、作成した授業記録及び最終レポート(ふり返り)等を中心に、担当教員が評価する。
・ 授業分析方法の理論的特質についての理解/・ コンピテンシー・ベイスのカリキュラム・デザインの特質と課題についての理解/・ 作成した授業記録と分析、コメントの内容水準/・ 附属学校公開研で参観した授業での1エピソードとその考察/・ 教職専門実習Ⅰの授業記録の検討および授業研究会に参加した際の議論の妥当性と積極性/・ 最終レポート(ふり返り)における気づきと考察

【テキスト・参考書】
稲垣忠彦・佐藤学『授業研究入門』岩波書店、1996年
中原淳、金井壽宏『リフレクティブ・マネジャー』光文社新書、2009年
奈須正裕、江間史明編著『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』図書文化、2015年

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