樹木個体生理学特論
 Whole-Plant Physiological Ecology
 担当教員:森 茂太(MORI Shigeta)
 担当教員の所属:農学部食料生命環境学科森林科学コース
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
動植物など様々な分野に共通するメタボリックエコロジーの視点から森林生態の理解を深める。現在、個体を単位としたメタボリックエコロジーの手法、視点を用いて幅広い生物学分野全体の再構築が進んでいます。

【授業の到達目標】
個体を単位に森林生態系を理解する。個体を単位とした生物学的理解の重要性を実感する。もっとも大切な目標は研究の面白さ、深さを実感し、就職後のよりよい仕事につなげる。授業の最大の目標は「遊び心」を身につけることです。イノベーションは遊び心から生まれます。

【授業概要(キーワード)】
樹木は、実生から巨木まで生物界最大幅の10の12乗倍で成長する。一方、環境から受けるストレスも個体サイズに応じて劇的に変化する。つまり、環境適応、防衛能は成長ステージで変化し、これがストレスを突破して樹木が長寿命で巨大化する原動力である。これはエネルギーと物質のメタボリックな変換プロセスとして統一的に理解できる。本講では、このプロセスを個体生理学の視点から眺めることで、多様性を持つ森林生態系の持続性を理解したい。

【科目の位置付け】
ミクロとマクロスケールの中間にある個体生理学の重要性を理解する。

【授業計画】
・授業の方法
講義だけではなく、樹木個体生理学の視点で大学構内の樹木を観察して、講義内容を身近に実感してもらいます。さらに議論もおこないたいと思います。また、トップジャーナルに掲載された最新研究成果や新聞記事も紹介して、現代の私たちの研究の問題点にも触れる予定です。
・日程
(下記のトピックから、皆さんの専門に応じてピックアップする予定です。)
1)個体生理学の重要性
2)時間空間的な不均一環境の重要性
3)ミクロからマクロにスケールアップする意義、
4)個体群、群集
5)個体光合成、呼吸の測定方法
6)メタボリックエコロジーの重要性
7)研究をめぐる論争
8)OAジャーナルの光と陰 新たな潮流 気軽に論文投稿しよう!!
9)研究へのバイアス ほとんどの研究が受けるバイアス
10)捏造論文の問題、最近の話題から・・
11)個体生理学から見た動物と植物の違い、
12)各自の課題の問題点を考えてみよう
13)Job hunt、就職進学のための個体生理学
14)まとめ、「最強の生物学は個体生理学か?」
15)討論 皆さんの研究を個体生理から考える

【学習の方法】
・受講のあり方
課題をだしますので自分自身で興味をもって調べてもらう予定です。知識の獲得ではなく、知識の運用と「自分で考える」ことを重視します。
・授業時間外学習へのアドバイス
各自がさまざまな「興味」を持ち、自分で工夫して身近な場所で考え、「感動」することが第一歩です。

【成績の評価】
・基準
自分自身の直感や意見を重視します。さらに自分自身で現在の森林育成の問題点をとらえることができるかを授業中の発言やテストなどで評価いた
します。
・方法
平常点やレポートなどで評価します。さらに、受講者のさまざまな事情を十分に考慮しますので遠慮なく申し出てください。

【テキスト・参考書】
(購入の必要はありません。)
「Metabolic Ecology」 海外の大学で広く使われている最新の教科書、担当教員の研究成果も紹介されています。
「生き物たちは3/4が好き」化学同人
「持続不可能性」文一総合出版

【その他】
・学生へのメッセージ
自由に考え、楽しく考えましょう。単なる知識の集積は重視しません。
賢くなるより、バカになることも大切であり、実は難しいことを知って欲しい。
・オフィス・アワー
いつでも気軽に研究室に「遊び」に来てください。一緒にコヒーをのみませんか?

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