生物環境学特別講義Ⅵ
 Integrated Management and Rural Engineering of Lake Hachiroko Basin(八郎湖の流域管理と水土環境工学)
 担当教員:近藤 正(KONDO Tadashi)
 担当教員の所属:農学部食料生命環境学科水土環境科学コース
 開講学年:1年,2年  開講学期:通年  単位数:1単位  開講形態:講義
 開講対象:農学研究科生物環境学専攻  科目区分:選択必修科目 
【授業の目的】
 地域振興計画が自然条件に矛盾なく適応する思想と方法を併せ持つならば過剰な環境負荷の無いという点で合理的な持続的システムと成り得たはずである。しかし地球環境や流域特性などの地域の気候・風土背景を排除する画一的な価値観や指標の下では、この優れた農村の機能は重視されずむしろ劣化する場合さえあり大きな社会問題も惹き起す。本授業では水土環境工学の手法と技術を用いた地域実態の把握と評価、さらには地域農業の中での資源環境管理の適正化に向けた検討ついて、2012年に東北積雪地域で初の指定湖沼となった秋田県の八郎潟干拓調整池(八郎湖)の富栄養化問題の実態解明と課題追究を中心的事例に、倫理的、技術的課題について深め、農村計画者(プランナー)としての意欲と資質の向上を計ることを目的とする。

【授業の到達目標】
 この授業を履修した学生は、
1)農村地域の実態について水土環境科学の観点から具体的に説明できる。【知識・理解】
2)資源環境管理の計画立案の基本的構成を作成できる。【技能】
3)環境に配慮した農村システムとその振興について積極的に討議できる。【態度・習慣】

【授業概要(キーワード)】
流域、水田、排水、灌漑、水資源、水管理、八郎潟、干拓地、低平地、水質保全、富栄養化、生物多様性向上、生態系サービス、多面的機能、環境負荷、物質循環、資源環境管理

【科目の位置付け】
「大地(農地と道路)」「水(水利)」「空気と緑とエネルギー(農村環境)」「人(社会)」の統合体を対象に、農山村の自然環境について様々な視点から理論的に考察することによって、技術者および研究者として相応しい健全な精神に裏付けられた幅広い社会知識と問題解決能力を習得することによって、社会への自発的な還元に即戦力として寄与するものである。

【授業計画】
・授業の方法
1)プリント資料を中心にスライドや映像資料なども併用する。
2)基本的な事項から平易に説明するとともに、毎回、授業の最後に授業の内容について質疑を行う。
3)簡易的なワーショップ型討論を中盤以降に設定し相互理解を図る。
・日程
〈水土環境工学(農業農村工学)の果たした役割と技術〉
第1回 1. はじめに(ガイダンス)―生物環境学特別講義Ⅵ(八郎湖の流域管理と水土環境工学)の役割と目標― 2. 地域排水の意義と技術史 (水田排水計画と地区排水)
第2回 1. 流域水文解析の技術と排水管理 (地域排水の必要と管理) 2. 干拓地の設計・施工および水資源管理 (農地開発と灌漑排水計画)

〈八郎潟干拓と水土環境工学(農業農村工学)による実態解明〉
第3回 1. 八郎潟干拓地農業の歴史と八郎湖の水質変動
第4回 1. 八郎潟干拓地の水田農業と水質汚濁・富栄養化問題 2. 水文・水質解析と汚濁負荷動態の定量的評価
第5回 八郎湖の富栄養化の課題整理からみた理想と現状との乖離実態

〈八郎潟干拓と水土環境工学(農業農村工学)を用いた資源管理と持続性の展望〉
第6回目 ワークショップ 農村開発と生産の経済指標:農業農村の公益的機能、外部経済と外部不経済:Nフットプリント、“実態”の評価方法と真理の追究
第7回目 八郎湖の富栄養化の課題整理からみた理想への方向性と技術的課題

〈水土環境工学(農業農村工学)の技術的位置づけと課題、持続システムへの展望〉
第8回目 八郎湖の富栄養化の克服と提案:生物多様性向上の意義と必要性
第9回目 流域管理の展望と課題:水土環境科学の対象とスケールそして役割
第10回目 『持続可能な発展の保証』としての『水土環境工学の役割』-再考-

【学習の方法】
・受講のあり方
1)授業内容をノートなどに筆記して内容の理解に努める。
2)プリント資料の重要部分に線を引くなどして活用する。
3)不明な点や疑問点は積極的に質問する。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)参考書や次回のプリント資料を通読すること。
2)新しい概念や技術用語が紹介される可能性があるが主体的に確認し理解を図る。
3)多くの社会事例や現代的課題についても積極的に考究する姿勢をもち、次世代のリーダーとしての資質を高める。
4)情報を収集、整理しながら復習し自分の考えをまとめておく。

【成績の評価】
・基準
 合格の基準:授業終了時に、以下の三つの事項が達成されることとします。
1)農村地域の実態について、水土環境科学の本質的な観点から適切に述べることができる。
2)計画立案事例の問題点や改善方法について、悪しき前例に捉われず主体的に考え準備し科学的根拠を持って提案できる。
3)計画理論の視点から環境に配慮した農村計画について討議することができる。
・方法
 授業内容について小テスト等を数回行うとともにレポート課題を課して期限までに提出いただき総合的に成績を評価します。なお授業出席回数が大学基準(「1/3を超える欠席」は不可)を満たす者についてのみ成績評価の対象とします。

【テキスト・参考書】
テキスト:担当教員が作成したプリントを配付します。
参考書:「農業農村工学ハンドブック」((社)農業農村工学会)、田渕俊雄著「湖の水質保全を考える」(技報堂出版)

【その他】
・学生へのメッセージ
1)理系・文系の学生とも理解できる授業内容です。
2)経験しないということはいつまでも知識にならないことにもなります。積極的な受講を歓迎します。
3)これからの皆さんの人生の中でプライオリティを考えるきっかけの一つにしていただけたら幸いです。
・オフィス・アワー
授業実施日 12:00-13:00,17:00-18:00(講師控室)・連絡先は授業で連絡します。

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