【授業の目的】
学校教育における心理的支援を充実する観点から、心理教育的援助サービスの枠組みにおいて、特に一次的・二次的援助サービスの適正化を中心に進める。つまり、いじめ・不登校などの問題行動を、学級ないしは学校というコミュニティにおける関係性障害と捉え、教師-子ども間のシステム変革をめざす。具体的には、学校で教師が行う日常的なかかわりのあり方を検討し、子どもも教師もストレスフルである現状からの新たな方向性、すなわち、予防的・開発的アプローチを提示する。実際に、校内だけでなく、地域の保護者-子ども間のシステム変革をも同時進行で進めたアクションリサーチ例も提示する。講義が中心であるが、適宜演習やグループ討議を取り入れ、理解を深めるように配慮する。
【授業の到達目標】
学校教育における地域の心理的支援を充実する観点から、学校心理学の概念とアプローチを理解し、特に一次的・二次的援助サービスを活性化・適正化するためのカウンセリング理論と方法を学び、それを学校現場で活用する方向性をもつことができるようになる。
【授業概要(キーワード)】
学校ストレス、不登校などの不適応行動、学校心理学における一次的・二次的援助サービスの適正化、アドラー心理学/親学習プログラムSTEP、学校における実践例
【科目の位置付け】
臨床心理学専攻選択科目(B群)
【授業計画】
・授業の方法
講義を中心として進めるが、適宜演習やディスカッションを入れるかたちで行う。部分的に、事前学習を求める。
・日程
第1回 ライフ・サイエンスにおけるストレス概念について講義し、討論を行う。 第2回 ストレス緩和効果をもつ心理的・社会的要因について講義し、討論を行う。 第3回 学校におけるストレスについて、子どものストレスおよび教師のストレスについて講義し、討論を行う。 第4回 前回までのまとめを行い、問題の明確化を図る一方で、管理意識尺度を実施し、自分の管理意識の程度を知る機会とする。 第5回 問題解決へ向けての一つの方向性として、学校心理学における心理教育的援助サービスについて講義し、討論を行う。 第6回 オールビィの予防等式を示し、そこに含まれる諸要因と学校での活動との関連について、討論を通して検討する。 第7回 アドラー心理学の基本的な概念とそれを支える具体的なアプローチを、多くの事例を通して講義し、討論を行う。 第8回 アドラー心理学の概念およびアプローチと一次的・二次的援助サービスとの関連について、討論を通して検討する。 第9回 アドラー心理学を中心とした子ども観や教育観の変容に関する事例を紹介し、討論を通して検討する。 第10回 個人の変容に関する理解の方法としてのPAC分析について、さらなる理解を深め、質的心理学研究へのアプローチについて検討する。 第11回 学校/学級事例の理解としてのQ-Uアンケートについて講義と演習を行う。 第12回 特定の学校でのQ-Uアンケート結果に基づき、実際の学級の変容事例にいくつか理解する。 第13回 特定の学校での学力テスト結果・学級機能尺度結果などを提示し、一次的・二次的アプローチの総合的な結果について、学力とゆとり教育との関連性の観点から検討する。 第14回 学校での一次的・二次的援助サービスの活性化に向けて、スクールカウンセラーとしてできることについて、討論を通して検討する。 第15回 最終レポート課題を提示し、全体的な質疑と討論を行う。
【学習の方法】
・受講のあり方
配布資料を中心に進めるので、必要に応じて専門用語の予習などの上で討議に積極的に参加できるように臨んでほしい。
・授業時間外学習へのアドバイス
予習としては、配布された教材プリントで、専門用語などわからないものについては、ある程度事前に調べておくこと。 復習としては、それぞれの箇所で自分が考えたことや感じたことなど、こまめに付箋紙などを活用してメモを残しておくこと。
【成績の評価】
・基準
・全授業数の2/3以上の出席であること。
・方法
・授業の到達目標の観点からの各自の自己評価を参考に、討論への参加の程度(20点)を加味しつつ、レポート(80点)を中心とした総合的評価を行う。
【テキスト・参考書】
各時間に必要な資料は,配布または準備を指示する。 [参考書]『学校心理学』(石隈利紀著)誠信書房,1999年 『ストレスと情動の心理学』(本明寛監訳)実務教育出版,2004年 『アドラー心理学への招待』(岡野守也訳)金子書房,2004年 『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)KKベストセラーズ,1999年 『嫌われる勇気』(岸見一郎)ダイヤモンド社,2013年 『データが語る①学校の課題』『同②子どもの実態』『同③家庭・地域の課題』(河村茂雄著)図書文化社,2007年 『コミュニティ心理学入門』(植村勝彦編)ナカニシヤ出版,2007年 その他,必要に応じて紹介する。
【その他】
・オフィス・アワー
月曜日と火曜日の昼休みなど(事前にご連絡いただけると助かります。ep266@kdeve.kj.yamagata-u.ac.jp)
|