物理化学Ⅱ(高分子・有機材料)
 Polymer Physical Chemistry II
 担当教員:滝本 淳一 (TAKIMOTO Jun-ichi)
 担当教員の所属:大学院有機材料システム研究科
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:高分子・有機材料工学科  科目区分:専門科目・選択必修 
【授業の目的】
原子・分子や固体中の電子の運動は古典力学では説明出来ず、量子論を用いて初めて理解される。高分子を含めたあらゆる物質・材料の性質を理解し、制御していくためには、量子論は必要不可欠な基礎理論である。本講義では量子論の基礎を理解し、原子・分子構造などへ応用出来るようになることを目指す。具体的には、
(1) 量子論の最も基本的な原理として粒子・波動の二重性を理解する。
(2) 原子中の電子の波動関数のエネルギーと形状を知り、パウリ原理と合わせて原子の周期律が説明されることを理解する。
(3) 原子間の結合により分子が出来る理由を、電子の波動関数のレベルから理解する。
(4) 分子間の相互作用や固体の性質を量子論的に理解する。
(5) 電磁波は粒子(フォトン)としての性質も持つことを理解し、フォトンを用いて原子・分子や固体の性質を調べる種々の分光学的手法の原理を理解する。

【授業の到達目標】
(1) 電子は波動方程式に従う波としての性質を持ち、原子の中などに空間的に拘束された状況では飛び飛びのエネルギーだけが可能になることを、簡単な例題を用いて説明出来る。
(2) 原子中の電子の状態を指定する量子数と、対応する波動関数の形状を理解し、パウリ原理を用いて原子の周期律を説明出来る。
(3) 原子価結合法と分子軌道法を用いて化学結合について説明出来る。特に、前者に関しては共鳴、後者に関しては混成の概念を説明出来る。さらに、原子価結合法・分子軌道法の類似点と違いについても理解し、適切な使い分けが出来るようになる。
(4) 分子間相互作用の種類と、それぞれの強さ・分子間距離に対する依存性を説明できる。また、固体の結合の種類を分類し、それぞれの種類の固体の性質(力学的、電気的等)を説明出来る。
(5) フォトンの振動数とエネルギーの関係、波長と振動数の関係を自由に応用出来る。分子の振動・回転や物質中の電子状態をフォトンを使って調べる手法の原理を理解し、簡単なスペクトルの解析が出来る。

【授業概要(キーワード)】
量子論、原子、分子、結合、分子間相互作用、分光

【科目の位置付け】
分子・物質の構造や物性を理解・予測する

【授業計画】
・授業の方法
講義で使用するプレゼン資料はWebで配付するが、必ず教科書も熟読すること。
・日程
第1回:古典力学の復習 第2回:量子論(1)
第3回:量子論(2) 第4回:原子構造(1)
第5回:原子構造(2) 第6回:化学結合(1)
第7回:化学結合(2) 第8回:固体の構造(1)
第9回:固体の構造(2) 第10回:分子間相互作用(1)
第11回:分子間相互作用(2) 第12回:振動・回転分光
第13回:電子遷移 第14回:統計力学
第15回:全体のまとめと定期試験

【学習の方法】
・受講のあり方
公式を記憶するのではなく、意味(何と何の間の関係か、どのように使えるのか)を理解するように務める。プレゼン資料に頼るのではなく、復習もかねて要点を整理したノートを作ること。
・授業時間外学習へのアドバイス
事前に教科書に目を通して疑問点を確認しておく。
高分子物理化学演習IIを履修し、演習問題を確実に理解すること。疑問点は残さず質問すること。

【成績の評価】
・基準
(1)粒子・波動の二重性を理解し、電子・光子のエネルギー・運動量・波長を計算できる。
(2)原子オービタルを理解し、原子の電子配置が書ける。
(3)原子価結合法と分子軌道法により化学結合を説明出来る。
(4)X線回折(ブラッグの法則、ミラー指数)を理解している。
(5)イオン・極性分子・無極性分子間の相互作用の距離依存性と強さを理解している。
(6)各種の分光測定の波長・エネルギー域を理解し、それぞれ何が測定出来るか説明出来る。
・方法
定期試験による。

【テキスト・参考書】
アトキンス物理化学要論、P. A. Atkins, J. de Paula著、千葉秀昭、稲葉章訳、東京科学同人
アトキンス物理化学(上)(下)、P. A. Atkins著、千葉秀昭、中村宣男訳、東京科学同人

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