自然界は、原子や分子などのミクロな粒子の集合体としての物質系からなっている。自然界を的確に把握するには、物質系を巨視的にとらえる「化学熱力学」とともに、微視的にとらえる量子化学の修得が必要不可欠である。量子化学は、物質系の構造や性質、あるいは反応性の理解に決定的な示唆を与えるとともに、現代の自然観を形成する上で欠くことの出来ない基本的な要素のひとつとなっている。本講義では、量子化学の基本概念の理解と基礎理論の修得に重点を置いて解説する。
高校までの化学と違い、大学の化学では原子や分子をエネルギーという物差しで測り、理解する。さらに、エネルギーは量子論的取り扱いを通して原子や分子の形を表す。本講義では、簡単な力学系を利用し、古典論との対比の中で、非直感的な量子論の理解を促す。さらに、複雑な系への量子論の適用法、そこから得られる原子や分子の構造や性質、反応性について、定量的に議論する。

簡単な問題（系）を通して、量子論的考え方に慣れる。原子や分子を量子論的にとらえることにより、それらの軌道とエネルギーとの関係を理解する。

量子論、電磁波、シュレーディンガー方程式、波動関数、原子構造、分子軌道法、化学結合、結合エネルギー

物理化学Ｉ，ＩＩと合わせて、物理化学分野の基礎となる科目である。

90分の講義時間で講義をおこなう。

第1-3回：量子論とシュレディンガー方程式
第4-5回：箱の中の粒子モデル
第6-7回：原子構造
第8回：前半のまとめと復習
第9-11回：化学結合の基本
第12-14回：電子励起と分光学
第15回：後半のまとめと復習

講義を積み上げていく形式なので、一度欠席すると、以降の講義内容を理解することが困難となる。欠席しないように。

授業前に、講義内容を確認しておくこと。
例題、演習問題などを自分の力で解けるようにする。

出席が２/３以下の者は期末試験の受験資格を失う。
講義のねらいが理解できており、講義中に出題された例題などを一人で解答できるか否かが合格の判断基準となる。

教科書や口頭で示した内容、板書の内容に関する範囲から、筆記試験を行う。
・中間試験100点
・期末試験100点
合計点の60%以上を合格とする。

「アトキンス物理化学要論」P. Atkins, J. de Paila著 千原秀明、稲葉章訳 東京化学同人

分からないところは持ち越さないこと。
講義中の私語、飲食は禁止。

質問は、授業終了後にすぐ行うこと。