メカトロ制御
 Control engineering and mechatronics
 担当教員:水戸部 和久(MITOBE Kazuhisa)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)機械システム工学分野
 開講学年:2年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:システム創成工学科  科目区分:専門科目・選択 
【授業の目的】
制御工学では制御対象が目標通りに動作するようにシステムを改善する技術である.伝達関数による制御対象のモデル化からはじまり,ボード線図やナイキスト線図による特性解析,PID制御による設計法を総合的に学習する.

【授業の到達目標】
DCモーター,タンク系などの簡単な要素を伝達関数でモデル化でき,フィードバック制御系の特性解析と古典的な制御系設計ができることを目標にする.
(1)フィードバック制御の考え方をブロック線図を用いて説明でき,基本的な要素の伝達関数を求めることができる.
(2)ベクトル軌跡,ボード線図の見方がわかり,ラウス・フルヴィツの方法,ナイキストの方法により制御系の安定判別ができる.
(3)制御系設計の古典的手法(PID制御,根軌跡法,位相遅れ・位相進み補償)
の考え方を説明できる

【授業概要(キーワード)】
メカトロニクス,フィードバック制御,伝達関数,周波数応答,制御系設計

【科目の位置付け】
この科目はシステム創成工学科のカリキュラムの中で,専門分野の基礎力を習得するための科目である.

【授業計画】
・授業の方法
90分?15回の講義および基本的な例題に取り組みながら授業を進める.復習課題,予習課題の演習問題を宿題として課す.メカトロニクスで用いられる位置決め制御系および速度制御系などのフィードバック制御系を題材とし,制御工学の諸概念および手法を学習する.
・日程
第1週 フィードバック制御の基礎概念
(復習)フィードバック制御系の構成とブロック線図での表現についての演習課題
第2週 線形モデルを作る
(予習)教科書2章
(復習)関数の線形近似に関する演習課題
第3週 ラプラス変換と伝達関数
(予習)教科書P.27ラプラス変換,逆ラプラス変換を一読すること.
(復習)簡単な要素の伝達関数を求める演習課題
第4週 基本要素の伝達関数
(予習)伝達関数の例題プリント
(復習)伝達関数に慣れるための問題プリント
第5週 基本入力に対する応答
(予習)P.33【例3.1】【例3.2】
(復習)本入力に対する応答計算の演習課題
第6週 ブロック線図
(予習)P.36,P37を一読すること.
(復習)ブロック線図の等価変換の演習課題
第7週 周波数特性
(予習)P.41?P.43を一読すること.
(復習)ボード線図,ベクトル軌跡の作図演習課題
第8週 中間テストと解説
第9週 ラウス・フルビッツの方法によるシステムの安定判別法
(予習)P.51?P.53を一読すること.
(復習)安定判別に関する演習課題
第10週 ナイキストの安定判別法
(予習)P.59?P.61を一読すること.
(復習)ナイキストの安定判別に関する演習課題
第11週 ゲイン余裕と位相余裕
(予習)P.63を一読すること.
(復習)例5.13を演習課題とする.
第12週 フィードバック制御系の過渡特性
(予習)特性根とインディシャル応答の図6.4, 6.6 等を見ておく.
(復習)過渡特性に関する演習課題
第13週 フィードバック制御系の定常特性
(予習)P.74,75を応答の図を中心に見ておく.
(復習)0型,1型,2型系の定常偏差についての演習課題
第14週 制御系設計の古典的手法
(予習)第7章の図よりコントローラーの効果を確認する.
(復習)根軌跡法,位相進み・遅れ補償についての演習課題
第15週 期末テストと解説

【学習の方法】
・受講のあり方
授業に遅れないこと.計算式を追うだけでなく,物理現象についてイメージを持ちながら興味をもって聞いて欲しい.1時間程度で完了できる復習課題を配布する.また,30分程度でできる予習項目を本シラバスに示してあるので,毎回予習して授業に臨むこと.
・授業時間外学習へのアドバイス
制御理論は抽象的な説明がなされており,独学は困難である.授業において具体例を多く示し簡単な例題を課題とするので,繰り返し演習して理解を深めてほしい.

【成績の評価】
・基準
簡単な要素の伝達関数表現,ボード線図,ベクトル軌跡での表現ができ,古典的な制御系設計ができることが基準である.
(1)フィードバック制御の構成をブロック線図で説明できる.
(2)微分要素,積分要素,1次遅れ要素,2次遅れ要素の例を上げることができ,
伝達関数を求めることができる.
(3)微分要素,積分要素,1次遅れ要素,2次遅れ要素の
インパルス応答,ステップ応答,ランプ応答を求めることができる.
(4)ブロック線図の見方がわかり,簡単な等価変換ができる.
(5)微分要素,積分要素,1次遅れ要素のベクトル軌跡が作図できる.
(6)微分要素,積分要素,1次遅れ要素のボード線図が作図でき,
それらを組み合わせて高次系のボード線図を作図できる.
(7)特性根の位置からインディシャル応答のおよその形を推定できる.
(8)PID制御,根軌跡法,位相遅れ・位相進み補償の考え方を説明できる.
・方法
授業内容に対する到達度を,演習課題,中間テストと期末試験の点数で評価する.毎回提出する復習課題レポートの成績は10点満点,中間テストの成績は40点満点,期末試験の成績は50点満点とし,これらの合計(100点満点)が60点以上を合格とする.

【テキスト・参考書】
喜多村他:日本機械学会編,JSMEテキストシリーズ「制御工学」,丸善(2002):(約2,000円)


須田信英:制御工学,コロナ社,2,781円(1998),増淵正美,自動制御基礎理論,コロナ社,3,811(1997)

【その他】
・学生へのメッセージ
制御工学は機械系の制御だけでなく,電気回路,化学プラントなどを対象とする一般的な学問です.伝達関数,安定性などの概念が抽象的なので,機械系の学生にとってイメージしにくいかも知れません.このような分野を習得するためには,簡単な例題を繰り返し演習することが大切です.理解が深まれば,機械分野をはじめ自然現象や社会現象のなかに入力・出力のフィードバック関係,安定性,周波数特性で説明できるものが多くあることに気づきます.
・オフィス・アワー
金曜日 16:00~17:00

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