化学工学熱力学(物質)
 Chemical Engineering Thermodynamics
 担当教員:宍戸 昌広(SHISHIDO Masahiro)
 担当教員の所属:理工学研究科
 開講学年:3年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:物質化学工学科  科目区分:専門科目・選択必修 
【授業の目的】
化学工学熱力学は,熱力学を化学工業における様々なプロセスの解析や設計に使えるように体系化されたものである。講義内容は,主に相平衡と化学平衡である。化学工業におけるプロセスは反応プロセスと分離プロセスに大別される。分離プロセスにおいては,異相間の平衡関係を把握することが重要である。例えば,ある組成の液体を沸騰させた場合に発生する蒸気の組成はどうなるのか?反応プロセスでは,着目した反応がどこまで進むのか? 化学平衡時の組成はどうなっているのか?などの疑問に応えるための基礎的な知識を得ることにある。さらに,そうした知識を実際の化学工業プロセスの解析に応用するための手法を理解することを目的とする。

【授業の到達目標】
1)熱力学の基本概念を述べることが出来る,2)理想系と非理想系の違いを述べることが出来る,3) 物質の相図と物質の状態を関係づけることができる,4)流動の熱力学を開放系の熱力学に関連させて述べることが出来る,5)溶液の熱力学的性質を理解できる,6) 気液相平衡の概念と計算に必要な状態方程式に関する知識を習得できる,7)化学平衡の概念と平衡組成の計算ができる

【授業概要(キーワード)】
内部エネルギー,エンタルピー,エントロピー,ギブズ自由エネルギー,相平衡,状態方程式,化学平衡,非理想系,フガシティー,フガシティ係数,一般的熱力学線図,活量,活量係数式,化学ポテンシャル

【科目の位置付け】
この授業は,熱力学の知識を化学工業プロセスの解析に応用するための具体的な手法や発展的な知識を身に付けるためのものである。なお,本授業を受講する前に,物質化学 I を受講しておかねばならない。

【授業計画】
・授業の方法
基本的に板書中心の講義を行う。ときに宿題を課す。
・日程
熱力学の基礎(2年次に履修した「物理化学 I」)をベースとして,そこから非理想系の取り扱いについて説明する。主に以下の各項目を講義する。
1.イントロダクション - 化学工学熱力学とは~- と熱力学における基礎事項
2.熱力学第一法則 - エネルギー保存則 - と開放系における第一法則
3.熱力学第一法則の応用 - 熱化学 -
4.熱力学第二法則 - エントロピーの増大則 -
5.第一法則と第二法則の結合 - 平衡の基準と Gibbs エネルギー -
6.熱力学の基礎方程式 - 測定容易なデータから状態関数へのルート -
7.純物質の相平衡と平衡関係の定式化
8.純物質の p-V-T 関係と状態方程式
9.非理想性の導入 - フガシティーの定義と意味 -
10.混合物の熱力学の基礎 - 化学ポテンシャルと相平衡の基準 -
11.混合物の熱力学の基礎 - 部分モル量と混合状態量,化学ポテンシャルの統一的記述 -
12.混合物の相平衡 - 二成分系の気液平衡の相図と相平衡の計算 -
13.化学平衡と平衡定数および温度依存性 - 反応 Gibbs エネルギー -
14.化学平衡と平衡組成 - 様々な平衡定数 -
15.期末試験とそのまとめ

【学習の方法】
・受講のあり方
板書する講義内容をノートに筆記し,その内容の理解に努める。
・授業時間外学習へのアドバイス
1)講義ノートの内容を参考書などを参照して理解するようにする。
2)宿題として出された問題は必ず自力で理解して解答すること。
3)講義中に説明する例題は必ずもう一度自力で解いてみること。

【成績の評価】
・基準
化学プロセスにおける相平衡と化学平衡について基本的な概念や用語を正しく理解し,それを説明でき,さらに実際の計算問題が解けることを合格の基準にする。
・方法
期末試験100点満点で,60点以上を合格とする。加えて,何回か課す課題の提出も加点対象とする。

【テキスト・参考書】
小島和夫著 「かいせつ化学熱力学」,「化学技術者のための熱力学」培風館
アトキンス著 物理化学(上・下)(東京化学同人)/斎藤,小島,荒井共著「例解演習 化学工学熱力学」(日刊工業新聞社)/斎藤正三郎著「平衡物性推算の基礎」(培風館)/Y.A.Cengel, M.A.Boles 共著「図説 基礎熱力学」「図説 応用熱力学」(Ohmsha)/その他,タイトルに「熱力学」とある参考書全て

【その他】
・学生へのメッセージ
大学というところは自分で勉強するところです。自分が苦労したことだけが身に付きます。すべてにおいて能動的に行動してください。講義には技術者として必要だと考えられる内容を選定してあります。これが難しいと感じたら,理解できるように努力を払ってください。自分で選んだ進路です。卒業後の実りある人生のためのトレーニングです。
「物理化学 I」で学ぶ熱力学の基礎概念は出来るだけ理解しておくこと。高校物理における力学的エネルギー保存則を理解しておくこと。さらに,様々な物理量の単位を理解しておくこと。SI 単位を理解しておくこと。
・オフィス・アワー
学生が部屋に来てくれて,教員が在室して,急ぎの用事がないの三条件が揃ったすべての時間

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