【授業の目的】
本授業の目的は、教育を社会学的な観点から捉えることにある。それはつまり、「社会のなかで教育が、どのような役割・機能を持つのか?/持ちうるのか?/持ちえないのか?」を問い、理解するということである。 教育学は、しばしば「良い教育とは何か?」「良い教育はいかにして可能か?」と問う。教育学を目指す学生も、そうした問いに取り組むだろう。しかし本授業では、直接的に「良い教育」を目指すことはない。上記の問いに取り組むことを通して、「良い教育」を目指すために必要な前提を問い直す訓練を行う。 そのために、私たちの暮らす近代社会の原則を捉え直したうえで、関連する諸領域(特に、家族および労働)との関連性から教育を理解することを試みる。
【授業の到達目標】
1:近代社会における教育の役割を説明できる。(知識・理解) 2:近年の社会状況における教育の変化や課題を説明できる。(知識・理解) 3:身近な教育問題を、単なる教育事象としてではなく、関連領域を含むより広い社会事象のひとつとして、多角的に捉える重要性と面白さを感じることができる。(態度・習慣) 4:具体的な教育事象についての研究論文を適切に読み、分析することができる。(技能)
【授業概要(キーワード)】
社会、教育、家族、労働、学校、地域社会、リスク
【科目の位置付け】
教育職員免許状を取得するための「教職に関する科目」の一部である。
【授業計画】
・授業の方法
講義とグループディスカッションを組み合わせて進める。まず課題文献を読むための基本的な知識を講義形式で紹介した上で、課題文献を講読してもらう。次回授業で、作成してきた講読票をもとにグループで意見共有を行い、発展的な内容について講義する。
・日程
第Ⅰ部:近代社会の教育 第1回 イントロダクション――近代社会の成立 第2回 教育の機能 第3回 階層社会と教育――学歴社会 第4回 文化と学校教育――再生産 第Ⅱ部:教育と周辺領域の社会学 第5回 教育と労働(1)――日本的雇用と非正規労働 第6回 教育と労働(2)――トランジション 第7回 教育と家族(1)――近代家族と少子化 第8回 教育と家族(2)――幼児教育 第Ⅲ部:学校の社会学 第9回 教師 第10回 教室 第11回 いじめ・不登校 第12回 学校組織――チームとしての学校 第Ⅳ部:教育社会学の反省 第13回 格差社会の教育と福祉 第14回 教育社会学における教育批判 第15回 教育の領分
【学習の方法】
・受講のあり方
集中授業であり、体系的な予習は難しいだろう。現代日本社会についての常識的な理解を除き、受講にあたっての事前の専門的知識は必要ない。そのぶん、毎回の授業内容を積み重ねるかたちで授業を進めるため、授業への積極的な参加を望む。 授業内では対話やディスカッションを多く設けるので、自身の理解を確認しながら学習を進めること。
・授業時間外学習へのアドバイス
日本語の学術論文を課題文献として課し、ディスカッションに耐える精度での購読票の提出を求める。授業内容を踏まえた課題となるため、授業に集中して取り組むことが、授業時間外の学習の負担を減らすはずである。
【成績の評価】
・基準
下記の3つの評価方法のそれぞれについて、上記4点の到達目標に照らし評価する。すべてにおいて、自分なりの思いや考えだけでなく、授業内容を踏まえた論理的な論を展開できるかどうかが、重要な評価ポイントとなることに注意してほしい。
・方法
ディスカッションなど授業への貢献度:30% 講読票の提出:30% 学期末レポート:40%
【テキスト・参考書】
各回、レジュメを配布する。なお、課題文献は、各自に一部ずつ配付するためテキスト等の購入は不要。
【その他】
・学生へのメッセージ
教育社会学によって、わからなかったことがわかるようになる喜びだけでなく、わかっていたはずのことがわからなくなる楽しさも経験してほしいと思います。それを通し、より良い教員となることはもちろんですが、まずより良い市民になることを目指してください。
・オフィス・アワー
集中講義のため、授業の前後、休み時間がオフィス・アワーの代わりとなります。また、メールでの相談などは随時受け付けますので、気軽に連絡してください。
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