【授業の目的】
この授業は,熱・統計力学に関する演習問題にみずからとりくむ事で,講義で修得した熱力学に関する基本的な原理や法則の定着と,実際の問題に対する適用法の修得を目的とする.必要となる物理数学の演習も行う.
【授業の到達目標】
1. 講義で修得した熱・統計力学の基本法則を,演習問題に適用できる.【知識・理解】 2. 問題の解決に必要となる数学を説明でき,使用できる.【知識・理解】 3. 演習問題の解を,基本法則に沿って理解し,説明できる.【知識・理解】
【授業概要(キーワード)】
平衡状態の熱・統計力学,熱力学量,確率論,アンサンブル
【科目の位置付け】
この授業は,選択したコースの専門的知識を身につけ,その分野の先端的な研究内容を理解し,説明できる能力を身につけるための1科目である(理学部ディプロマ・ポリシー).選択したコース以外の幅広い理学の基礎的知識も身につける.
【授業計画】
・授業の方法
熱・統計力学の基礎をはじめに学び,以下に挙げた標準的なテーマについて実際に応用する.関連した項目について適宜レポート課題を出す.
・日程
1.数学的な準備 - 確率論の基本 2.数学的な準備 - 物理量のゆらぎと大数の法則 3.量子力学 - エネルギー固有状態と状態数 4.量子統計力学(基礎)- 熱力学と熱力学ポテンシャル 5.量子統計力学(基礎)- 平衡状態の特徴とミクロカノニカル・アンサンブル 6.量子統計力学(基礎)- カノニカル・アンサンブルの導出 7.量子統計力学(応用)- 理想気体と状態方程式 8.量子統計力学(応用)- 常磁性体 9.量子統計力学(応用)- 調和振動子の集団と比熱 10.古典統計力学(基礎)- 古典近似とエネルギー等分配則 11.量子・古典統計力学(応用)- 重力中の理想気体,高分子の弾性,二原子分子理想気体 12.量子・古典統計力学(応用)- 格子振動と結晶の比熱 13.量子統計力学(基礎)- グランドカノニカル・アンサンブルの導出 14.量子統計力学(応用) - 量子理想気体の基礎 15.期末テストとまとめ なお,各タイトルの補題は主要な内容を表したものです.
【学習の方法】
・受講のあり方
熱力学の知識と統計力学で新しく出てくる概念をしっかり整理・理解し,さまざまな具体系への応用を扱うなかで論理展開の方法を学びましょう.自分で手を動かして計算力を高めてください.受講者に予習内容を発表してもらいます.
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の範囲を各自予習し,最低限,教科書の式は自分で導出すること.レポート課題も課します.とりわけ統計力学はミクロの詳細とマクロの物性とを結びつけて理解できる点が強みです.単に熱力学量の解析的な式を導いて放り出すのでなく,例えばグラフにプロットしてみて,その特徴とミクロの状態がいかに対応付いているか考えてみてください.開講前に量子力学と熱力学を復習しておいてください.
【成績の評価】
・基準
1. 熱・統計力学に出てくる数学を自在に使える. 2. 様々な熱力学量の意味合いとアンサンブルを理解する. 3. 特にカノニカル・アンサンブルを使って,授業で扱う程度の基本的な問題を自分で解ける. これらができれば合格です.
・方法
発表点(10%),レポート点(40%),期末テスト(50%)の結果をもとに理解度を確認し,成績評価します.
【テキスト・参考書】
テキスト:田崎晴明 著,統計力学 I・II(培風館) 参考書:ライフ 著,統計熱物理学の基礎 上・中・下(吉岡書店),高橋康 著,統計力学入門 ― 愚問からのアプローチ(講談社),清水明 著,熱力学の基礎(東京大学出版会)
【その他】
・学生へのメッセージ
演習問題に対応する物理現象を数式とつきあわせてイメージするように心掛けましょう.予習を欠かさないこと.
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」は火曜日12時〜13時で,場所はC308号室です.
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