有機合成化学(高分子・有機材料)
 Organic Synthesis
 担当教員:片桐 洋史(KATAGIRI Hiroshi)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)物質化学工学分野
 開講学年:3年,4年  開講学期:後期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:高分子・有機材料工学科  科目区分:専門教育科目 
【授業の目的】
これまでに学んだ有機化学と高分子合成化学を基盤として、各反応における有機反応機構に対する理解を深め、自ら合理的な反応機構が書けるようになることを目的とする。また、有機化合物の効率的な合成経路を決定するための逆合成解析を身につけることを目的とする。

【授業の到達目標】
1)有機反応の種類を理解している。2)塩基性条件における極性反応について例をあげて説明することができる。3)酸性条件における極性反応について例をあげて説明することができる。4)ペリ環状反応について例をあげて説明することができる。5)ラジカル反応について例をあげて説明することができる。6)有機合成の実例をもとに逆合成経路を自ら設計することができる。

【授業概要(キーワード)】
置換反応、付加反応、脱離反応、転位反応、転移反応、求電子性、求核性、カルボカチオン、カルボアニオン、ペリ環状反応、ラジカル反応

【科目の位置付け】
この講義は、高分子・有機材料工学科教育目標の「高分子及び有機材料工学に関する分子レベルから材料レベルにわたる体系的知識と技能を身につける」に対応している。また、ディプロマポリシー「3.専門分野の知識と技能」に対応している。有機化学の基礎を基盤として、有機化合物と材料合成のための合成化学的知識を扱う。有機合成のスキルは、研究室における研究開発プロポーザルおよび卒業研究で必須のスキルである。

【授業計画】
・授業の方法
講義は基本的にパワーポイントならびに板書で行う。パワーポイント資料は配布しないが板書できる時間を確保するので内容はノートに記述する。
・日程
第1回:イントロダクション:曲がった矢印の考え方
第2回:有機反応の種類
第3回:塩基性条件における極性反応(1):C(SP3)—Xσ 結合における置換と脱離
第4回:塩基性条件における極性反応(2):求電子性π結合への求核種の付加
第5回:塩基性条件における極性反応(3):C(SP2)—Xσ 結合における置換
第6回:塩基性条件における極性反応(4):塩基で促進される転移反応
第7回:酸性条件における極性反応(1):カルボカチオン
第8回:酸性条件における極性反応(2):C(SP3)—Xにおける置換とβ脱離反応
第9回:酸性条件における極性反応(3):求核性C=Cπ結合への求電子付加
第10回:酸性条件における極性反応(4):求核性C=Cπ結合における置換
第11回:ペリ環状反応(1):電子環状反応、付加環化
第12回:ペリ環状反応(2):シグマトロピー転移、エン反応
第13回:ラジカル反応
第14回:逆合成:考え方と官能基変換
第15回:有機合成の実例

【学習の方法】
・受講のあり方
授業中は私語、飲食等で他の受講生の迷惑となる行為を行った場合は、受講を遠慮してもらいます。途中に教室を出たり入ったりする事も周りの迷惑になるので原則として禁止します。
・授業時間外学習へのアドバイス
講義前に有機化学Iの内容を復習しておくことが、とても大切です。

【成績の評価】
・基準
60点以上:置換反応、付加反応、脱離反応、転位反応について理解している。
70点以上:塩基性条件と酸性条件における極性反応について理解している。
80点以上:ペリ環状反応について理解している。ラジカル反応について理解している。
90点以上:自ら逆合成経路を設計できる。
・方法
小テスト(2回x30点=60点)と期末試験(40点)の計100点を満点とし、60点以上を合格とする。

【テキスト・参考書】
教科書:Robert B. Grossman、 奥山 格(訳)「有機反応機構の書き方 基礎から有機金属反応まで」丸善
参考書:C.L. ウィリス、M. ウィルス「有機合成の戦略―逆合成のノウハウ」化学同人
小倉克之、日本化学会 編,「有機人名反応」,朝倉書店
有機化学の教科書は良書が多く出版されており、図書館にも用意されています。ぜひ参考にしてみてください。また、丸善等で販売している分子模型を購入することをお勧めします。有機化学の理解がよりスムーズになります。

【その他】
・学生へのメッセージ
有機化学の魅力は、炭素とその周辺の限られた元素から膨大な化合物が形成される多様性にあります。その多様性から暗記の学問と思いがちですが、有機電子論を理解することで多くの化学反応を系統的に説明できるようになります。そして有機電子論の正当性と適用限界を正しく理解することで軌道概念の重要性を知ることができます。
・オフィス・アワー
火曜日午後5時~6時 工学部3号館 3-2101号室。これに限らず在室している時は随時対応します。確実に面談したい場合は事前に予約をお願いします。

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