品質管理
 An Introduction to Quality Control
 担当教員:仁科 辰夫(NISHINA Tatsuo)
 担当教員の所属:理工学研究科物質化学工学専攻
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:化学・バイオ工学科  科目区分:専門教育科目(総合)・選択必修、教職科目(工業) 
【授業の目的】
実社会では、ISO9000やISO14000などに代表されるように、商品製造ばかりでなく、サービスや環境にまで標準化が進み、品質管理の手法が適用されるようになって来ている。日本は、デミング博士の指導のもとに、統計的な手法による品質管理と標準化を推し進めて、現在の経済発展を遂げてきた。しかし、近年、中国を始め東南アジアの国々の商品生産・製造技術が格段にレベルアップし、世界経済市場に大きく進出している。その現状を踏まえ、21世紀の日本経済が、地球環境問題も含め質の高いレベルで発展することが期待されている。それを実現させるためには、品質管理思想・手法の活用が貢献できる筈である。
高校や専門で学んだ数学を基礎とし、工学部を卒業したものにふさわしいJISマーク省令第二条規定の品質管理責任者としての資格要件を満たす。すなわち工業標準化法のもと、統計的考え方、統計的工程管理、サンプリング、抜き取り検査、問題解決法、社内標準化などの技術を活用可能な能力を身につけ、工業生産の現場における判断力を培う。

【授業の到達目標】
品質管理とは、生産者も消費者もともに幸せになるWin-Winの関係を築く有効な方法論である。
1)JIS等の標準と連携し、独自の社内標準を数値で明快に定義できるようになる。
2)付加価値の意味を理解し、社会に必要な商品を提供できるようになる。
3)無駄をなくし、真に必要な工程を構築できるようになる。
4)PL法、HACCP、ISO9000、ISO14000等の各種規格を理解し、製品開発することができるようになる。
5)労働関連法規と安全衛生法を理解し、安全で誇りをもって働ける社内環境を構築できるようになる。
6)QC七つ道具を駆使し、合理的に真の問題点にたどり着くことができるようになる。
7)統計的な手法を使いこなし、平均とばらつきを正しく理解して規格外れや工程の変化を合理的に判断できるようになる。
8)QC検定3級の資格に合格できる知識を身につけ、工業標準化推進責任者としての責任と義務を遂行できるようになる。
9)品質管理を将来更に勉強し、仕事に有効活用する契機とすることができるようになり、さらにQC検定2級・1級の資格に合格するための意欲を身にけることができる。

【授業概要(キーワード)】
品質管理、サンプリング法、分析・測定法、統計的手法の基礎、管理図、実験計画法、相関・回帰分析、品質保証

【科目の位置付け】
この科目は化学・バイオ工学科の学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)1.豊かな人間性と社会性(1)社会的な意義や責任感を自覚し、倫理的に正しい判断をする能力を身につけている、に主に対応する。

【授業計画】
・授業の方法
品質管理講義の主要項目は次ぎの通り。
「品質管理とは」「サンプリング法」「分析・測定法」「統計的手法の基礎」「管理図」「実験計画法」「相関・回帰分析」「品質保証」
・日程
前半(6回):品質管理という思想
1.工業製品が消費者に届くまで
2.産業の種類と生産方式(製造工程の最適化)
3.生産管理と生産現場(品質管理と品質保証)
4.環境と安全への品質基準
5.経済活動全般に通用する品質マネージメントという思想
6.まとめと理解度の確認
後半(9回):統計的品質管理
7.データはばらつく!統計で使う分布関数とその性質
8.関数電卓とPCを使いこなす
9.どこを攻めるか~QC7つ道具
10.ヒストグラムの作り方
11.品質管理は管理図に始まり管理図に終わる
12.最適条件を決めろ!実験計画法概論
13.データを推測するぞ!回帰分析概論
14.データを推測するぞ!回帰分析の計算と検定
15.まとめと理解度の確認

【学習の方法】
・受講のあり方
欠席することは、自らの権利を「放棄」することを意味する。工学を志す以上、簡単な工具やテスターなどの測定器、関数電卓は持っていて当たり前、道具を正しく使いこなせないエンジニアなんてありえない。これを正しく認知すること。他の科目の情報処理概論とのリンクはPCによる統計処理において連携しているので、必ず履修すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
高校や専門で学んだ数学のうち確率・統計を十分復習しておくこと。
標準は数値を用いて明快に定義されている。正確な数値を計算して、それに基づく的確な判断ができるように意識して復習すること。
PCやスマホの利用に関しては、専門の統計解析ソフトを使わなくても、一般的な表計算ソフトでもできる。この点を意識して情報処理概論の科目を履修し、使いこなせるようにスキルアップを図ること。

【成績の評価】
・基準
1)日本の品質管理の手法は、世界の標準である。この思想と工業・経営工学への貢献を正しく理解し、解説できる。
2)「革新的イノベーション」などという恥ずかしい行為はしないように、用語も正しくし、使いこなせる。
3)品質管理は「想い」は通用しない。統計的な手法を駆使して数理としての「合理的思考」により世界(工程・経営)を把握し、CAPDサイクルを廻すことによってスパイラルアップしていくことができる。
4)解析結果を分かりやすく示すための図表を正しく書くことができる。
5)統計的検定結果は判断基準を明確に定義した上での判定である以上、絶対正しいという保証はない。この点を正しく理解し、判断の条件を明確に示した上で合理的な改善を進めることができること。
・方法
出席率2/3は最低限の必要条件である。成績評価の到達度確認チェックシートは各項目毎に2~5点の配分であり、加点方式で得点を集計する。前半の到達度確認チェックシートでは最大得点を40点、後半の到達度確認チェックシートでは最大得点を60点とし、両者を加算して100点満点とする。

【テキスト・参考書】
テキスト(前半):松林光男、渡辺弘、イラスト図解 工場のしくみ、日本実業出版社, (2004)
テキスト(後半):奥村士郎、品質管理入門テキスト改訂2版、日本規格協会, (2007)
参考書:岩崎日出男、泉井力、クオリティマネジメント入門、日本規格協会, (2004)
参考書:大滝厚、日本規格協会、JISマーク品質管理責任者
参考書:岡田泰栄、平均値の統計、共立出版
参考書:鷲尾泰敏、推定と検定、共立出版
参考書:岡田泰栄、多変量の統計、共立出版
参考書:大村平、実験計画と分散分析、日科技連
参考書:大村平、評価と数量化のはなし、日科技連
参考書:大村平、信頼性工学のはなし、日科技連

【その他】
・学生へのメッセージ
将来、企業・大学などで研究・開発・生産などの仕事に従事する場合に「品質管理」の概念・手法についての知識は必要不可欠のものである。それ故、その基礎知識をこの授業で勉強して欲しい。
本講義では、統計的品質管理手法(SQC)の演習において電卓を使用するが、推奨する電卓はCASIOのfx-JP500である。他の電卓での使用法の違いや機能不足などは関知しないので、各自の責任において電卓を選択し、その使用法に習熟しておくこと。
・オフィス・アワー
月曜日16:00~17:00(9号館9-300-3)となります。

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