【授業の目的】
化学現象・生物現象はその多様性や意外性に注目されがちだが,いずれも電子と原子核の集団運動の現れである点にかわりなく,物理学に基づく演繹的・統一的な考察がしばしば新たな知見をもたらす.この授業では,(化学・生物学を含む)広い意味での物質科学を分子レベルで理解する際に不可欠な手法として,量子化学や動力学等の理論を学ぶ.
【授業の到達目標】
1. 量子力学の基礎事項を復習する.【知識・理解】 2. Born-Oppenheimer 近似と Hartree-Fock 近似を正しく理解する.【知識・理解】 3. 化学・生物学を物理の理論・近似手法で考察できる.【知識・理解】 4. 授業に積極的に参加し,議題について他人に論理的に説明する.【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
分子科学,量子化学,Born-Oppenheimer 近似,Hartree-Fock 近似,電子相関
【科目の位置付け】
この授業は,研究の背景と意義を説明するための専門的知識および技能を体系的に修得し,また分野で異なる論理や方法論に関する理解を深め,イノベーションにつながる発想ができる能力を身につけるための科目である(理工学研究科博士前期課程(理学系)ディプロマ・ポリシー参照).
【授業計画】
・授業の方法
輪講と講義を組みあわせたスタイルとし,分子科学の標準的なテーマについて実際に問題も解く.関連した項目について適宜レポート課題を出す.
・日程
1. 量子力学のおさらい 2. 水素原子 3. 角運動量と群論 4. Born-Oppenheimer 近似 5. 分子の電子状態 - Hartree-Fock 近似(1) 6. 分子の電子状態 - Hartree-Fock 近似(2) 7. 分子の電子状態 - Hartree-Fock 近似(3) 8. 分子の電子状態 - Hartree-Fock 近似(4) 9. 分子の電子状態 - 二原子分子の分子軌道と電子配置 10. 分子の電子状態 - 電子相関と配置間相互作用法 11. 分子の電子状態 - 電子相関と密度汎関数法 12. 分子の電子状態 - いくつかの応用例 13. 二原子分子の振動・回転状態 14. 多原子分子の振動・回転状態 15. まとめ なお,各タイトルの補題は主要な内容を表したものである.
【学習の方法】
・受講のあり方
分子科学の概念を量子力学の基礎事項と関連づけながら整理・理解し,実在系への応用を扱うなかで理解を深めましょう.受講者には積極的な議論への参加を求め,プレゼンテーションもしてもらいます.
・授業時間外学習へのアドバイス
次回の範囲を各自予習し,必ず式は自分で導出すること.この授業では予習を前提とし,レポート課題も課します.量子力学の知識が必須です(必要に応じて自学自習・復習しておいて下さい).
【成績の評価】
・基準
1. 分子科学の理論手法に関する基礎事項を理解し,授業で扱う程度の基本的な問題を独力で解ける. 2. テキストを予習し,内容を理解・整理してプレゼンテーションできる. これらができれば合格です.
・方法
レポート点(70%),輪講・プレゼンテーションへの参加(30%)をもとに理解度を確認し,成績評価します.
【テキスト・参考書】
テキスト:幸田清一郎ほか,大学院講義 物理化学(東京化学同人) 参考書:授業中に適宜紹介する.
【その他】
・学生へのメッセージ
本講義は(一体問題を自力で解ける程度の)量子力学の知識とテキストの予習が必要です.
・オフィス・アワー
授業時間外に学生の質問に答える「オフィス・アワー」は火曜日12時〜13時で,場所はC308号室です.
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