品質管理
 An Introduction to Quality Control
 担当教員:仁科 辰夫(NISHINA Tatsuo)
 担当教員の所属:工学部
 担当教員の実務経験の有無:
 担当教員の実務経験の内容(有の場合):株式会社本田技術研究所にて1年間研究開発に従事
1992年~ (財)日本規格協会 品質管理と標準化セミナー講師・現東北教室教務主任
 開講学年:3年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:化学・バイオ工学科  科目区分:総合科目・選択必修、教職科目(工業) 
【授業の目的】
実社会では、ISO9000やISO14000などに代表されるように、商品製造ばかりでなく、サービスや環境にまで標準化が進み、品質管理の手法が適用されるようになって来ている。日本は、デミング博士の指導のもとに、統計的な手法による品質管理と標準化を推し進めて、現在の経済発展を遂げてきた。しかし、近年、中国を始め東南アジアの国々の商品生産・製造技術が格段にレベルアップし、世界経済市場に大きく進出している。その現状を踏まえ、21世紀の日本経済が、地球環境問題も含め質の高いレベルで発展することが期待されている。それを実現させるためには、品質管理思想・手法の活用が貢献できる筈である。
高校や専門で学んだ数学を基礎とし、工学部を卒業したものにふさわしいJISマーク省令第二条規定の品質管理責任者としての資格要件を満たす。すなわち工業標準化法のもと、統計的考え方、統計的工程管理、サンプリング、抜き取り検査、問題解決法、社内標準化などの技術を活用可能な能力を身につけ、工業生産の現場における判断力を培う。

【授業の到達目標】
品質管理とは、生産者も消費者もともに幸せになるWin-Winの関係を築く有効な方法論である。
1)JIS等の標準と連携し、独自の社内標準を数値で明快に定義できるようになる。
2)付加価値の意味を理解し、社会に必要な商品を提供できるようになる。
3)無駄をなくし、真に必要な工程を構築できるようになる。
4)PL法、HACCP、ISO9000、ISO14000等の各種規格を理解し、製品開発することができるようになる。
5)労働関連法規と安全衛生法を理解し、安全で誇りをもって働ける社内環境を構築できるようになる。
6)QC七つ道具を駆使し、合理的に真の問題点にたどり着くことができるようになる。
7)統計的な手法を使いこなし、平均とばらつきを正しく理解して規格外れや工程の変化を合理的に判断できるようになる。
8)QC検定3級の資格に合格できる知識を身につけ、工業標準化推進責任者としての責任と義務を遂行できるようになる。
9)品質管理を将来更に勉強し、仕事に有効活用する契機とすることができるようになり、さらにQC検定2級・1級の資格に合格するための意欲を身にけることができる。

【授業概要(キーワード)】
品質管理、サンプリング法、分析・測定法、統計的手法の基礎、管理図、実験計画法、相関・回帰分析、品質保証

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25%
B-1.学生同士の話し合いの中で互いの意見に触れる機会がある。:1~25%
D-1.演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%
A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
D-2.事前学習(下調べ、調査等含む)で習得した知識等を踏まえて演習、実習、実験等を行う機会がある。:1~25%

【科目の位置付け】
この科目は化学・バイオ工学科の学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)1.豊かな人間性と社会性(1)社会的な意義や責任感を自覚し、倫理的に正しい判断をする能力を身につけている、に主に対応する。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
03.すべての人に健康と福祉を
04.質の高い教育をみんなに
07.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
08.働きがいも経済成長も
09.産業と技術革新の基盤をつくろう
12.つくる責任つかう責任
17.パートナーシップで目標を達成しよう

【授業計画】
・授業の方法
品質管理講義の主要項目は次ぎの通り。
「品質管理とは」「サンプリング法」「分析・測定法」「統計的手法の基礎」「管理図」「実験計画法」「相関・回帰分析」「品質保証」
・日程
前半(6回):品質管理という思想
1.工業製品が消費者に届くまで
2.産業の種類と生産方式(製造工程の最適化)
3.生産管理と生産現場(品質管理と品質保証)
4.環境と安全への品質基準
5.経済活動全般に通用する品質マネージメントという思想
6.まとめと理解度の確認
後半(9回):統計的品質管理
7.データはばらつく!統計で使う分布関数とその性質
8.関数電卓とPCを使いこなす
9.どこを攻めるか~QC7つ道具
10.ヒストグラムの作り方
11.品質管理は管理図に始まり管理図に終わる
12.最適条件を決めろ!実験計画法概論
13.データを推測するぞ!回帰分析概論
14.データを推測するぞ!回帰分析の計算と検定
15.まとめと理解度の確認

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
欠席することは、自らの権利を「放棄」することを意味する。工学を志す以上、簡単な工具やテスターなどの測定器、関数電卓は持っていて当たり前、道具を正しく使いこなせないエンジニアなんてありえない。これを正しく認知すること。他の科目の情報処理概論とのリンクはPCによる統計処理において連携しているので、必ず履修すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
高校や専門で学んだ数学のうち確率・統計を十分復習しておくこと。
標準は数値を用いて明快に定義されている。正確な数値を計算して、それに基づく的確な判断ができるように意識して復習すること。
PCやスマホの利用に関しては、専門の統計解析ソフトを使わなくても、一般的な表計算ソフトでもできる。この点を意識して情報処理概論の科目を履修し、使いこなせるようにスキルアップを図ること。

【成績の評価】
・基準
1. 日本の品質管理の手法は、世界の標準である。この思想と工業・経営工学への貢献を正しく理解し、解説できる。
2. 「革新的イノベーション」などという恥ずかしい行為はしないように、用語も正しくし、使いこなせる。
3. 品質管理は「想い」は通用しない。統計的な手法を駆使して数理としての「合理的思考」により世界(工程・経営)を把握し、CAPDサイクルを廻すことによってスパイラルアップしていくことができる。
4. 解析結果を分かりやすく示すための図表を正しく書くことができる。
5. 統計的検定結果は判断基準を明確に定義した上での判定である以上、絶対正しいという保証はない。この点を正しく理解し、判断の条件を明確に示した上で合理的な改善を進めることができること。
・方法
1. 出席率2/3は最低限の必要条件である。
2. 成績評価の到達度確認チェックシートは各項目毎に2~5点の配分であり、加点方式で得点を集計する。前半の到達度確認チェックシートでは最大得点を40点、後半の到達度確認チェックシートでは最大得点を60点とし、両者を加算して100点とする。
3. WebClassでの各回の課題も上記2.の加点要素である。

【テキスト・参考書】
テキスト(前半):松林光男、渡辺弘、イラスト図解 工場のしくみ、日本実業出版社, (2004)
テキスト(後半):奥村士郎、品質管理入門テキスト改訂2版、日本規格協会, (2007)
参考書:岩崎日出男、泉井力、クオリティマネジメント入門、日本規格協会, (2004)
参考書:大滝厚、日本規格協会、JISマーク品質管理責任者
参考書:岡田泰栄、平均値の統計、共立出版
参考書:鷲尾泰敏、推定と検定、共立出版
参考書:岡田泰栄、多変量の統計、共立出版
参考書:大村平、実験計画と分散分析、日科技連
参考書:大村平、評価と数量化のはなし、日科技連
参考書:大村平、信頼性工学のはなし、日科技連

【その他】
・学生へのメッセージ
原則対面授業です。遠隔授業に切り替わった場合、WebClassからリンクされたオンライン会議システムで授業します。
将来、企業・大学などで研究・開発・生産などの仕事に従事する場合に「品質管理」の概念・手法についての知識は必要不可欠のものである。それ故、その基礎知識をこの授業で勉強して欲しい。
本講義では、統計的品質管理手法(SQC)の演習において従来は電卓を使用していたが、ExcelやGoogleスプレッドシートを活用する。
・オフィス・アワー
質問についてはWebClassのメッセージを活用して受け付けます。WebClassを活用し、タイムラインやメッセージを活用し、全体で共有するべき回答等の情報は講義資料に反映させて情報を共有します。

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