昨年度、全国の大学で準備も不十分なままにオンラインでの授業実施となり、各大学のICT環境、学生一人一人の情報端末及び通信環境の状況の他、各教員の専門領域の特性、各科目の達成目標等に応じた授業形態、各教員のそれまでのICTの活用状況とその運用スキル等により、学生だけでなく教員にとっても不安や不満が膨らみました。自身も含め、ICTを効果的に手際よく活用・運用することに新たに取り組み習熟することへの自らの限界を感じた教員も少なくないことでしょう。また、授業に伴って生じる授業時間外の業務として、授業準備、細やかなフィードバック等の負担が膨らみ、特に非常勤講師にとってはこれまでとは比べ物にならない負担であったことでしょう。こうした点について、常勤・非常勤の区別なく、大学教員として今後必然的に求められるスキル・業務として受け止めざるを得ない一方で、大学教育を支える上で欠かせない非常勤講師への各大学からの支援やケア等は、学生に対するのと同様に不可欠であると思われます。
緊急対応として実施されたオンライン授業ではありましたが、今後も有効に活用され続け、その対応・改善にも継続的に取り組んでいくことが必要でしょう。加えて、大学教育にとっての喫緊の課題として、小・中・高等学校等において推進・実践されている「GIGAスクール構想」への対応が挙げられます。小・中学校に続き高等学校でも2022年度より本格的に実践されることを踏まえれば、その趣旨に基づく学習活動(例えば1人1台端末による学習形態)を体験・実践してきた生徒が2023年度入学生として大学に進学してくることになります。大学教育でも、ICT環境の整備等の再検討はもちろんのこと、科目の特性や到達目標、それに応じた授業形態等も踏まえながら、学修・指導の方法等の授業実践上の具体的な点についても再検討することが早急に必要でしょう。入学生をガッカリさせないためにも、大学として真摯に向き合うべきと考えます。併せて、大学教育の質保証のためにも、上記の非常勤講師への支援やケア等が更に重要になると思われます。
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