令和4年12月に「発達障がい学生への対応」というFD&SD研修会を開催しました。日頃、発達障がいが疑われるような学生に、授業や学生生活、就職活動といった場面でどのように接したらよいのか知りたいという要望が、多くの教職員から寄せられたので実施しました。講師を、公認心理師の資格を持ち本学で心理学の講義を担当している水上祐子先生にお願いし、研修の講演を、どの教職員も出席可能な昼休みに実施しました。
研修会の内容は、
@自閉症スペクトラムの概要
Aいろいろな症状を持つ学生の事例や基本的な対処方法
自閉症スペクトラムの概要では、どこまでが正常でどこからが自閉症なのかといった境界線がはっきりしているものではなく、誰にでも存在する特性が強く出過ぎたときに発達障がいと呼ばれるグループに属することを説明して頂きました。誰もが持つ特性に由来するからこそ、自閉症であるかどうかを判断するのが難しく、グレーゾーンに属する人の割合が高いのがこのスペクトラムの特徴のようです。
この講演中も、教職員の中から「私の子供のころと同じだ」、「私にもこのような傾向があるぞ」、「私もこの傾向はわかる」など、共感を示す声がいくつも上がりました。「どんな人もある程度持っている癖のようなものだ」と実感しつつ、そういえば、私自身も興味を持つと一つのことに執着するような傾向が強いことに気づきます。すると、「これは癖、それとも自閉症の傾向が強いの?もしかして、自閉症?」という言葉が頭をよぎります。となると今度は、周りで声を出している人たちも「自閉症?それとも自閉症の傾向が強いの?」という言葉が頭の中をぐるぐる回りだします。「え、これは?」、「それじゃ、あれは?」…、考えれば考えるほど考えが収束するどころか、発散していくような感覚に陥ってしまいます。「えい、面倒くさい、考えるのはやめよう」、そう考えた瞬間、頭の中の思考が停止し、同時に睡魔がやってきます。いつもの睡魔がやってきて頭の中をきれいに掃除していきます。「だめだ、だめだ、講演に集中しなきゃ…。えっ、でも、これこそが、いつもの私の特性だ。一番強く出る特性だよ」と思った瞬間、「えー、これも…(-_-;)」。今度は全身がフリーズしました。「自閉症スペクトラム、恐るべし」、どこまでも追いかけてくる。
さて、発達障がいを持つ学生を支援し、正しい合理的配慮を行うためには、「自閉症スペクトラム」を正しく認識し、我々教職員の対応力を向上させることは確かに必要です。しかし、これだけ幅の広い特性に対応するためには、「発達障がい」という枠組みにとらわれすぎてもしょうがないように感じます。一度「発達障がい」という枠を離れ、「発達障がい」が“ある”、“なし”を区別するのに時間をかけるのではなく、全学生一人ひとりが持つ個性をしっかり教職員全員で把握し、学生の多様な個性に応じた丁寧な対応こそが必要なのではないかと、講演を受け実感させられました。在学している学生一人ひとりの個性に丁寧に向き合って対応していく。普遍的な教育の原点に戻ることが、「発達障がい学生」への対応として一番大切なことだと再認識させられました。
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