新型コロナウィルスは大学の授業に多大な変化をもたらした。筆者は大学1年生を対象とした情報リテラシー科目を担当している。コロナ以前は、毎年何の疑問もなくPC教室で授業を行っていた。2020年、学生の姿が突然キャンパスから消え、大学の風景は一変した。コロナ禍の授業をどう運営すればよいのか、多くの教員が戸惑いを感じたことと思う。当初はオンライン授業、オンデマンドコンテンツの準備に追われ、まさに自転車操業の日々であった。2021年に入り徐々に対面授業が復活していく中で、私は一つの試みを行った。PC教室の授業をZoom録画(教卓PCを画面共有した状態で録画)したのである。動画は当該年度中、随時視聴可能な状態でLMS(manaba)に掲載した。学生のPC習熟度には差があるため、クラス全員の操作完了を待っていると、授業の進行が遅れるという状況が生じる。その結果コロナ以前の対面授業では「PC操作をしている間に説明をされて聞き逃した」「キーボード入力に手間取ってついて行けなかった」など、授業アンケートを通して学生からよく不満の声を聞いた。授業動画を残すことにより、これらが一定程度解消できるようになった。この結果を受け、2022年度以降は原則すべての授業科目でZoom録画を行うこととした。
現在、単位の実質化のために事前事後学習の時間数確保が求められている。学生が実際に授業動画をどの程度視聴しているのか確認したところ、直近の調査で「毎回orかなり視聴した」7%、「半分くらい視聴した」11%、「たまに視聴した」41%、「まったく視聴しなかった」41%という結果が出た。動画は90分の授業を編集なしの状態で記録しているだけであり、そのまま流して見ると冗長な部分も多く存在する。調査結果では、まったく視聴していない学生が4割程度いるが(真面目に授業を受けていれば特に視聴する必要もないためこれ自体問題はないと考える)、6割の学生は一定程度動画を視聴していることが確認できた。アンケートのコメント欄には、課題の振り返り、授業説明の再確認、欠席授業回の視聴等に動画を役立てていることが書かれており、授業外学修時間の確保に一定の寄与があることが確認できた。
コロナが起こらなければ、自分の授業をすべて動画に残すという発想は、おそらく出てこなかったと思う。現在は対面授業に戻っているが、授業の録画は今後も続ける予定である。コロナがきっかけで授業改善に至った一つの事例となった。
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